壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

夏来る

2009年05月02日 20時26分42秒 | Weblog
        おそるべき君等の乳房夏来る     三 鬼

 立春・立夏・立秋・立冬の四つを、二十四節気の中の四立点というが、立夏は、太陽暦の五月五日、ときに六日ごろに当る。
 今年は五日で、暦のうえでは、この日より夏になるが、北国では桜が満開のころであり、まだ春の気配が残っている。晩霜が降りたりと天候は定まらないが、立夏ときくだけで日の光も強く感じられる。
 立夏の名句といえば、上記の西東三鬼の句がピカ一であろう。
 また、岡本眸先生の
        遠くを見るたのしさ夏の来りけり     眸
 も、変人にとってはなつかしく、忘れられない句となっている。

        今朝見れば 霞の衣 脱ぎ替へて
          山も一重に 緑なりけり  (賀茂重保)

 という歌は、いささか気が早すぎるか。
 野も山も緑一色に包まれて、萌え立つような明るい自然、一年の中でも、最も生きがいを感じるのが、この季節と言えるかもしれない。

        さらし干す夏来にけらし不尽の雪     宗 因

 西山宗因のこの句は、百人一首でおなじみの、

        春過ぎて 夏来るらし 白妙の
          衣ほしたり 天の香具山  (『萬葉集』巻一・持統天皇)

 をもじったものに過ぎない。ちなみに、「夏来るらし」は、「夏来にけらし」と読む説がある。
 宗因の句は正に、俳句ではなくて、滑稽な俳諧そのものである。


      神牛の腹ひんやりと夏来る     季 己