Sketch of the Day

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ピアノ瞑想

2009-02-18 | Media
ここ1ヶ月ほどピアノを集中的に聴いている。



アルゲリッチとラビノヴィチによるラフマニノフは、組曲第1番と交響的舞曲が個人的ベスト。アルゲリッチの手のつけられない奔放さのようなものが幻想的で抒情的なラフマニノフの旋律に乗せて音化されていくさまは美しさの限りだ。

 

シューベルトのピアノソナタも絶品。シューベルトは小曲の人だという評論家氏の意見があるようだが、僕のみたところ長大なピアノソナタもシューベルトそのものでありじつに魅力的である。これについては村上春樹氏が著書『意味がなければスイングはない』のなかでうまいことをいっておられる。少々長いが引こう。

「・・・このニ長調のソナタはたしかに、一般的な意味合いでの名曲ではない。構築は甘いし、全体の意味が見えにくいし、とりとめなく長すぎる。しかしそこには、そのような瑕疵を補ってあまりある、奥深い精神の素直なほとばしりがある。そのほとばしりが、作者にもうまく統御できないまま、パイプの漏水のようにあちこちで勝手に噴出し、ソナタというシステムの統合性を崩してしまっているわけだ。しかし逆説的に言えば、ニ長調のソナタはまさにそのような身も世もない崩れ方によって、世界の「裏を叩きまくる」ような、独自の普遍性を獲得しているような気がする。結局のところ、この作品には、僕がシューベルトのピアノ・ソナタに惹きつけられる理由が、もっとも純粋なかたちで凝縮されているーあるいはより正確に表現するなら拡散しているということになるのだろうかーような気がするのだ。」

すばらしい。こんな文章、書いてみたいものである、さすが文学者だ。音楽学者や音楽評論家の文章なんて、いくら読んでも「その音楽を聴いてみたい」という気にさせられることはまれだが、村上氏のこんな文章を読まされるともう聴かずにはいられない。すばらしい。アファナシエフのシューベルト(下記)は、村上氏お勧めの音盤ではないのだが、他のピアニストに輪をかけて長い演奏が、個人的には気に入っている。抑制のきいた歌わせ方もまたよろしい(凡百のピアニストであればおおいに歌わせまくるところ)。内田さんのシューベルトも悪くないと思うが、まだ十分に聴きこめていない。



グールドのバッハについては改めて述べるまでもないけれど、この音盤ではパルティータ第2番とフランス組曲第2番が個人的ベスト。バッハは夜1人で静かに聴くに限る。BGMやカーステレオ等で聴いては絶対にいけない(と思う)。一音も聞き漏らさずに、砂漠で水を飲むかのように聴かなくてはダメだ。深い瞑想の世界に入っていく。グールドの鼻歌とともに。。。

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