(2016.11.3.)
フィルムセンターの「UCLA映画テレビアーカイブ 復元映画コレクション」で『荒野の決闘』の非公開試写版を見る。このバージョンは、UCLAの映画の授業時に、学生の指摘をきっかけに発見され、復元されたものだという。監督のジョン・フォードが当初意図したものにより近くなっているらしい。
製作者のダリル・F・ザナックが編集し直した現在の公開版は97分。対して今回のバージョンは102分なのでおよそ5分多いことになる。フォード対ザナックの闘いの跡を垣間見ることができて興味深いものがあった。
ところで、ビリー・クラントン(ジョン・アイアランド)を追って落馬するバージル・アープ(ティム・ホルト)、ラストシーンでクレメンタイン・カーター(キャシー・ダウンズ)に別れのキスをしないワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)(個人的にはこちらの方が好きなバージョンだ)。これらはどこか(名画座かテレビかビデオか…)で以前見たことがあった。ということはほかにも色々なバージョンが存在するということなのか…。
今回初めて見たシーンや聞いたセリフは、ドク・ホリディ(ビクター・マチュア)の登場前に、ビリーがチワワ(リンダ・ダーネル)を口説いているシーンは、後のビリーとチワワの関係の伏線となる重要な場面だ。
また、ドクが劇場でワイアットにひげそりの際についた傷を見せるシーンはフォード流のユーモアか。チワワの手術前のドクとクレメンタインのやり取りとそれを影から眺めるワイアットは、三人の関係性を知らせる、これも重要なシーン。ドクの亡き骸を前にワイアットが「ブーツは俺が…」と語るところは、二人の友情を示す重要なセリフだ。
加えて、トゥームストーンを去るワイアットがクレメンタインの部屋の窓を見るシーンは、「見送りもなしか…」というワイアットの寂しさを表す重要な場面。これがあると、最後にクレメンタインが待っている意味がさらに切なく深いものになる。
という訳で、個人的にはこの非公開試写版の方がさらにいいと感じたし、映画は編集次第なのだと改めて思い知らされた。