朱蒙(チュモン)が見た日本古代史(仮題)

「朱蒙」「風の国」「善徳女王」・・・韓国発歴史ドラマを題材に日本史を見つめ直す

新羅人名の「宗」は麻呂や丸と同じらしい

2010年05月25日 | 風の国

麻盧(マロ)が麻呂になったというのはまだ理解できるとしても、麻盧が「宗」になったというのはどういうことか。

もう一度、東洋文庫版「三国史記」の脚注から引用しておこう。

『麻盧は新羅人名語尾の宗となり、日本では麻呂となった。』

つまり、新羅人の名前の語尾に使われる「宗」は、日本で言う麻呂や丸と同義ということである。ドラマ「善徳女王」では、世宗(セジョン)、夏宗(ハジョン)、宝宗(ポジョン)の3人の名前の語尾に「宗」の字が使われているが、彼らの名前はいうなれば蘭丸とか歌丸のようなニュアンスということか。

しかし、どうもすっきりしない。
「宗」の字は日本では「ソウ・シュウ」あるいは「むね」と読む。朝鮮半島でどのように読むかよくわからないが、「マロ」には程遠いような気がするのだが。

ところが、宗=マロに近い読み方をしていたという証拠が見つかった。 以前古本で購入した「三国遺事」(朝日新聞社刊)の中のこれまた脚注の一箇所である。(写真)

『原宗=新羅の第23代法興王の諱(いみな)である。原宗は・・・』に続く部分の発音表記。これはおそらく「マラ」と読むものではないか。とするなら、麻盧(マロ)が「宗」に転化していたとしてもおかしくはない。(ちなみに法興王とは「善徳女王」で言うところのチヌン大帝(真興王)の先代である。)

漢和辞典によれば「宗」の字には「かしら」という意味もあるので、その点からも確かに「丸」と同義と考えておかしくないのかもしれない。

ところで、「三国遺事」などでは花郎(ファラン)の名前の記載が、例えば薛原郎、閼川郎などのように「郎」の字がつけられていることがある。この場合の「郎」は尊称としての意味合いだと考えられるが、もしかすると太郎、次郎の由来はこの辺にあるのかもしれない・・・なんてのは考えすぎか。


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3 コメント

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マロについて (マロについて)
2016-04-26 13:50:32
韓国にはコチルマルという言葉があります。これは“強く勇猛な者”という意味なのですが、新羅の居柒夫(コチルブ)という人物の名前が語源になっています。
“コチル”というのは同じ発音で“荒らぶる”という意味の言葉があり、これに“宗(マルまたはマロ)”を付けて“荒宗(コチルマル、またはファンジョン)”とも書かれています。
この“コチルマル”と“ファンジョン”、日本で言う訓読みと音読みの様な違いでして、三韓も日本と同じ様に中国の漢文を自分達の言葉の文法に組み換えて読んでいたんです。その点も日本と共通点があるんですね。

そしてまた新羅には同じ時代に異斯夫(イサブ、いしふ)という武将がおりまして、この人物もまた苔宗(イキマル)とも書かれています。
このように新羅では宗(マル、マロ)がよく使われていたということになります。

新羅の君主の称号として居西干(コソガン)、尼師今、(イサグム)、次次雄(チャチャウン)、麻立干(マリプカン)がありますが、李朝時代から現代の人が王を指して使う“イムグム”という言葉は尼師今(イサグム)が語源になっています。


ちなみに“金”という姓は韓国語では“キム”と読みますが、「金属」や「金剛」といった単語は一切キムとは読まず、「クム」と発音します。
コメントありがとうございます (takizawa)
2016-04-27 12:05:17
たいへん参考になるコメントありがとうございました。

このブログはここ数年間放置したままでしたので、忘れてしまったことも多いのですが、コチルブという名前はケベクで出てきたような気が・・・あるいは善徳女王の方だったかも?

Unknown (宝)
2023-05-05 23:22:53
はじめまして。私は今ドラマ「善徳女王」に夢中です(笑)。
それ以前から日本古代史が好きで、朝鮮古代史との密接な関わりに興味があり、韓流時代劇で日本(倭)の話題が出てくるたびに、ちょっと嬉しくなります。
ドラマ「善徳女王」で、庾信郎、閼川郎と「郎」付きで呼ばれているのを聞いて、思い出すのが「郎子」「郎女」です。郎子の例は仁徳天皇の異母弟である菟道稚郎子しか知らないのですが、郎女はよく目にしますよね。聖徳太子の妃である蘇我刀自古郎女、万葉歌人の大伴坂上郎女、大友皇子の生母である伊賀采女宅子郎女などです。古語辞典によると、郎女は女性を敬い親しんで呼ぶ語で名前の下に付けて用いる。郎子も同じく男性を敬い親しんで呼ぶ語で以下同じ、とのことです。
花郎の庾信郎の「郎」とは関係ないと思いますが、ここにも朝鮮半島と日本列島の共通点が見られることがおもしろいです。

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