硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「ストレイ・シープ」 第18話

2023-03-03 20:08:32 | 小説
そんな状況でも「ナミ」は、職員、利用者、ともに気を配り、てんてこ舞いになりながらも、施設を切り盛りしていて、時より愚痴や、うれしい事などのエピソードをLINEを送ってくれて、その文面から奮闘ぶりを想像していた。
そして、LINEのやり取りが一年くらい続いた頃、突然、

「リノって子、知ってる? 」

と、いうLINEが送られてきた。
一瞬目を疑ったが、同姓同名であり、しかも「リノ」という女性は僕の事をとても知っていると言っているようで、あの、「リノ」であることを確信した。

「知ってるけど。なぜに? 」

なぜ、「リノ」の名が「ナミ」によって語られるのかが全く分からず、勢いで返信してしまったのであるが、しばらくして送られた長文のLINEを読んでいくと、「ナミ」の施設で働き始め、履歴書に僕が以前勤めていた施設のが書かれていたので、僕の名前を出したところ、「とてもお世話になった人」と、言ったのだという。
しかし、そんな事よりも、仕事はちゃんとできるようになったのかが気になる。
聞くか聞くまいかとても悩んだが、「ナミ」が「リノ」に対してどう思っているのか知りたかった。だから、遠回しに「リノ」の仕事ぶりを尋ねてゆくと、

「世話は焼けるけど、頑張ってるよ」

という、返信が送られてきた。
さらに、結婚もしているようで、少しうれしくなったが、一応、「リノ」の特徴を簡潔に伝えて、「よろしくお願いします」と返信した。

しかし、そのLINEを境に「ナミ」からのLINEは「リノ」の事についての相談が増え始めて、日がたつにつれ、僕が経験したことを、そのまま「ナミ」が追体験する事になっていったが、僕と違って「ナミ」は経営者でもあったので、使命感も大きく、「リノ」を自立させようと力を尽くしていた。