爪の先まで神経細やか

物語の連鎖
日常は「系列作品」から
http://snobsnob.exblog.jp/
へ変更

フランスパン(バケット)でサンドウィッチ

2015年06月08日 | Weblog
フランスパン(バケット)でサンドウィッチ

パリの最後の日。同行者も自分も節約という観点がなかった。

大いに食べ、大いに飲む。

雨に降られ、美術館をいくつも回った。

モナリサを眺め、ベルト・モリゾを見つめる。

それらの楽しみも終わり。あとはホテルに戻って、荷物をぶらさげ空港に向かうだけ。仁川を経由して、なぜここに、という成田エアポートへ。

「もう一本ぐらい飲んでおきます?」ということは赤ワイン。

ホテルの場所は中心から外れた、ちょっと下町っぽいところ。

店に入る。店主は若々しく見える。祖父がいて、男の子がいる。店の立ち位置がいまいち分からないが、近所のひとたちがちょっとたむろするような定食屋とバルの中間のような場所だった。

つむじ辺りを隠すような小さな帽子をかぶっている。

だが、自分にとってすべては異人さん。

ショーケースを覗く。

鶏肉がある。フランスパンもある。

赤ワインで喉を潤し、これを頬張ったらという近い未来を予測して、頼んでみる。

「これ挟んで、サンドイッチみたいにできる?」メニューらしきものがない。見ていないのかもしれない。そういう調理法をベースにした店づくりなのかが具体的に分からないが、取り敢えずは交渉の世界である。

気楽にうけたまわってくれる。

真ん中を切り裂き、パプリカのようなものも入れ、ちょっと表面を焼いて、適度な大きさに切ってくれる。

満点。

白身魚のソテーに白ワインも旨かったし、ビーフ・シチューも絶品だったが、なんだか最終的にこれだった。

気取らない生活。気取らない人々。

いろいろお店にやってくる。

常連らしき、近くの学校の新米先生のようなタイプがにこやかに微笑む。(薄れた記憶の美化傾向により、瀬戸内海の夏目雅子さんと化している)

排他的なものは一切、なかった。

お金を払って、ホテルまで歩く。

この瞬間がいつも悲しい。

またオフィスでPCに向かう生活と再対面になるのだ。

バスは揺れ、飛行機も揺れる。機内食のクオリティーにげんなりして、映画を見る。

仁川でシャンプー・セットのようなものを買って、待ち時間にシャワーを浴びる。剃らなかった髭は一週間ほどで、むさ苦しくボウボウになっている。

成田から自宅まで。

すべてを記憶しておいて、すべてを忘れてしまうだろうというシーソーに乗っている。

時間が経って、2015年のいまである。

ネット上の地図は便利であり、危険でもある。なんとなくあの店を探す。ここかな、という見当をつけるが、あの日に簡単に戻れるわけでもない。

そして、排他的なニュースを見守る。

ボルドーを紹介する映画を見て、予想と反して、現在の市場を買い占めているのは中国の富裕層であり、その儲けのひとつの稼業は大人のトイザラス(パートのおばさんが無表情で組み立てている)であることを知り、文化もなにもなく、げんなりとしてしまった一夜のことを追記する。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿