壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

残 暑

2011年09月13日 00時15分57秒 | Weblog
          残 暑
        夏かけて名月暑き涼みかな     芭 蕉

 即興風な詠みぶりであるが、閉関のこころの余波といったものが感じられる。この前後の書簡中に見える
    「当年めきと草臥れ増さり候」(十月九日付許六宛)、

    「夏中甚暑に痛み候ひて、頃日まで諸縁を絶ち、初秋より閉関、病閑保養にかか
     づらひ、筆をも執らず候故、心外に打ち過ぎ申し候」(十一月八日付荊口宛)、

    「当夏暑気つよく、諸縁音信を断ち、初秋より閉関、……夏中は筆をもとらず、
     書にむかはず、昼も打ち捨て寝暮したるばかりに御座候」(十一月八日付曲翠宛)

などの、心身の疲労を伝える文字は、この句の背景を理解する上で参考になる。元禄六年(1693)八月十五日の作。

 「夏かけて」は、夏を心にかけて、夏を思わせての意。ただし、夏を兼ねてと解する説もある。あるいはまた、夏をふくめての意で、夏このかたずっと今にまで引き続いてほどの意か。

 季語は「名月」で秋。前書の「残暑」も秋の季語。「暑さ」・「涼み」は夏。

    「今年の仲秋名月は、残暑なお去りやらず、まるで夏を思わせるような
     暑さである。この月見の座も、一方で納涼の趣があることだ」


      名月や絵志野の皿に栗おこは     季 己