朱蒙(チュモン)が見た日本古代史(仮題)

「朱蒙」「風の国」「善徳女王」・・・韓国発歴史ドラマを題材に日本史を見つめ直す

「女性宮家」創設に関連して

2011年12月01日 | タイムマシン

ここのところ「女性宮家」の創設に関する話題が盛んにニュースになっている。
例えば11月25日付けの記事には以下のようなものがある。

「女性宮家」創設検討を…宮内庁、首相に要請 (読売新聞)

<宮内庁長官>皇室典範が抱える課題指摘 内閣の対応が焦点 (毎日新聞)

以下に毎日新聞の記事を一部引用する。

 宮内庁の羽毛田信吾長官が野田佳彦首相に皇室典範が抱える課題を伝えたのは、皇室のことを預かる身として当然の務めだ。典範は、皇族女性は皇族以外と結婚した場合、皇室を離れると定めており、皇位の安定的継承の上で大きな問題をはらんでいることははっきりしている。今後は、この課題に内閣がどう対応する かが問題となる。

 現在の皇室は、天皇陛下と22人の皇族で構成されている。このうち、未婚女性は8人。天皇陛下の孫の眞子さまが先月成人するなど多くが結婚適齢期を迎えている。


 また、陛下を除いて現在7人の男性皇族のうち4人が60歳を超えており、皇位継承3位の秋篠宮ご夫妻の長男悠仁さま(5)が結婚する頃には、皇族の数が極端に減っている可能性も否定できない。皇室全体の活動が制約を受けることも懸念される。

女性宮家を創設すべきかどうかという問題は、現代社会、そしてこれからの日本社会における皇室、皇族のあり方を問う問題でもあって、個人的には軽々しく扱えないが、興味深いのは記事中の次の部分。

皇族女性は皇族以外と結婚した場合、皇室を離れる

これをちょっと読み替えてみれば「善徳女王」におけるチョンミョンの立場そのものになるわけだ。

聖骨(ソンゴル)の身分にある者は聖骨以外と結婚した場合、聖骨を離れる

王族や皇族といった身分にある人たちの範囲は、あまり広すぎるといらぬ衝突を生むし、逆に狭すぎても長期的な安定性に欠け、結局は後継者問題が生じるわけである。ドラマ上の話とはいえ、トンマンとミシルの確執、そしてチュンチュまでが「骨品制は野蛮だ」と主張して王位獲得に乗り出したのもそういった背景から見直してみるとますます興味深い。

それにしても、現皇室の構成を改めて眺めてみると、圧倒的に女性が多いことに驚かされる。どこかでこっそり双子を生んだ皇后様がいたのではないか、なんていう冗談は少々不謹慎だろうか。

皇室の構成図 (宮内庁資料)


21世紀東アジアの動乱?

2011年11月05日 | タイムマシン

「2020年代に北朝鮮は存在しない」という結構衝撃的な(?)ニュースがあがっていた。

「2020年代に北朝鮮は存在しない」 露研究機関が報告書

ロシアの研究機関が政府に提出した報告書の中に記載されていたものだが、記事によれば、

「金正日総書記から正恩氏への権力委譲が崩壊を促進する」と分析。また20年代には「(南北は)統一へ向けた実質的な段階に入っており、北朝鮮は現在のような形態では存在していない」と結論づけた。

とのことで、早い話がこの先10年から20年内に北朝鮮という国家は消滅するという予測のようである。

北朝鮮という国は、この時代にあって専制君主を貫くという特殊な形態であり、核開発でテロ国家指定されたりと、近隣国にとってはなかなかにやっかいな存在である。

わが国にとっては拉致被害者の問題もあり、早急な解決が望まれると同時に、そんな危険な国がなくなってしまうのは大いに結構と思う人も多いかもしれない。

しかし、外交や国家間のパワーバランスというのは、なかなか一筋縄ではいかない部分がある。

引き続き記事の中身を見ると、混乱した北朝鮮では分裂、権力争いが起こり、その結果「韓国統制下で臨時政府樹立」→→「経済の韓国への吸収」という道を進むと考えられるわけだから、もしかしたら将来的には朝鮮半島に「大韓民国」を上回る経済大国が出現ということになるかもしれないわけだ。

当然、日本も無関係ではいられない。そうなったら日本の立場、世界における役割はどう変わるのか。
7世紀に高句麗・百済が滅び統一新羅が成立した時と同じぐらいのインパクトがこの先生じるかもしれないわけである。

 

ところで、YouTubeに興味深い動画が。

History map of East Asia for 2000 years (東アジアの勢力図の変遷)

2000年前から現在に至るまでの東アジアの領土、国境の変遷をアニメ化したものである。すべてが正確な事実とは認めにくいだろうが、おおまかな流れをつかむのには参考になりそうである。


トンマンの苦悩、ユリ王の憂鬱

2010年08月01日 | タイムマシン
古代社会の政治のあり方というと、以前は、王権と民衆、支配者層と被支配者層という単純な構造をイメージしていたのだが、実はそう簡単なものではなかったのだということがだんだんわかってきた。

ドラマ「善徳女王」で、シルラ(新羅)の実質的な権限を掌握しているのはミシルである。真平王は王でありながらあまりにも無力であり、ミシルの行うことにただただ承認を与えることしかできなかった。
なぜかというと、貴族達のほとんどがミシルに従っているからである。ハベク会議の意向を無視しては王といえども何もできないという現実。

また、ドラマ「風の国」でも、ユリ王は最後まで王としての自らの無力さに苦しんだ。本来は王をサポートすべきはずのチェガ会議の権限が強く、何をするにしても諸加[チェガ]会議、特にその中心にいるサンガの意見に耳を傾けなければならなかった。太子を選ぶ際もそうだ。ムヒュルが適任だと考えながらも、チェガ会議との衝突を避けるため、いったんはヨジン王子を押す決断を下したのである。

単にドラマの中の話ということではない。歴史的には・・・特に高句麗の初期において、王権は確固たるものではなかったようである。

権力の座にいるものが権限を発揮するのではなく、そのとりまき・・・多くの場合、それは貴族と呼んでいいものかもしれない・・・が実質的な決定権を掌握しているというのは、本来、その国にとって良いことではない。貴族は本質的に自らの利益を極大化する事に専心し、全体の利益、つまり国あるいは国民にとっての利益を顧みない傾向があるからだ。
しかし、それは歴史上、あらゆる国で現実的に起こっていたことではないのだろうか。

日本の現状もある意味ではそれに近いものがあるかもしれない。
日本に貴族なんていない?いや、そういう制度上の問題ではないのだ。
目に見えなくても実質的な階級差は開く一方である。全体から見たらごく一部の富裕層に集中する資本。あるいは政治家の意向など関係なく強大な権力構造を手中に収めた官僚組織。

いったい政治家の言う「民意」とは誰の意見を集約したものなのか。
無責任に批判、揚げ足取りばかり行うメディアは本当に国民の意見を総括しているのか。

出世明神としての高麗神社

2009年09月20日 | タイムマシン
埼玉県日高市にある高麗神社は、8世紀初頭に設置された高麗郡の初代郡司を務めた高麗王若光(こまのこきしじゃっこう)を主祭神とする神社であるが、古くから「出世明神」としても名高い神社である。

その由来が神社社務所の脇に記されている。

出世明神の由来

当社は遠く奈良時代元正天皇の御代高麗郡を統治した高麗王若光(こまのこきしじゃっこう)をお祀(まつ)りした社で、創建より千三百年を数える関東有数の古社である。
古来、霊験あらたかをもって知られ、高麗郡総鎮守として郡民の崇敬を受けてきた当社は、近代に入り水野錬太郎氏・若槻禮次郎氏・浜口雄幸氏・斎藤実氏・鳩山一郎氏等の著名な政治家が参拝し、その後相次いで総理大臣に就任したことから、出世開運の神として信仰されるようになった。近年では、政界・官界・財界を始め、各界人士の参拝が相次ぎ、特に法曹界では石田和外氏が最高裁判所長官、吉永祐介・北島敬介両氏が検事総長に就任された。

 この中で、総理大臣に就任した鳩山一郎氏とは、いまさら言うまでもないが、先ごろ首相になったばかりの鳩山由紀夫氏の祖父である。

鳩山首相が就任してすぐ韓国への訪問について言及したり、あるいは韓国サイドで鳩山首相を歓迎する声が異常に多いというのもそれなりの背景があるわけだ。

ところで、写真は高麗神社入口付近を撮影したものだが、神社名が刻まれている石柱のすぐ横には松の木が立っている。一説に「松」は高句麗を象徴する木であるとのことで、高句麗の古墳には必ず松の木が植えられているという話もある。

「高」と「松」は切っても切れない関係。これは様々なところで目にすることができる。