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増税後の運賃は?

2013-12-04 23:53:55 | 旅行記
来春からの消費税率引き上げが決まってしまった。
6月に記事にした通り、JR東日本など首都圏の鉄道事業者はICカード乗車券利用者に限って運賃を1円刻み(きっぷ購入より安い)にしたがっていた。
それじゃあ、JR東日本という同じ鉄道会社のエリアでありながら、IC乗車券が使えない地方では、選択の余地なく高いほうの運賃を払うことになるのかと、腑に落ちないでいた。
ところが、その後、別の情報が少しずつ出てきて、少しずつ詳細が分かってきた。分かった順番にまとめてみます。※すべて、発表または報道当時の内容に基づくもの。来春までに変化するかもしれません。

●仙台・新潟でも1円刻み
10月9日付河北新報「JR東日本のIC乗車券スイカ 仙台圏も1円刻み導入へ」。
JR東日本が1円刻み運賃を導入するのは、首都圏だけでなく仙台と新潟のSuicaエリアも対象にすることが分かった。同じ会社なんだし、それはまあ当然。
その記事では「JR東日本によると、仙台エリアのIC乗車券の対象区間は宮城、福島両県の東北線、仙石線、仙山線、常磐線などの約100駅と、仙台空港アクセス線の各駅。」としている。仙台空港アクセス線は「仙台空港鉄道」というJRとは別の第3セクター鉄道なのだが、そちらも1円刻みになるということだろうか?

来年度からIC乗車券を導入する仙台市営地下鉄の扱いについても触れている。「「仙台は首都圏ほどIC乗車券が普及していない。導入後の普及状況をみて判断したい」(市交通局)」だそう。
ちなみに、その愛称が11月8日に「イクスカ」に決まった。


●国の方針
10月29日には国土交通省が「消費税率引上げに伴う公共交通運賃(鉄道、バス)への1円単位運賃(ICカード利用)の導入について」を発表し、運賃に増税分を転嫁する際の基本的な考え方が分かった。
1円刻みのほうが正確に転嫁できるし、お客も納得しやすいから、国交省としては認めるという前提。(考えてみれば、今までの話は鉄道会社が勝手に言ってただけだったね)
1円刻みを実施する場合には「ICカード運賃の方が現金運賃より安くて然るべきという消費者感覚を前提に、利用者にとって分かりやすいものとして、ICカード1円単位運賃が常に「現金運賃以下」となることを基本とする」とし、端数処理については「事業全体として108/105以内の増収を前提に、各交通モードの利用特性を踏まえて現実的に対応。」することとしている。
※「交通モード」というのはバスか鉄道かといった交通機関の「種類」のこと。ちなみに、船、タクシー、航空事業者で1円刻み導入を考えている所はないとのこと。さらに、大阪など首都圏以外の鉄道、バス事業者でも検討していない(一部報道では、具体的にJR東海やJR西日本では検討していないとした)。

詳しく資料を見ると、
「現金よりICのほうが安いか同額」になるようにし、
鉄道では、IC利用者が多いため、現金の1円単位は「切り上げ」を認める
バスは、現金利用者が多いため、現金の1円単位は「四捨五入」を基本とする
という。
そして、定期券の値段等も含めて調整して、全体でちゃんと8%分の消費税になるようにしなさいとのこと。

これを読んだ限りでは、IC乗車券利用者の便宜と国が取りっぱぐれないことばかり考えていて、IC乗車券を使いたくても使えない地方の利用者のことは考えていないように感じた。
「会社全体として8%になるように」ということだが、それはお客の立場にしてみれば「8%以下の負担で済む客」と「8%以上を負担させられる客」がいても構わないということ。多くの客は決まったいつも同じ区間の同じ運賃額を払う人が多いはずだし。何かすっきりしない。


●現行×108/105
ちょっと話が逸れて、地方のバス運賃。青森市企業局交通部(青森市営バス)が10月30日付で消費税転嫁方針(案)を発表している。
7月5日付で国交省自動車局旅客課から出された事務連絡に基づくもの。現金払いでの転嫁方法については、ずっと前に示されていたことになる。

その事務連絡では、2通りの転嫁方法を見解として示していたそうだ。(文書の実物は見ていない)
1つは、「現行運賃(5%税込み)×108/105」。1997年の税率が3%から5%になった時も、これが(当時は105/103)基本だったようだ。
もう1つ、「現行の税抜き運賃×108/100」も可能としている。

青森市営バスでは、現行運賃×108/105を採用する方針で、現行運賃170円以下は据え置き、520円以下は10円アップ、870円以下は20円アップ、それ以上(990円が最高)は30円アップとするつもりだそう。(案なので変わる可能性もあるでしょう)
基本方針は108/105だそうなので、他のバス会社でもこんな感じになるのかもしれない。

短距離利用者としては値上がりがない、またはわずかでほっとしたいところだが、このやり方って、高額運賃を支払う人にしてみれば不公平だ。
10円の端数処理もあるので、どんなやり方でも完全に公平にはできないけれど、税抜き運賃に8%を掛けてイチから計算し直したほうが、まだ納得できそうな気もする。


●Suicaエリア内外で2本立て
11月6日の定例記者会見において、JR東日本の社長が新たな方針を示した。
11月7日付秋田魁新報総合面では、左下にわずか8行の簡潔な記事で伝え、「Suicaが使えない地域での消費税増税に伴う運賃値上げは「(10円未満の一律切り上げではなく)四捨五入で行おうと思っている」と述べた。」という。

なるほど。
現金払いの運賃を、Suicaエリアとエリア外で、切り上げと四捨五入で別々に設定するのか。四捨五入が適用されるエリア外のほうが安くなる区間が出てくるから、これなら多少は納得できるかも。

ただし、切り上げ/四捨五入前の運賃を「現行運賃×108/105」とするか「現行の税抜き運賃×108/100」とするかで、その差額が違ってくる。
JRの本州3社における幹線1~3キロ区間の運賃140円は、国鉄最後の1986年9月から3%も5%も転嫁されず、ずっと変わっていない。これに8%を掛けると、151円になってしまう。IC乗車券なら151円、エリア内できっぷを買えば切り上げだから160円、エリア外なら四捨五入で150円ということになるのだろうか? それともまたまた140円で据え置きだろうか?
結局は具体的な運賃表が明らかになるまでなんとも言えないか。


エリア内外で2本立ての運賃にするとは、考え付かないアイデアだった。それはそれで心配なことも。
実際の発券操作はコンピュータがやってくれるからいいとしても、今でさえ簡単ではない運賃体系がさらにややこしくなりそう。
両方の運賃体系が混在することになるSuicaエリアの末端に近い駅(甲府、いわき、黒磯、長岡、郡山、小牛田等々)、乗り入れ先の私鉄で乗り越し精算する時とか、面倒が起こらないだろうか。

それから、新幹線にはSuicaでは乗車できない。(一部の定期券や割引乗車券を除く)
したがって、東京-那須塩原・高崎では、新幹線ではSuicaが使えないけれど並行する在来線はSuicaが使える。今は、きっぷを買えばどちらにも利用(もちろん特急券は別)できるけれど、ここは増税後はどうなるだろう。在来線と新幹線で運賃計算が異なるという、山陽新幹線の小倉-博多(これは運賃体系が異なる別会社経営のため)のような感じになるのだろうか。
【12月12日追記】12月12日に公式発表があり、上記とは違う考え方だった。切り上げとするのは、都心に近い電車特定区間内のみ。他はSuicaエリアであっても、エリア外と同じ四捨五入の運賃体系となる。要は、従来からの電車特定区間内の運賃を8%・切り上げ、他を8%・四捨五入にするということ。


なお、この時の共同通信の報道(魁では使わなかったようだが)では、これは使えない地域の利用者の不公平感を解消するための措置であり、今後は「増税分を正確に転嫁できるスイカが利用できる地域の拡大を急ぐ考えをあらためて表明。」したそうで、それが次の項目。


●面でなく点で拡大
11月29日、JR東日本が「Suica の一部サービスをご利用いただける駅が増えます」というリリースを出した。33駅において4月1日からSuicaで列車に乗れるようになるという。さっそく上記の「スイカが利用できる地域の拡大」が行われるわけか。
ただ、今までのような「“エリア”を広げる」ではなく「使える“駅”を増やす」のが違う。既存エリアの延長線上にある駅の一部だけをかいつまんで対象にするイメージ。途中の駅では引き続き使用できず、「面」でなく「点」での拡大ということ。従来通り、エリアをまたがっての利用は不可。

新たに対象となる駅では「使うこと」だけができ、カードの発売・払い戻しはできない。Suica定期券も発売しないとのことで、あくまでも簡易的な扱いのようだ。(チャージについてはできないとしても、コンビニでできるから問題は少なそう)

使えるようになる33駅は、既存Suicaエリア内と在来線(特急含む)で行き来する人が多そうな駅。松本など「あずさ」停車駅。新幹線駅との接続駅である一ノ関、古川。新幹線から乗り継いだ観光客が降りる、平泉、鳴子温泉、会津若松、喜多方。エリア内の大都市との移動が活発な山形、直江津、村上。といった感じ。

現段階では示されていないはずだが、この区間の運賃設定はどうなるんだろう。Suicaが使える駅と使えない駅が入り乱れた状態だから、Suicaエリア内の運賃体系にしてしまうと、逆転現象が起きておかしくなりそう。運賃はエリア外のを適用するかもしれない。
あと、山形-福島間で「つばさ」の乗車には(乗車券として)使えるだろうか。「あずさ」同様の在来線特急扱いならば利用できていいはずだけど、途中駅はSuicaが使えないし、福島駅では「つばさ」を使う時に出入りする新幹線改札口では使えない。


既存エリアを延長するというこのやり方では、秋田を対象とするのは無理だろう。仙台エリアだって新幹線を使って行くのが普通だから。本格的なエリア拡大を待つことになりそう。


●大都市近郊区間
上記、Suicaが使える駅の拡大に伴い、「大都市近郊区間」が拡大されたり、仙台周辺で新たに適用される。※新幹線、山形新幹線を利用する場合は対象外
大都市近郊区間とは、区間内相互を移動する際、実際に乗車する区間に関わらず、常に最短の距離で運賃を計算する【5日適正】もっとも安くなる運賃が適用されるエリアのこと。【5日追記】正確には、安いほうの運賃を「選択できる」ということだが、好き好んで高いきっぷを買う人は少ないし、特にICカードを利用した場合は強制的に最安運賃が適用されることになる。

例えば、山形と鳴子温泉の間を新幹線を使わずに移動する場合。
現状では、仙山線・東北線回り(仙台・小牛田経由)では2520円。奥羽線・新庄回りでは1890円。
来春以降は、どちらを通っても、あるいは福島なんかまで遠回りしても、常に新庄回りの運賃が適用される。
なお、山形や鳴子温泉が仙台Suicaエリアの端であり、新庄回りだといったんSuicaエリア外に出てしまう形になるが、仙台の大都市近郊区間からは出ないことになるし、Suicaエリアをまたがっているわけではない(どちらも仙台エリアに属する)から、Suicaを使っても問題なく適用されるはず。


この大都市近郊区間適用によって、不便になることがある。エリア周辺の旅慣れた人には痛手かもしれない。
それは大都市近郊区間内相互では、途中下車ができないこと。
「途中下車」とは、100キロ以上の乗車券(特急券等は別)において、後戻りしない限り、途中の駅でいったん改札の外に出ることが可能な制度。
例えば、今は上記の山形-仙台-鳴子温泉のきっぷを使っていれば、途中で山寺を観光して、作並で温泉に入って、仙台に一泊して、鳴子に行くことができた。これが来春以降はできなくなる。
大都市近郊区間が韮崎から松本まで拡大される東京でも、新宿-松本などで途中下車できなくなる。※秋田-鳴子温泉や仙台-松本など、近郊区間外からの乗車券では引き続き途中下車可能
【12月12日追記】上記、新宿-松本のような近郊区間末端との利用なら、1駅先の近郊区間外の駅まで(orから)購入すれば、途中下車が可能になる(運賃もほとんどのケースで変わらない)。

ICカードでは途中下車の概念がないし、今どきは旅慣れた人以外では途中下車制度を知らない人が多いのかもしれない。
そもそも途中下車制度は、大昔の列車が遅くて移動に何日もかかる時代、都度手作業で計算して乗車券を発券する手間を省くという意味もあったかもしれない。
列車が高速化し、運賃が瞬時に計算できるようなり、さらに「えきねっとトクだ値」のような特急券とセットになって大幅に割引されたきっぷをJR自身が発売するようになった現代では、途中下車なんて時代遅れのものになってしまったのだろうか。(一方で、割安なきっぷがない地域ではありがたい制度だし、JR側では自動改札機の普及で途中下車を正確に管理できるようになったはず)



増税後、具体的にどこからどこまでの運賃がいくらと分かるには、まだ時間がかかりそうで、発表を待つしかない。とにかく複雑になりそうな予感がしてしまい、面倒になりそう。
そして、長い目で見れば、消費税増税やICカード乗車券の普及が、永年続いてきたの鉄道運賃制度の考え方が変わるきっかけになってしまうのかもしれない。

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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-08-12 06:09:38
仙台空港線は、IC料金の方が高いケースもありまして、例えば、名取 - 杜せきのした ¥170(IC ¥174)、名取 - 仙台空港鉄道 ¥410(IC ¥411)なので、切符を買った方が安くなります。

いずれも、仙台駅から通しで乗った場合もJRとの合算ベースでは高くつきます(空港までいった場合はほぼトントン)。長町駅だと通しでは、単純に合算したときは辛うじて安くなります(ちなみに、長町駅以外からのJRからの通しは、杜せきのした及び仙台空港のいずれの駅でも高くなるケースが多いです)。

新千歳空港駅乗下車時のような、施設利用料上乗せの運賃にはなっていない(それをやってもJR東日本は赤字が予想されたため、結果的に仙台空港線は三セクの路線になった)にも関わらず。

岩沼方面からSuicaを利用して来る方で乗り継ぎ時間のラグがある場合は、一回名取で下車・改札を出て、名取駅で切符を買って仙台空港線はに乗った方が安くすむ状態に。

これも、仙台圏での増税の歪みとしてあげられるひとつにあげられています。

こういうのも、少しは改善してほしい。

阿武隈急行とか、IGRとか、青い森鉄道とか、同様の事態が考えられる事業者も在るので、熟考をお願いしたいです。

内陸線とか由利高原鉄道線とかフラワー長井線とか津軽鉄道線とかは、まだ先かな。
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Unknown (taic02)
2017-08-12 14:27:27
乗り入れしているからには、通しの客のことを考えて設定してはいるのでしょうが、抜け穴というか取りこぼしが出てしまいますね。
簡単に乗車できて便利ということ以外のことに、事業者も利用者も関心を持ってくれるといいのですが。

完全なローカルの3セクは…どうなるでしょうかね。

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Unknown (Unknown)
2017-08-12 15:16:03
仙台空港鉄道も阿武隈急行も、通し乗車の割引はなくて、単純にJRの運賃と仙台空港鉄道ないしは阿武隈急行の運賃の合算なんです。

仙台空港鉄道の場合は、JR乗車駅から名取の運賃+名取から空港線の降車駅の運賃を現金またはICのそれぞれの額の単純な足し算になります。このため、IC運賃の合算額の方が、現金の合算額を上回るケースもあるのです。

阿武隈急行の場合はICカードの導入はされていませんが、同様に、槻木までのJR運賃と槻木からの阿武急の運賃の単純合算になるので、直通でなければ、槻木で一旦改札を出て、JR区間をSuicaで乗車した方が安くすむケースも当然にあるのです。
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Unknown (Unknown)
2018-01-11 03:22:28
バスで、IC専用運賃があるといいんですけどね。
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