壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

真意

2009年05月31日 19時48分36秒 | Weblog
 テレビを見ていて腹が立ってきた。大腸ガンについてのQ&Aの番組で……
 「大腸ガン検査の年齢になったが、内視鏡検査が恥ずかしい。それでも検査をした方がよいか」という、女性からの質問である。
 これに対しての専門の大学教授の答えが、「恥ずかしいだろうが、内視鏡検査を受けた方がよい」というものだった。
 たしかに、質問の答えにはなっている。だが、これで質問の女性は納得、いや満足するだろうか。
 どうして、内視鏡検査の具体的方法を説明してあげないのだろうか。説明してあげれば、決して恥ずかしがるようなことではないと、わかるはずである。

 変人の受けた内視鏡検査は次のようなものだ。
 検査を受ける際は、手術着に着替える必要がある。手術着は、半袖のパジャマの上下と思えばよい。ただし、尻の部分が、男性用パジャマのように数センチあくようになっている。もちろん、更衣室で着替えるので恥ずかしくない。
 着替えた後、手術台にあがり、鎮静剤を打たれ、身体を「くの字」にして横になるだけである。うつらうつらしているうちに、15分ほどで検査は終了。
 休養室の寝台で2時間ほど休み、目が覚めたら検査結果の説明を受けて、すぐに帰宅できる。もちろん、帰宅後は何を食べてもオーケー。
 このように話してあげれば、女性にとっても恥ずかしくはなく、検査が受けやすいと思うのだが、いかかであろうか。
 質問者の真意をくんで答えることの大切さを、再認識させられた。

 腹立ちまぎれに家を出て、銀座に向かった。
 「ギャルリーためなが」に掛けられた大きな垂れ幕を見てムカッ。「TCHINAI」と書いてある。こんな「つづり」はない。これでは「っちない」ではないか。
 こんなことを思いながら、場違いのような立派な画廊「ギャルリーためなが」に入る。パソコンを前に座っている女性二人が、マニュアル通りの「いらっしゃいませ」の声。と、すぐに二人でおしゃべり開始。きっと中断された話の続きをしているのだろう。何か悪いことをしたような気になった。

 これが、あの智内兄助? ウソだろう。いつから智内兄助は、媚を売るようになったのだ。昔の方がよかった、あの時の方がよかった……

 「智内先生は、女性像を描かずに、女性のエロチックさを描き切っています。これが先生のすごいところです」
 「なるほどねえ。あの屋久杉はいいですね」
 「いいでしょう。琳派のように華やかで。実は屋久杉でなく桜の木なのですが、女性のヌードよりエロチックでしょう。いかがですか」
 「部屋に飾るには大きすぎるよ」
 「では、こちらのは如何でしょう。これなら和室にも洋間にもぴったりだと思います」
 「友達に金を持っているのがたくさんいるから、声を掛けておくよ」
 「ありがとうございます。なにしろ不景気で絵が売れないのです。よろしくお願いします」
 鑑賞中に聞こえてきた、女性スタッフといかにも金持ちそうな客との会話である。

 結局、この紳士が帰った後も、この女性はおろか、男性スタッフ2名からも全く声を掛けられることはなかった。それも当然、ホームレス顔負けの服装で、この立派な画廊に入ったのだから。
 おかげで、智内兄助の変貌の真意を探るには好都合だった。この変貌は、智内兄助の本意ではなく、画廊からの指示で描かされているのだ。昔からの智内兄助ファンとしては、せめて、そう思いたい。
 

      変貌の画家の個展や走り梅雨     季 己


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