『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(2024.9.17.新宿ピカデリー.完成披露試写会)
殺人を犯しながら、社会への反逆者、民衆の代弁者として祭り上げられたアーサー=ジョーカー(ホアキン・フェニックス)。そんな彼の前にリー(レディー・ガガ)という謎めいた女性が現れる。
ジョーカーの狂乱はリーへ、そして群衆へと伝播拡散し、世界を巻き込む新たな事件が起こる。
「バットマン」に悪役として登場するジョーカーの誕生秘話を描き、アカデミー賞でホアキンが主演男優賞を受賞するなど高い評価を得たサスペンスエンターテインメント『ジョーカー』(19)の続編。
トッド・フィリップス監督のほか、脚本のスコット・シルバー、撮影のローレンス・シャー、前作でアカデミー作曲賞を受賞した音楽のヒドゥル・グドナドッティルらメインスタッフも続投した。
タイトルの「フォリ・ア・ドゥ」は、フランス語で「2人狂い」という意味で、精神障害の妄想性障害 の一つ。一人の妄想がもう一人に感染し、複数人で同じ妄想を共有することが特徴とされる。
前作の、人を笑わせたいという願望がやがて狂気に変わるアーサーの姿は、悲しみと不気味さを併せ持つピエロ=道化師の本質を鋭く突いていた。
また、劇中にコメディー映画の古典であるチャップリンの『モダン・タイムス』(36)が映り、そのテーマ曲である「スマイル」が流れ、ラストソングはフランク・シナトラの「悲しみのクラウン」ということからも明らかなように、「道化とは?」「笑いとは?」が全体を貫くテーマの一つでもあった。
今回は、“ジョーカーになったアーサー”のその後を描きながら、「彼は悪のカリスマか?」「ただの弱き人間か?」「果たしてジョーカーは一体誰なのか?」を突き詰め、メディアや大衆の欲望と実際との隔たりも暴いている。
また、ガガが相手役になったことからミュージカル的な要素が加味され、「世界は愛を求めてる」「ザッツ・エンターテインメント」「遥かなる影」などをホアキンとガガが歌い踊る妄想シーンがあり、そこから彼らの夢や理想、本音がにじみ出るというユニークな手法が取られている。
前作は賛否両論があったが、今回も人間の欲深さや愛されたいという承認欲求をジョーカーに仮託して描いているだけに、嫌悪する者と共感する者とに分かれるのではないかと思う。いずれにせよ、前作同様に、刺激的な映画であることだけは確かだ。
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