そしてタビアーニ兄弟は、オムニバス映画『カオス・シチリア物語』(84)をはさんで、映画草創期のハリウッドに移住したイタリア人の職人兄弟の姿を描いた『グッドモーニング・バビロン!』(87)に行き着く。
『グッドモーニング・バビロン!』(87)(1987.11.14.日比谷シネシャンテ)
タビアーニ兄弟とは『父パードレ・パドローネ』(77)と『サン★ロレンツォの夜』(82)以来の再会である。両作品でイタリアの片田舎の風土を色濃く描いた彼らが、今回はアメリカと組んで、ハリウッド草創期を背景にした映画を撮ると聞いた時には正直なところ戸惑った。それは、あれだけイタリアの匂いを強く感じさせる監督が、合作映画を撮ってうまくいくのか? という疑問があったからだ。
ところが、見ているうちに、そんな杞憂はどこかに吹っ飛んだ。思えば、ハリウッドの草創期は、職を求めてやって来た移民たちのたまり場でもあった訳で、この映画の主人公の兄弟(ビンセント・スパーノ、ホアキン・デ・アルメイダ)をタビアーニ兄弟の分身として捉えれば、前半の相変わらずのイタリアくささ、一転、アメリカに渡ってからのハリウッドドリームの世界を、一つの線でつなげて見ることができたのた。
さらに、この映画は、兄弟が照明係として太陽光をスタジオに差し込ませるシーンの美しさ、『イントレランス』(1916)を撮影中のD・W・グリフィス(チャールズ・ダンス)が吐く少々くさいが感動的なセリフ…など、映画作りに対する愛に満ちあふれていた。また、兄弟を名もない裏方として描くことで、1本の映画にいかに多くの人々が携わっているのかを知らしめ、大道具や小道具を作る彼らの仕事ぶりを映すことで、イタリアもアメリカも超えた職人気質を歌い上げる。
そして、第一次大戦に応召され、戦場で瀕死の状態に陥った兄弟が、子供たちへのメッセージとして、互いの姿をカメラ(フィルム)に収める切ないラストシーンで、映画を撮ることへの執着を見せる。
これら、映画への愛がストーリーの縦糸だとすれば、横糸は、いかにもイタリアらしい父(オメロ・アントヌッティ)と子や、兄弟の愛ということになるだろう。こうした兄弟の絆の強さは、タビアーニという、二人で一人の兄弟監督だからこそ描けたに違いないと思えるのだ。
【今の一言】と、これは大好きな映画だったのに、これ以降、彼らの映画とは何故か縁がなかった。
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