『ロビン・フッド』(91)(1991.10.3.丸の内ルーブル)
2人のケビン
十字軍遠征から帰還した英国貴族のロビン(ケビン・コスナー)は、獅子王リチャード(ショーン・コネリー)不在の中、変わり果てた故郷の姿に驚く。圧政を強いるノッティンガムの代官(アラン・リックマン)に立ち向かうため、ロビンはシャーウッドの森を居城として、仲間たちと共に戦いを始める。
『フィールド・オブ・ドリームス』(89)『ダンス・ウィズ・ウルブス』(90)と、立て続けにアメリカの象徴を演じたケビン・コスナーが、なぜ今さらロビン・フッドなのかという疑問が拭い切れず、実のところ、見ようか見まいか迷っていたのだが、監督がケビン・レイノルズと聞いて見ることにした。
なぜなら、コスナーの出発点は、レイノルズと組んだ、こちらにとっては少々思い入れがある青春映画『ファンダンゴ』(85)であったのに、その後、スターとなったコスナーに比べて、レイノルズは不遇であり、全く立場が違ってしまった2人が、再びコンビを組んだことに興味を持ったからである。
そんな、少々感傷的な思いを抱きながら見始めたわけだが、映画の方は、こちらのそんな思いはどこ吹く風の明朗活発な娯楽作品として仕上がっていた。
中世を舞台にしたストーリーに、最初はちょっと戸惑ったが、ストーリー展開がどんどん加速して、いつの間にか中世という時代背景を忘れて、単純に面白い冒険活劇を見せてもらったという印象に落ち着いた。
俳優陣も、コスナーを脇で支えながら、おいしいところを持っていった相棒役のモーガン・フリーマン、ロビンとマリアン伝説を今風に再現し、キャリアウーマン的なマリアン像を構築したメアリー・エリザベス・マストラントニオ、『ダイ・ハード』(88)とは色合いが異なる、少々間抜けな悪党を演じたアラン・リックマンらが奏でたアンサンブルもなかなか楽しかった。
聞けば、レイノルズをこの映画の監督に推薦したのはコスナーであり、『ダンス・ウィズ・ウルブス』にもレイノルズは“隠れ監督”として協力したらしい。
意地悪く考えれば、コスナーのお抱え監督になってしまったともいえるが、良く言えばコスナーとの友情の証と取れないこともない。そう考えると、この映画の楽しさは2人のケビンの相互作用によるものだったのかもしれないとも思える。
さて、この映画を見て『七人の侍』(54)を思い浮かべたのは、自分ばかりではあるまい。いまや『七人の侍』は、西洋の歴史活劇の手本にもなっているのだ。
【今の一言】“2人のケビン”の友情の終焉は『ウォーターワールド』(95)で訪れた。
『ウォーターワールド』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ffb6325d5aeb0fba5acb7b4bd8467fcb
『ファンダンゴ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fe95a89c8e3090a60078915b391cca93
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