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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

東北DCのMaaS

2021-04-03 18:08:31 | 旅行記
2021年4月から9月いっぱいまで「東北デスティネーションキャンペーン(DC)」が開催中。東北6県一括で対象になるのは、1985年以来2度目らしい。
新型コロナウイルス感染症が、東北地方の一部でも拡大し、変異株が現れ、一般向けワクチン接種もまだという現状。コロナを理由として、DC関連のイベントや臨時列車の中には中止されたものもある。
感染が少ない地域内で、注意して旅行する分には問題ないと考えるが、広域なキャンペーンはそれと相反するのでは。今、実施して意味や効果がどれほどあるのかと思わずにはいられない。

さて、本DCで行われる、事業の1つに「TOHOKU MaaS」がある。それが今回の本題。
「MaaS(マース)」とは「Mobility-as-a-Service」で、さまざまな交通手段の検索、予約、決済までを、スマートフォン1つで一括して行える仕組み、みたいなものらしい。
今回は、公共交通機関のフリー乗車券、空港リムジンバス乗車券、観光施設の入場券、観光地を中心としたオンデマンドタクシー利用などができる。実施されるのは全域ではなくエリアが決まっていて、内容もエリアごとに違うので、使う前に調べたほうが無難。
でも、TOHOKU MaaS公式サイトは、パソコンからでは詳細ページ(値段など)にアクセスできず、JR東日本公式サイトには断片的な情報しかない。マスコミも報道しない。非常に分かりづらく、使ってもらいたくないのではないかと思える状態。
場合によっては、旅行客でない地元在住者でも、便利に安く使えるものもあり、もっと宣伝すればいいのに。
※JR東日本の3月16日付プレスリリース「「東北デスティネーションキャンペーン」にあわせて観光型MaaS「TOHOKU MaaS」がスタートします!(https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210316_ho02.pdf)」に、全体像は掲載されています。
【4日補足】秋田魁新報には、50日だったか99日前? から、小さい枠ながら1面にDC開始をカウントダウンするJR東日本の広告が毎日掲載されていた。しかし、その内容の周知は少ないと感じた。

使い方等。
専用アプリは不要、会員登録必要、決済はクレジットカードまたはモバイルSuica=要電話手続き、使用時は画面を提示=自動改札不可、5名分まで購入可=同一行動しないといけない、という感じ。
利用日を指定せず購入手続きだけ事前にできる。

過去のDCでは、JR東日本秋田支社管内でもJRや3セク鉄道のフリーきっぷが出ていたものだが、今回は他支社も含めて発売されない。MaaSのフリーきっぷが代わりなのだろうが、ラインナップは寂しい。
今回のMaaSのうち、JRを利用できるフリーきっぷに限れば、JR東日本のおトクなきっぷのフリーワードに「デジタルフリーパス」で検索すると、7つ表示される。


ここでは、秋田市と青森県津軽地方・弘前市のものを見てみる。※利用の際は各自、公式情報を確認願います。
秋田駅自由通路の変な位置(交番の上付近)に立看板は設置された。「専用冊子」もあるらしい
【5日追記・秋田駅にはTOHOKU MaaS全体の、ホームページとおおむね同じ内容の冊子と、「はじめてMaas」という観光先の説明もある青森・弘前、秋田・男鹿、角館の3地域別の冊子があった。】
立看板には出ていないが、秋田市内~秋田空港の秋田中央交通のリムジンバス乗車券も対応。市中心部まで片道950円で、割引はなし(市南部の安い運賃区間は設定なし)。来春になれば交通系ICカードが使えるが、現状ではこれにより多少便利になるか。

立看板3項目の真ん中は、秋田市内の文化施設共通観覧券「みるかネットくるりん周遊パス」。たまに循環バス「ぐるる」と混同する人がいる(ぐるる車内に告知が貼ってあるので)ようだが、乗り物券ではない。
既存の紙の券のMaaS化のようだ。紙の券は、500円で有効期限1年間で、9施設を1回ずつ入館できるもの。面倒で調べていないが、MaaSだと半年間有効になるのか? 入館済み施設の記録はどうするのか?【5日追記・有効期限は、利用開始日に関わらず一律9月30日。市民が時間をかけてじっくり訪れるのには使いづらい。】

立看板の下の段は、秋田市中心市街地循環バス「ぐるる」の1日フリー乗車券
これも紙券があり、同額の300円。ぐるるは小学生以下は無料なので、こども用はない。
紙版は日付部分がスクラッチカードになっていて、印刷コストがかかりそう。それがない分、多少安くしてくれても…
紙版の欠点が、発売場所が秋田駅前のバス案内所(東西とも)だけであること。車内販売せず、運行エリア西側では売っていないから、我々秋田駅西側住民が、当日急に思い立って使いたくても難しい。MaaSならばどこでも購入できる。
20分間隔(一部40分)、早朝や夜は運行しないので、ご利用は計画的に。
【30日追記】その後、ぐるるの車体側面に、MaaSフリー券の告知が貼り付けられた。


立看板上段は、MaaS独自のもの。JRに乗車できる「秋田・男鹿フリーパス(秋田・男鹿デジタルフリーパス)」。
ぐるると、秋田~追分~男鹿のJRが2日間フリーで、おとな1600円、こども500円。
こどもはぐるるが無料なわけだから、500円全額がJR分。とするとおとな用のJR分は1000円か? +ぐるる1日券×2日分=600円、計1600円で計算が合う。
ぐるるには乗らない人もいるだろうから1600円全体で考えると、秋田-男鹿の乗車券は片道770円だから、1往復だけでは元が取れない。この沿線には、降りて観光できるような場所もさほどないから、そういう使い方もしづらい。
でも、2日連続で、例えば秋田と上二田以遠を行き来するのなら、損しないし、場合によっては回数券・1か月通勤定期券などよりも得になるかも。

これ以外で、秋田で鉄道に乗車できるものはなし。
デマンドタクシーが運行される角館周辺とか、3セク鉄道用もあれば良かったのでは。
【3日追記】秋田~仙台の高速バスにも、追って対応するらしい。
【5日追記】冊子「はじめてMaaS角館」の表紙には、「角館オンデマンド交通」用の車両のイラストが描かれている。緑ナンバーのワゴン車と、羽後交通一般路線車塗装の日野ポンチョ。場合によっては300円でポンチョを貸し切り同然で利用できるということなんだろうか。ちょっと楽しそう。



津軽。
まず角館同様、弘前でも「弘前オンデマンド交通」として、乗降地点限定の予約式タクシーが運行される。
弘前市内47か所が乗降ポイント(乗降地点)で、その2点間を1人1回300円で乗車できる(角館も同額だが、宮城秋保など土地によっては500円)。
郊外の相馬や岩木などは含まれないものの、けっこうな距離、直通バスがない2点間の移動が、好きな時間に300円なら、安い。乗降地点が指定されるとはいえ、市民の日常の買い物や通院にも使えるかも。
なお、昨年末の陸奥新報の報道では、住民の利用も想定し、電話予約もできるようなことが書いてあったが、実際は不明。

乗降地点は、観光施設のほか飲食店が目立つ。レストラン山崎や三忠食堂はもちろん、聞き慣れない店、そして懐かしのケララもある(弘前大学にはここが最寄りか)。
鉄道駅は、弘前、弘南鉄道大鰐線・中央弘前、弘南線・弘前東高前の3駅が乗降地点。弘高下や弘前学院大前(大学の宣教師館は含む=ここも弘大最寄りになる)は含まれないのに、弘前東高前が含まれるのがおもしろい。
イオンタウン弘前樋の口もあるが、あの辺って観光施設は… 買い物用か? だったら安原のマックスバリュとか、アルカディアのいとくなどでも乗降できればいいかも。


青森空港リムジンバスや十和田湖周辺のバスのフリー券もある。
鉄道が対象なのは、紙版なしのオリジナルで2種。「青森・弘前フリーパス(青森・弘前デジタルフリーパス)」の「ベーシック」と「セミワイド」。2日間有効。
どちらも、JR東日本のおトクなきっぷサイトによれば、普通列車指定席利用時は、乗車券として有効(リゾートしらかみなどは指定券を買い足せば利用可)だが、特急列車の自由席では乗車券としても使えないらしい。

ベーシックは、青森~弘前のJR奥羽本線と、弘前市内の弘南バスの土手町循環100円、城東環状100円、ためのぶ号(ねぷた村、りんご公園方面※)が対象。おとな1250円、こども620円。
※ためのぶ号は区間によっては運賃が200円になる。また100円区間があっても、さくら野~駅城東口~アルカディア~安原の路線は対象外。

セミワイドは、ベーシックに加えて、JRが弘前~大鰐温泉、バスは弘前市内の一般路線のうち「弘前~嶽温泉」「弘前~西目屋村役場前」、青森市の「ねぶたん号」も。
おとな1820円、こども910円。


JRの乗車券は青森~弘前が680円、青森~大鰐温泉860円。弘前市内100円バス共通1日乗車券(ためのぶ号含む3路線対象)が500円。
ベーシックならJR往復で元が取れる。秋田・男鹿同様、2日連続で往復する場合は検討の価値あり。
セミワイドも、青森・新青森から来て、弘前公園と大鰐へ行って、青森へ戻る程度で、元が取れる。ただし、弘前~大鰐温泉の列車本数は少なくて利用しづらい。弘南鉄道(大鰐線)も乗車できればいいのに。

となると、やっぱり「津軽フリーパス」。もう発売開始16年になるのか…
2日間2100円で、JRは奥羽本線・碇ケ関まで、さらに五能線・五所川原まで(リゾしら指定、特急券との併用可否は同じ)、バスは弘前市周辺の一般路線ほぼ全路線と黒石方面や五所川原市内も、さらに津軽鉄道の一部と弘南鉄道全線も乗車可能。
よほど範囲を絞った行動でなければ、津軽フリーパスを買ったほうがいい場合が多くなろう。というか津軽フリーパスをMaaS化すればいいのに。
セミワイドがあるのに「ワイド」がないのもヘンだけど、津軽フリーパスこそワイドだ!
【2023年3月17日追記】その後、実際に津軽フリーパスがMaaS化されることになった。
紙のきっぷは2023年3月30日発売・利用開始分で終了し、4月1日から「TOHOKU MaaS」による電子チケットに。価格は2100円→2460円と値上げ。(以上追記)


バラバラの情報を集めて行程を組み上げていくのも楽しいものではあるが、それが好きな者でもまどろっこしく思えたり、現地に行くまで、もしくは行ってもなお分からずじまいだったりすることもある。でもこれからは、こういう旅行のしかたが普通になっていくのだろうか。初歩的なこととして、スマホの充電残量は確保しておかないといけませんね。

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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2021-04-03 18:55:25
断片的にしか見ていないのであれですが、わざわざ会員登録して使うようなものが少なすぎる気がします。

準備不足なのか予算が出なかったのかは定かでないですが、既存のもので対応できそうな、秋田近郊に関してはそんな気がしました。

あとは、コロナなどで一時運休もしくは休館となっていても、その補償はしませんという文字が目立ちます。その期間の販売はできないなどの記述が分かりにくいのが気になりました。
返信する
MaaSでないと (taic02)
2021-04-03 22:16:52
どうしてもMaaSでないとというのは少ないです。3万人登録、交通利用3万件といった目標らしいですが…
仙台~秋田のような高速バスにも、追って対応する予定とあるものの、開始時にきちんと告知してくれるのか、すでにネット予約がある中どれほど利用があるのか。
導入直後かつ、コロナの特殊状況下と言えども、心もとない点もあります。
返信する
Unknown (Unknown)
2021-04-04 20:02:58
高速バス

予約制のバスの場合、画面提示のチケットレス決済もすでにあるので、あえてこの登録をする必要が…という感じがやっぱり否めない。運賃が大きく変わるのであれば話は変わってきます。

予約制路線でない場合は、バス側の設備次第だと思いますが、特段のインセンティブがないと、やはり積極的な利用の動機づけにつながらない気がします。

残念な高速バス路線として、仙台空港-山形の路線が有名ですが(回数券設定がない、運行会社によってIC乗車カードの利用可否が異なる、等)、これに近い路線を今回のでカバーして、どの便に乗っても差別感がなく、多少のお得が感じられる、のようにしたほうがよさそうな気がしました。
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寄せ集め (taic02)
2021-04-05 23:50:01
既存のきっぷ類を寄せ集めて、そのままMaaSとしてしまった印象です。
それに留まらない、ここならではの特長がやはりほしいですね。
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Unknown (Unknown)
2021-04-12 12:03:56
試験的に、現在はない高速バス路線を走らせてみてもいいのではないでしょうか。

秋田 - 新青森間とか、秋田 - 新潟間とか、横手 - 山形 - 新潟間とか、新幹線では行きにくそうな高速路線を試行的に運転して流れを作るのもありではないでしょうか。

県内路線でも、道の駅美郷経由があってもいいでしょうし、秋田 - 能代 − 大館間の路線があってもいいかと。
高速網が数年前より良くなっているので、流れはいいのではないかと思います。

あとは、経由地の設置次第の部分もありますが、DCを機会に新しいものを、という感覚がかけているのか、既存のものの寄せ集め見たくなっているのは残念です。

旅行会社さんも鉄道事業者及びバス運行者も、大型キャンペーンをやるからには、興味を引く新しい手段をもっと取り入れていただけるとありがたいかな、と思います。

急行本荘・秋田線についても、ルートの再検討が必要そうです。
市内区間の代替えは、中央交通や中央トランスポートでカバーできると思うので。
返信する
寄せ集め (taic02)
2021-04-13 00:02:00
コロナ流行中の制約もあるかもしれませんが、寄せ集めの印象は否めません。
ホームページなどではMaaSで高速バスに乗って、鉄道では行かれない先へ、みたいな宣伝をしています。しかし、現状の東北の高速バスのほとんどは新幹線の低価格対抗手段であるわけで、無理があります。
対仙台、対県庁所在地でないような移動手段としてバスの威力を発揮できるといいです。
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