この夏は本当に麦茶をよく飲んだ。麦茶の夏だった。
近所のスーパーでほぼ毎日のように2Lペットボトルを買い、あっという間に消費し続けた。
人体の細胞は三ヶ月ほどで全て入れ替わるという。麦茶が出まわる6月からずっと飲み続けたので、私の細胞の大半は麦茶で形成されていると言っても過言ではない。
それなのに。嗚呼、それなのに。
麦茶のシーズンが終わったらしく、麦茶のペットボトルがスーパーからなくなったのだ。
なんということだ。麦茶依存症になってしまった身には、まさに青天の霹靂!
最初は惜しみなく与え、依存した所で取り上げるなんて、まるで薬の売人の如き卑劣な所業。
欲しい。麦茶が欲しい。
かくして麦茶中毒者ことムギ中は街をふらつく。
金か。金があれば麦茶が買えるのか。あの香ばしさをまた味わえるのか。
貧しいムギ中の瞳は輝きを失い、次第に闇を帯びていく。
銀行から出てきた老婆のカバンを険しい目で追いかける。
だんだん麦茶が切れてきて頭がクラクラとしてくる。中毒症状が出てきたようだ。
天地ひっくり返るような視界の中で、あることを閃いた。天啓だ。
自分で麦茶を栽培……いや、作ればいいではないか、と。
ムギ中はスーパーの茶葉売り場へと駆けこむ。血眼で周囲を見回す。
びっくりした。驚くほど安く麦茶パックは売られている。54袋入りで末端価格198円なり。
ミネラルウォーターと2L用のお茶クーラーも購入。官憲に呼び止められないよう足早に家に滑りこみ、厳重に鍵をかける。
麦茶は煮出す方法と、水出しで作る方法があるらしい。
なんとなく水出しの方が美味しそうなので水出しにキメた。煮出すよりも味に濁りがないと昔、本で読んだことがある。
まずはお茶クーラーにミネラルウォーターを全部入れる。きっちり2L収まった。
そして麦茶パックを2袋投入。入れたばかりだが、すでに透明な水に色が滲み始めている。
およそ2時間で美味しい麦茶ができるという。
まだ1時間しか経っていない。まだ我が麦茶は、冷蔵庫でひっそりと眠っている。
楽しみだ、楽しみだ。
近所のスーパーでほぼ毎日のように2Lペットボトルを買い、あっという間に消費し続けた。
人体の細胞は三ヶ月ほどで全て入れ替わるという。麦茶が出まわる6月からずっと飲み続けたので、私の細胞の大半は麦茶で形成されていると言っても過言ではない。
それなのに。嗚呼、それなのに。
麦茶のシーズンが終わったらしく、麦茶のペットボトルがスーパーからなくなったのだ。
なんということだ。麦茶依存症になってしまった身には、まさに青天の霹靂!
最初は惜しみなく与え、依存した所で取り上げるなんて、まるで薬の売人の如き卑劣な所業。
欲しい。麦茶が欲しい。
かくして麦茶中毒者ことムギ中は街をふらつく。
金か。金があれば麦茶が買えるのか。あの香ばしさをまた味わえるのか。
貧しいムギ中の瞳は輝きを失い、次第に闇を帯びていく。
銀行から出てきた老婆のカバンを険しい目で追いかける。
だんだん麦茶が切れてきて頭がクラクラとしてくる。中毒症状が出てきたようだ。
天地ひっくり返るような視界の中で、あることを閃いた。天啓だ。
自分で麦茶を栽培……いや、作ればいいではないか、と。
ムギ中はスーパーの茶葉売り場へと駆けこむ。血眼で周囲を見回す。
びっくりした。驚くほど安く麦茶パックは売られている。54袋入りで末端価格198円なり。
ミネラルウォーターと2L用のお茶クーラーも購入。官憲に呼び止められないよう足早に家に滑りこみ、厳重に鍵をかける。
麦茶は煮出す方法と、水出しで作る方法があるらしい。
なんとなく水出しの方が美味しそうなので水出しにキメた。煮出すよりも味に濁りがないと昔、本で読んだことがある。
まずはお茶クーラーにミネラルウォーターを全部入れる。きっちり2L収まった。
そして麦茶パックを2袋投入。入れたばかりだが、すでに透明な水に色が滲み始めている。
およそ2時間で美味しい麦茶ができるという。
まだ1時間しか経っていない。まだ我が麦茶は、冷蔵庫でひっそりと眠っている。
楽しみだ、楽しみだ。