田中雄二の「映画の王様」

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『砂漠の流れ者』

2019-07-15 14:23:49 | 映画いろいろ

『砂漠の流れ者』(70)

   

 サム・ペキンパー監督作で最も好きな『砂漠の流れ者』を久しぶりに再見。

 開拓時代末期の西部。一獲千金を狙うケーブル・ホーグ(ジェイソン・ロバーズ)は、2人の仲間(L・Q・ジョーンズ、ストロザー・マーティン)に裏切られ、砂漠に置き去りにされる。だが、ホーグは偶然“泉”を見つけ、駅馬車の休憩所を始める。そこに、彼が愛する娼婦のヒルディ(ステラ・スティーブンス)やインチキ牧師(デビッド・ワーナー)が絡んでの、珍騒動が繰り広げられる。

 ところで、この映画に、スリム・ピケンズ演じる御者の相棒役で出演したマックス・イヴァンスが、撮影日誌風に書いた『ケーブル・ホーグの男たち』(原田眞人訳)という面白い本がある。

 その中で、イヴァンスはこの映画を「一人の男と大地が奏でる軽妙洒脱な調べ。水のなかった場所で水を見つけた男は、大自然の気まぐれを唯一の味方に、独力で生き延びようとする。これは、優しく愛おしい愛の歌、地球への愛、いい女(たとえ彼女が娼婦でも)への男の愛であり、土に消えていった男たちへの挽歌なのである」と評している。

 そして、どちらも西部の黄金時代に乗り遅れた男たちを描きながら、「史上最大の暴力映画(『ワイルドバンチ』(69))の後に、心温まる愛とユーモアときめ細やかな名演に彩られた映画を発表する矛盾」として、ペキンパーの“二面性”も鋭く指摘しているのが面白い。

 この映画は、どこか寓話やホラ話(トール・テール)的なものを感じさせるユーモアがある半面、変わりゆく西部と時代に乗り遅れた男の姿として、ホーグの最期が、セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』(68)でロバーズが演じたシャイアンのそれと重なって見えて、切なくなるところもある。そんなところが好きだ。

『サム・ペキンパー 情熱と美学』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/96a0cab264ba3d53e14786426865d915

『ウエスタン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0fdc28ff511acdc17c006cb134f5ddac


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