『ドリームプラン』(2021.12.21.ワーナー試写室)
女子テニスの歴史を変えたとも言われる、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹の父である、キングことリチャード・ウィリアムズ(ウィル・スミス)の生き方を中心に、一家の物語を描く。
娘を使って、スポーツを通しての成り上がりを画策するリチャードの計画立案力と実行力は確かにユニークであり、しかも我々は彼らが成功したことを知っている。
だから、その事実に目を奪われてあまり感じないのだが、実は見方を変えれば、リチャードと妻(アーンジャニュー・エリス)のやり方は、一種の“毒親”や虐待の類として捉えられなくもない。例えば、『巨人の星』の星一徹や、ボクシングの亀田史郎とよく似ているのだ。
ただ、この映画は、リチャードが決して聖人君子ではなく、多くの矛盾を抱えた頑固で気難しい男であることも同時に描いているから、単なる成功者の話では終わらない。そこには差別や貧しさの問題が横たわっているからだ。
しかも、リチャードの人生訓を聞き、姉妹を演じたサナイヤ・シドニーとデミ・シングルトンの見事なテニスプレーのシーン(ビーナスに対して憎まれ役になるアランチャ・サンチェス・ビカリオはちょっとかわいそうな気もしたが)や、黒人主体の話を見ていると、最近目立つ“主張するブラックムービー”の1本という言い方もできる。
そう思わされるのは、監督のレイナルド・マーカス・グリーンが手堅くまとめて、144分を決して長く感じさせない点も大きい。製作も兼ねたスミスにとっては、やりがいのある役だったと思われるが、賞狙いのにおいがすると言ってしまっては酷かな。
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