『エンゼル・ハート』(87)(1989.7.1.ゴールデン洋画劇場)
1955年のブルックリン、私立探偵ハリー(ミッキー・ローク)は、謎の紳士サイファー(ロバート・デ・ニーロ)から、失踪した歌手の捜索依頼を受ける。ところが、調査の過程で次々と殺人事件が起きる。
一応、オカルトミステリー仕立ての映画なのだが、悪魔の話なのに天使、という皮肉っぽいタイトルとストーリーの流れを見ていると、途中で種は分かってしまうし、かつて流行した『エクソシスト』(73)のような、こけ脅し的な面白さにも欠ける。
それなのに何となく最後まで見せられてしまったのは、アラン・パーカーの力業によるものなのか。とは言え、『ミッドナイト・エクスプレス』(79)から最新作『ミシシッピー・バー―ニング』(89)に至るまで、彼はどちらかと言えば社会派のイメージが強く、しかも今回は宗教問題が絡んだこともあって、彼にとっては異色作だと感じさせられたのは否めない。
従って、あまりいい評価はできない映画なのだが、パーカーの作品に共通する光と影の使い分けのうまさは、この映画でも大いに生かされていた。
加えて、『ミシシッピー・バー―ニング』を見た際に感じた、「イギリス人のパーカーが、なぜあそこまで見事にアメリカ南部の状況や人物、風景を描けたのだろうか」という疑問も、同じくアメリカのディープサウスを描いたこの映画を先に見ていれば、それほど奇異には感じなかったかもしれない。
なぜなら、この映画でも、形こそ違え、ディープサウスの閉鎖的な風景が色濃く描き込まれていたからである。やはり、注目の監督の映画は、少々出来が悪くても、後につながる可能性も含めて、見逃してはならない、と改めて感じさせられた。
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