『風が強く吹いている』(09)(2009.12.8.MOVIX亀有)
「長距離ランナーに必要なのは速さではなく強さだ」
スポーツ映画は、練習や試合のシーンがきちんと描ければ、普通の映画よりも遥かに盛り上がる。ボクシングの『ロッキー』(76)しかり、野球の『ナチュラル』(84)しかり。けれども、日本のスポーツ映画は、肝心の試合のシーンが稚拙でしらけてしまうことが多い。この映画も、箱根駅伝を目指す大学の弱小陸上部の話だから、当然、走るシーンがリアルでなければ成り立たない。
ところがうれしいことに、この映画は、冒頭の、灰二と走が出会って一緒に走るシーンから、「おー、なかなかいいじゃないか」という感じで一気に引き込まれる。そして個性的な10人の部員たちが、段々とランナーになっていく過程から本番の箱根駅伝までを、俳優たちが体を張った走りで表現する。
特に、灰二役の小出恵介と走役の林遣都は、本職のランナーかと見紛うほどの走りを見せる。小出は最近活躍が目立つが、林は、どこかで見た覚えがあるけど…という程度だった。気になって調べてみると、何と『バッテリー』(07)で豪速球ピッチャーを演じていたあの少年ではないか! 彼には天才ゆえに孤独に陥るスポーツ選手役がよく似合う。ただ、ここまでうまいとスポーツ映画専門の俳優で終わってしまう可能性もあるが。
初監督の大森寿美男は、もともとは脚本家だからストーリーの展開やセリフに凝ったところを見せるが、全体としては佐光朗の撮影が大きくものをいっている。いまさらちょっと気恥ずかしい気もするが、久しぶりに「さわやかな青春映画」を見せてもらった気がした。
【今の一言】林遣都は個性派俳優として大活躍しているが、小出恵介はスキャンダルで消えた。惜しい気がする。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます