壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

盂蘭盆

2008年08月12日 23時42分25秒 | Weblog
 陰暦7月13日の夕刻から15日(または16日)までの魂祭を「盂蘭盆」、略して「盆」という。今は盆休みというと、8月13日からというところが多いのではなかろうか。
 正月と並んで一年の前後を分かつ大事な節目にあたり、家々では、座敷や庭先などに盆棚を飾って祖霊を迎える。盆棚は、いまは殆んど仏壇を利用している。
 盆のあいだ、仏前に素麺・小豆餅・枝豆・瓜・茄子などを供えて霊に供養する。
 僧が檀家をまわって盆棚に読経するのを棚経という。
 盆棚には初物の野菜を供えるのがならわしであるが、鬼灯・地梨・はまなすなどの赤い実を供えるところもあり、その土地その土地で少しずつ違っている。
 前年の盆以後に死者を出した家では、新盆・初盆・あら盆・新精霊などという。

 13日の夕方、門前で苧殻を焚いて祖霊を家に迎えるが、これを「迎へ火」という。ほろほろと燃える赤い炎は、盆の行事にふさわしい。うす紫の煙が“むかし”をかき立てて、なつかしい。
 そうして16日の夜、苧殻火がまた焚かれる。これが「送り火」。祖霊は懐かしい家を去って、墓などにもどってゆく。わびしい炎である。
 こうして、盆もおわる。

 また、盆には墓に詣でて香華を手向けるのがふつうである。
 けれども変人は、盆には墓参りをしない。
 家の宗派が浄土真宗なので、「霊」という観念がない。したがって「迎へ火」も「送り火」も焚かない。よそ様のを見せていただくだけだ。
 なにより、霊があるとすると、盆の期間中は、祖霊は家に戻って居て、墓にはいないはずである。
 ご先祖様のいない墓に香華を手向けるなんて、こんなハカナイ話はない。


      飛行機の墜ちし日と思ふ蓮の花     季 己