「東京音頭」の中山晋平と黒澤明の『生きる』
昨日は神宮球場でヤクルトVS広島戦を観戦。6本のホームランが飛び交う乱打戦で花火も上がった。結果は贔屓の広島が勝ってめでたしめでたし。ところで、神宮球場ではヤクルトが得点した時と7回裏の攻撃前に、いつの間にかチームの応援歌となった「東京音頭」が歌われる。「東京音頭」の作詞は西條八十、作曲は中山晋平だ。というわけで、中山とある映画との関わりについて。
中山晋平は「カチューシャの唄」に代表される大正ロマン期の劇中歌の数々、「しゃぼん玉」「砂山」などの抒情的な童謡、唱歌、ほかにも「東京行進曲」などを手がけた大作曲家。ところが、作曲した曲は今でも有名だが彼の名はほとんど忘れ去られている。
彼にはその人生を象徴するかのようなこんなエピソードがある。戦後は時流に合わなくなり、作曲もほとんどしなくなった中山。そんな彼が1952年(昭和27)の暮れに、偶然入った場末の映画館(恵比寿説と五反田説あり)で、大正時代に作曲した「ゴンドラの唄」を耳にする。その映画はいわずもがなの黒澤明監督作『生きる』(52)。中山は映画を見た翌日に倒れ、ほどなくして亡くなったという。
この映画で、がんに侵された主人公の渡辺勘治(志村喬)が、自分が完成させた公園のブランコを漕ぎ、「ゴンドラの唄」を歌いながら満足して旅立っていった姿に、中山は己の人生を重ね合わせたのかもしれない。でき過ぎとも思えるエピソードだが、何か運命的な出会いを語っているようで心に残る。
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