壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

礫(つぶて)

2011年07月25日 00時00分11秒 | Weblog
        いづこより礫うちけむ夏木立     蕪 村

 例の、静中に動を点じて静を強調したものである。「礫(つぶて)」に迫害の意を見出す必要はない。子どものいたずらと見てもよい。ただ、突然、礫の音がして、それを打った者の姿が見えず、その後、物音一切が消え去っている、気味悪いほどの静寂感が必要なのである。
 現に蕪村には、
        動く葉もなくておそろし夏木立
 の句がある。この「おそろし」は、極度の静寂に対する「おそろし」の感である。

 季語は「夏木立」(葉の茂った夏の木立)で夏。

    「枝葉がうっそうと茂り、たくさんの幹が白じろと立ち並んでいる中を、
     物思いにふけりながら放心状態で歩いていると、突然、葉を打ち幹に
     はじける強い物音がした。礫である。はっと、足を止めて辺りを見回し
     たが、物影一つなく、礫がどこから打たれたかさえさだかでない。木の
     葉一枚揺れることなく、夏木立は森閑と静まりかえっている」


      かなしみは砂に吸はせて浜おもと     季 己