むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『ふぉん・しいほるとの娘(上)(下)』吉村昭(新潮文庫)

2024年03月03日 | 読書
吉村昭の主な小説をほとんど読んでしまい、最後に残った本が一番長い本作となりました。
江戸時代末期に日本に訪れたオランダの医師シーボルトと、遊女の其扇の間に生まれた娘であるお稲の一生とつづった話になります。
シーボルトが日本にやってきたところから其扇とのなれそめも描かれており、お稲が生まれるのが上巻の中盤くらいということで、激動の時代を克明に描くことを怠ってはいません。それゆえ、話がいろいろなところへ飛び、吉村昭の幕末小説の集大成となっています。
吉村昭の作品『間宮林蔵』『長英逃亡』『桜田門外の変』『天狗争乱』『彰義隊』などの内容も含まれており、興味深く読めました。
出島がある長崎を中心に話が進むため、当時の国際情勢や幕府体制から新政府への移り変わる政治の話などをやや外側の角度から感じることができました。
美貌の遊女其扇と、ドイツ人(オランダ住のドイツ人)のシーボルトの間に生まれたお稲は、たぐいまれな美貌の持ち主ですが、医の道を志し、学問に生きることとなります。当時、女性に学問は不要という風潮の中で果敢に学問に挑んでいくことになります。
激動の時代の中で波乱万丈の生涯を生き抜いていく彼女の姿は、すさまじいものがありました。

コメント
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