『サイレント・ナイト』(2022.11.18.オンライン試写)
田舎の屋敷でクリスマスのディナー・パーティーを催そうとしているイギリス人夫婦のネル(キーラ・ナイトレイ) とサイモン(マシュー・グード)。そして彼らの息子のアート(ローマン・グリフィン・デイビス)と双子のハーディ&トーマスの5人家族のもとに、両親の学生時代の親友たちとその伴侶が次々と集まってくる。
12人の男女は久々の再会を楽しんでいたが、今年はいつものクリスマスとは違っていた。なぜなら、ロシアがまいたという、あらゆる生物を死に至らしめる謎の猛毒ガスが、地球全土を覆い、明日にはイギリスにも到達するのだ。国は、苦しみながら死ぬことを回避するために安楽死用のピルを配布していた。果たして、彼らは“最後の聖夜” をどう過ごすのか。
マシュー・ボーンがプロデュースした、いかにも時宜を得た映画かと思いきや、本作が構想されたのは、ロシアのウクライナ侵攻はおろか、コロナ禍よりも前のことだというから驚いた。加えて、グリフィン・デイビスと双子の兄弟は、カミラ・グリフィン監督の実の息子たちだというから、これにも驚いた。
前半は、大学時代の友人たちが集まって、卒業後の生活を語り合う、ローレンス・カスダンの『再会の時』(83)を思い出させたが、この映画は、どこかちぐはぐな感じがし、徐々に不穏な空気が高まっていくという見せ方をしていた。そこに、ブラックユーモアがちりばめられているところが、いかにもイギリス映画らしい。
そして、安楽死に疑問を感じるアートが、ピルを飲まないと言い出して波紋が広がるところに、この映画の怖さがある。何やら、コロナワクチンの接種をするかしないかの選択、本当に効果があるのかという疑問にも通じるところがあるからだ。
改めて死について考えさせられる、舞台劇を思わせる設定がなかなか面白い、小品の佳作といった感じの映画。『E.T.』(82)が映ったり、第3次世界大戦による核兵器使用の恐怖を描いた『ザ・ディ・アフター』(83)や、大災害による文明消失を描いた『ザ・ロード』(09)に言及するあたりにも、監督の趣味が出ている。
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