朱蒙(チュモン)が見た日本古代史(仮題)

「朱蒙」「風の国」「善徳女王」・・・韓国発歴史ドラマを題材に日本史を見つめ直す

復耶会のシンボル

2010年04月28日 | 善徳女王
引き続き伽耶連盟について。

復耶会というのはおそらくドラマ上の設定で実在した組織ではないと思われるが、伽耶が新羅に統合されたのち、実際に伽耶を復興させようとする運動があっただろうことは容易に想像される。それは百済、高句麗が滅んだあと現実に同様な運動が起きていることでも十分考えうることだ。(百済が滅んだ際には、日本に滞在していた扶余豊璋(義慈王の息子)が百済復興のため中大兄皇子に送り出された。)

興味深いのは復耶会のトレードマークとして使われている亀の図柄(写真)。
亀の甲羅の上に6個の卵が乗っているというものだが、6個の卵というのは六伽耶とも呼ばれた伽耶連合を象徴しているのだろう。つまり以下6つの国である。

金官伽耶
大伽耶(伴跛)
阿羅伽耶(安羅)
古寧伽耶
星山伽耶
小伽耶

さらに重要なのは亀が使われているということ。亀は伽耶のシンボルそのものだという話もある。金官伽耶があったとされる地域には亀旨峰(くじほう)という伽耶の建国神話に語られる山がある。

伽耶と日本の関係が深かったことからすれば、例えば、飛鳥を代表として各地に見られる亀石の存在には何がしかの意味があるのかもしれない。

あるいは亀を助けてどうのこうのという昔話には、隠されたメッセージが潜んでいるのかもしれないのである。

どういうわけか日本書記には浦島太郎に良く似たエピソードがある。

『日本書紀』巻十四雄略天皇二二年(戊午四七八)七月◆秋七月。丹波國餘社郡管川人水江浦嶋子乘舟而釣。遂得大龜。便化爲女。於是浦嶋子感以爲婦。相逐入海。到蓬莱山歴覩仙衆。語在別卷。

復耶会と伽耶連盟

2010年04月27日 | 善徳女王

復耶会が既出の組織かどうかはさておいて。この辺で少し伽耶に関して整理しておかなければならない。

伽耶というのは、高句麗・百済・新羅の三国時代に朝鮮半島の南側地域に存在し、6世紀半ばに消滅した国であるが、その実態にはいまだ謎が多いとされる。

そもそも「国」とは言うが、実際には小国の連合と言ったほうが正解で、三国に匹敵する統一した勢力にはなりえなかった・・・だからこそ、最終的には新羅に吸収されることになるわけである。小国の連合ということで言えば、ドラマ「朱蒙」における卒本(チョルボン)をイメージしてみるとわかりやすいかもしれない。

その小国の連合(伽耶連盟と言われたりもするが)の中で覇権を争っていた二大勢力が金官伽耶大伽耶(伴跛)だ。この辺の背景がわかるとユシンとウォルヤがどういう関係にあるのか理解しやすいと思う。

ウォルヤ(月夜)
私はテガヤ(大伽耶)最後の太子であるウォルガン太子の嫡男である。わが名はウォルヤ、そう、復耶会の真の長(おさ)だ。

キム・ユシン
そなたの父君であるテガヤのウォルガン太子と、わがクムグァンガヤ(金官伽耶)最後の王、クヘ王が成せなかったことを、われらが今日ここで行うのだ。

ウォルヤは大伽耶(伴跛)の王族の血をひくものであり、同様にユシンは金官伽耶の王族の血をひくものである。

つまり、伽耶連盟の時代に両国が統一勢力を築くことはできなかったが、新羅のこの時代においてその子孫同士が同盟を結び、同じ目標に突き進もうということをユシンは訴えていたわけだ。


人を得たものが、天下を得て、時代の主になれる

2010年04月26日 | 善徳女王

ドラマを観ていてひさびさに鳥肌が立った。
「善徳女王」第26話の終盤。「王になる」と、あまりに突拍子もないことを言い出したトンマンだったが、ユシンのサポートを受けあっという間に伽耶勢力を配下につけてしまったわけだ。
ユシン、ウォリャ(月夜)、アルチョン、ソルチ(雪地)、ピダム・・・
後に善徳女王の重要な部下となる(たぶん)面々がここに集結したわけである。
ミシル風に言うならば、こんな感じだ。

(以下、トンマンの心の叫び・・・ウソ)
王様、人を得るものが、天下を取るとおっしゃいましたか
人を得るものが、時代のあるじになるとおっしゃいましたか
人・・? ご覧ください、王様
わたくしに従うものです 
王様ではなく、このわたくしに従うものです
これから、わたくし「トンマン」の時代がまいります

ユシンが、「私が選んだ、王であらせられる」と言ったあとのアルチョンの表情がとても良かった。(「ユシン、やってくれたな」という感じ?)

それにしてもユシンも大胆な決断を下したものだ。ウォリャとの駆け引きはスリル満点だった。

ところで復耶会というのは既出の組織だっただろうか。百済との戦でソヒョンを助けたとかなんとか言っていたようだが・・・。初期のストーリーの細かいところはすでに忘れかけている。GW中はレンタルDVDを借りてきてゆっくり見直すか。


トンマンの涙

2010年04月25日 | お気楽ネタ

ここ数話の「善徳女王」でトンマンが涙を流す場面がかなりあったのだが、トンマン・・・というかトンマン役のイ・ヨウォンが涙を流すさまに、なにがしかの違和感を覚えていた。

それはなぜかなあとずっと考えていたのだが・・・そうか。

(T_T)

こんな感じ。


アルチョンはなぜ自決しようとしたのか

2010年04月24日 | 善徳女王

「善徳女王」第25話で自決を図ろうとするアルチョンをトンマンが止める場面があるが、「なぜアルチョンが自決しなければならなかったのか」という疑問を持った人が(もしかしたら)いるかもしれない。まあ、「善徳女王」を第1話から観ている人にとってはすごく自然な流れであるわけなのだが。

化粧を施したアルチョンが郎徒(ナンド)たちを引き連れて宮殿に入り、真平王に直訴する場面がある。これはつまりナンジャンキョリ(郎粧決意)ということだ。詳しくは第1話からマヤ夫人の説明を引用しておこう。

お前はナンジャン(郎粧)を知らぬのか
ファラン(花郎)が顔に化粧をすることをナンジャンと言う

ナンジャンキョリ(郎粧決意)を知らぬか
死を覚悟するという意味だ
戦に出る前日や大義のため戦うとき
ファランたちは化粧をする
戦って死ぬ決意だ

己の最後の姿を美しく残すために・・・

本来、ファランの一人に過ぎないアルチョンが王に直訴するなどということは許されざることなわけである。 しかし、唯一それを可能にする方法がナンジャンキョリ(郎粧決意)なのだ。死を覚悟するのと引き換えに、アルチョンはチョンミョン王女の死をキチンと調べてくれと真平王に訴えたわけだ。命懸けの行動だったのである。

しかし、結局それは受け入れられなかった。となればアルチョンは死ぬしかないわけである。そうでなくとも、もともと規律に厳格なアルチョンのことだ。ナンジャンキョリ(郎粧決意)が受け入れられないまま生きていくことは恥さらし意外の何ものでもない。

それでも耐えろと、トンマンは諭したわけだ。


トンマンの逆襲

2010年04月16日 | 善徳女王

自分の過酷な運命を知ってしまったあと、追っ手から逃げるトンマンにはかつての勇敢さ、ポジティヴさが失なわれてしまい、ここ数話のストーリー展開には少々重苦しいものがあった。その挙句に先週のチョンミョンの死である。こんなに早い段階で主要人物のひとりが亡くなってしまうとは。脚本家を恨んだりもしてみたが、そうは言っても仕方があるまい。

しかし、実の姉チョンミョンの死を目前にして、ようやくトンマンの心に火が点いたようだ。それは恨み、憎しみをエネルギーとするものだが、それにしても、今週(第25話)のトンマンの変貌振りには目を見張るばかりである。自決を図ろうとするアルチョンを諭す様は、既に王者の威厳を見せ始めている。いや~、ますます面白くなってきた。

25話にはそのほかにも注目すべきエピソードがいくつかあった。

●ピダムとトンマンは幼少時に会っていた。

赤ん坊のトンマンを連れて逃げるソファに、ムンノがトンマンの重要な役割を話す場面。トンマンのそばに寄る小さな子供がピダムである。実はピダムには隠された(驚くべき)素性があるのだが、それは後日明らかにされるだろう。間違ってもWikipediaなどで調べてはいけない。将来の楽しみが減ってしまうことになる。

●ミシルに呪いの言葉を投げかける王妃

チョンミョンの葬礼のため宮殿にやってきたミシルに対し、王妃が鬼のような形相でこんな言葉をなげつける。

おまえはきっと死ぬ
持っているものはすべて失い、奪われ、踏みにじられ
一人孤独に震えながら死ぬであろう

墓石も無く、墓も無く、跡形もなくお前は死ぬ
この国の歴史に、お前の名は、ただの一文字も残ることはないであろう

以前のネタにも書いたが、朝鮮の三国時代を伝える歴史書で正史とされる「三国史記」、「三国遺事」にはどこにもミシルの名前はないのである。

ドラマ「ヨンゲソムン」第13話のナレーションに寄れば「花郎世紀」という史料にその名があるらしいが、「花郎世紀」は一般には偽書とみなされる。従ってミシルの実在性には疑問がある、ということらしい。


「三国遺事」を入手

2010年04月04日 | 考察ノート
趣味が高じてとうとう「三国遺事」まで入手した。
「三国史記」については現在でも新書が安く手に入るが、「三国遺事」となると中古でも入手しづらい。入手できたとしてもかなりプレミアがついた値段になっているのだ。

今回入手したのは1976年に発刊されたもので当時の定価で5,500円。で、それをいくらで買ったかというと・・・・・・まあ、ナイショにしておこう。

パラパラとめくってみたが、思ったほど内容は濃くない。
しかし、たとえばキムユシンが妹の文姫を焼き殺そうとしたエピソード(ドラマ「ヨンゲソムン」第76話)とか、三国史記には登場しない薛原(ソルォン)の名前が見られたりしてそれはそれで興味深い。

というわけで、このブログもますますパワーアップしていく予定(?)なので乞うご期待!