壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

2011年07月10日 00時00分41秒 | Weblog
        雷に小家は焼かれて瓜の花     蕪 村

 「小家」は、
        瓜小家の月にやおはす隠君子     蕪 村
 の句もあるように、「こや」と読む。
 掲句の初案らしい「雷に小屋は焼かれて瓜の番」が残っているので、この句の表面には出ていないが、小家の主は命だけは助かっていたものと思う。今は、しかたなしに畝に腰を下ろして、膝を抱えた格好で、瓜の番をしているのであろう。「小家の主」を隠君子と興じているように、軽い暢気なユーモアが基調をなしている。
 以前、「地震」を素材とした句があったが、それまで人の顧みなかった落雷を採り上げたところに、蕪村の積極性がある。
 この句も、「静」の中に「動」を点じて、結局、「静」を強調しているのである。

 季語は「瓜の花」で夏。現在は、「雷」も夏の季語であるが、当時は、季題として認められていなかったかもしれない。いずれにしても、一句に季語が二つある場合、わたし自身は、下五にどっかと据えたほうを季語と考えている。

    「小さな番小屋であるが、このあたりには、これ以上の高いものがなかった
     ためか、落雷して完全に焼けてしまった。小屋がなくなり、なおさら平坦
     になった瓜畑には、天災のあったことも知らぬげに、暢気なようすで瓜の
     花が咲きつづけている」


      病葉の力つきずよ今朝もまだ     季 己