田中雄二の「映画の王様」

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『マディソン郡の橋』

2020-06-08 06:05:54 | 映画いろいろ
『マディソン郡の橋』(95)(1995.8.28.ワーナー試写室)
 
   
 
 アイオワ州マディソン郡で、農場主の夫と2人の子どもと暮らすフランチェスカ(メリル・ストリープ)は、夫と子どもの留守中、橋を撮影するためにこの地に立ち寄ったカメラマンのキンケイド(クリント・イーストウッド)と出会い、恋におちる…。
 
 不倫もののパターンとしては、デビッド・リーンの『逢びき』(45)や、この映画と同じくストリープが主演した『恋におちて』(84)といった、過去の作品と大きく違うところはなかったのだが、この映画には、成長した子どもたちが亡くなった母親の不倫を後追いして回想するという、後日談的な面白さがあった。
 
 ただ、風景の美しさはあっても、なぜこの原作が日米ともにベストセラーになったのか、という疑問が残った。この映画は、どういうスタンス(例えば、不倫の経験の有無、不倫をされた側など)で見るかによって、受ける印象は大きく異なると思うのだ。
 
 自分の場合は、許されない愛に身を焦がす2人の激しい恋情という点では理解できなくはないが、その裏で隠されている夫、あるいは子どもたちがいると思うと、何か違うのではないかと思ってしまうのだが、もし自分が不倫の渦中にいたら、全く違う印象を持つのかもしれない。
 
 だから、この話が受けたのも、不倫という言葉や行為のうわべの雰囲気に酔っている者、あるいは不倫に対する罪の意識や後ろめたさなどを隠すために、それを美化したり、夢のように、ロマンチックに語ったりする者が多いからではないかと思うのだ。
 
 ところで、当初の予定通り、この映画をスピルバーグが撮っていたらどうなっていただろう、という興味が湧いた。それは彼の両親が離婚し、そのためか、彼の映画には母子家庭が多く登場することもあって、そうした屈折が、この“母親の不倫を知った子どもたち”の描き方にどう影響を与えるのかが見てみたかった気がするからだ。
 

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