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MoMA ニューヨーク近代美術館映画コレクション 『真昼の暴動』

2014-11-07 21:03:30 | 映画いろいろ

 フィルムセンターで開催中の「MoMA ニューヨーク近代美術館映画コレクション」

 

 まずは、大先輩方から「とても面白い」という話を飽るほど聞かされ、いつか見たいと思っていた『真昼の暴動』Brute Force (1947・ユニバーサル) 日本公開は57年。

 ウエストゲート刑務所を牛耳る残忍な看守長のマンジー(ヒューム・クローニン)と対立する、タフな囚人ジョー・コリンズ(バート・ランカスター)は、仲間たちと白昼の集団脱走をもくろむが…。という、前年にアルカトラズ刑務所で実際に起きた暴動を基に映画化したハードなセミドキュメンタリー風の社会派劇。ランカスターは後に『終身犯』(62)でアルカトラズ刑務所に収監される役もやっている。

 製作マーク・ヘリンジャー、監督ジュールス・ダッシンのコンビは、この映画の翌年に、セミドキュメンタリーの代表作『裸の町』(48)をものにするが、ヘリンジャーの死でコンビは解消。ダッシンは苦難の時代を迎え、やがて赤狩りの嵐の中、ハリウッドを追われる。

 脚本は後にランカスター主演の『エルマー・ガントリー/魅せられた男』(60)や『プロフェッショナル』(66)を監督するリチャード・ブルックス。撮影は名手ウィリアム・H・ダニエルズ、音楽はミクロス・ローザ。

 コリンズの囚人仲間に、チャールズ・ビックフォード、ハワード・ダフ、サム・レビン、ジェフ・コーリー、ジョン・ホイト、ジェイ・C・フリッペン、ホイト・ビゼル…。
刑務所内の医師にアート・スミス。

 刑務所内で新聞を発行している知性派のビックフォードが言うこんなセリフが印象に残る。「ここの門は三度しか開かない。入る時と、刑期を終えた時と、死んだ時だ」。

 囚人たちの過去のロマンスを回想シーンとして挿入することで、男くささを緩和するという趣向も面白い。ロマンスの相手となる女優陣は、イボンヌ・デ・カーロ、アン・ブライス、エラ・レインズ、アニタ・コルビー。

 ちなみに刑務所内で上映される映画が、同年に公開されたチェスター・アースキン監督、クローデット・コルベール、フレッド・マクマレー共演のホームコメディー『卵と私』(47)というのもしゃれている。

 伝説の映画がその通りの姿を見せてくれた喜びを感じながら、モノクロ映像が迫力を助長する濃厚な98分のドラマを堪能した。

パンフレット(57・外国映画出版社)の主な内容
解説/スタア・メモ バート・ランカスター、アン・ブライス、エラ・レインズ、イヴォンヌ・デ・カーロ/梗概/ジュールス・ダッシンと暴力描写の限界(植草甚一)/監督のメモ ジュールス・ダッシン/「真昼の暴動」の意味するもの(清水千代太)


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