壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

涼しさ

2011年07月17日 00時00分14秒 | Weblog
          雪芝亭
        涼しさや直ぐに野松の枝の形     芭 蕉

 野松の素直に伸びた形の涼しさをほめ、間接的に雪芝(せつし)の家をほめた挨拶の句である。
 松の形(なり)がそのまま、主人の嫌みのない人柄に通ずるというわけである。

 「雪芝」は、伊賀上野の人で酒造業。土芳には父方の従弟にあたり、この句の縁で野松庵と号した。
 「直(す)ぐに」は、野松の枝がまっすぐに伸びているさま。「ただちに」の意とする解もある。

 季語は「涼しさ」で夏。挨拶の句であるから、ほめる心も含まれた使い方である。

    「このお宅の庭前には、折しも松が植えられたばかりだが、枝ぶりも
     自然のままに、まっすぐに伸びた野松のさまで、涼しさが湧いてくる
     ように感じられる」


      七月や雨後の女のほつれ髪     季 己