壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

日の道

2011年07月01日 22時25分56秒 | Weblog
        日の道や葵傾く五月雨     芭 蕉

 「日の道」は、太陽の通る道。黄道。
 「葵傾く」は、葵が太陽の移りゆく方向に傾く意で、葵はその性質をもつものとして詠んでいる。この葵は、五月雨の頃であるから、向日葵(ひまわり)ではなく立葵(たちあおい)であろう。葵の類は、すべて向日性があって、太陽の回りゆく方を追う。

 「日の道」というものをするどく感じとっていて、現代のように自然観察が細かくなった上でのものでないだけに驚かされる。雨中の日の道をつかんだところ、葵のいのちのかなしさが感じられる。

 季語は「五月雨(さつきあめ)」で夏。「葵」も夏季。葵というものの性格に即して、「五月雨」をも生かした発想である。

    「五月雨がしとしとと降りつづく中、葵が片方に傾いている。おそらく
     あの傾いた方に、雨にかくされた日の通り道があるのであろう」


      宮司より届く神饌 山開き     季 己