『殺人者はライフルを持っている』(68)(1987.6.16.)
引退を決意した老俳優バイロン(ボリス・カーロフ)主演の恐怖映画を上映しているドライブイン・シアターで、ライフルを持った青年による無差別銃撃が起きる。
ピーター・ボグダノビッチの監督デビュー作。何とロジャー・コーマン命令の下、カーロフを借りて23日間で撮り上げた即席映画とのこと。そんな条件下で撮られた、評論家上がりの監督第一作としては、驚くべき出来の良さだと思う。
映画の奥にあるベトナム戦争の病根というテーマは、いかにもニューシネマの走りとして時代を象徴しているし、カーロフに対するオマージュ映画として見れば、いかにも映画フリークのボグダノビッチらしいという見方もできる。
実際、映画フリークという点では、後の『ラスト・ショー』(71)でのベン・ジョンソンの起用、ハワード・ホークスの『赤い河』(48)への思い入れ、あるいは『ペーパー・ムーン』(73)でのチャップリンやジョン・フォード的な構図などとも通じるところがある。
そうなると、思いは70年代前半のボグダノビッチ全盛期へといってしまうのだが、残念なことに今のボグダノビッチは全く精彩を欠いている。所詮物まねの域から脱せなかったと言ってしまうのは簡単だが、それだけでは割り切れない魅力が彼の映画にはあると思いたい。ここは一つ、奇跡のカムバックを期待したいものだが。
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