壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

直木賞候補

2008年01月07日 21時10分15秒 | Weblog
 第138回芥川賞・直木賞の候補作が発表された。
 今回は、“中国人初の芥川賞候補”ということで、楊逸(ヤンイー)さんの「ワンちゃん」が、話題になっている。
 けれども、変人は変人らしく、あまり話題になっていない?直木賞を、話題にしたい。

 今回の直木賞候補作品は、次の通り。
 井上荒野「ベーコン」(集英社)、黒川博行「悪果」(角川書店)、古処誠二「敵影」(新潮社)、桜庭一樹「私の男」(文芸春秋)、佐々木譲「警官の血」(新潮社)、馳星周「約束の地で」(集英社)。

 伊坂幸太郎の名がないのを見て、「またか…」と思う反面、少しホッとした。これで、もっともっと伊坂作品が読めるぞ、と思って。
 幸太郎さんは、生真面目な好青年なので、「直木賞をもらったら、どうしよう。プレッシャーで書けなくなってしまう」と、本気で悩んでいた、候補になるたびに。
 変人の私は、「そんなに悩むのなら、賞を辞退すれば…」、と単純に思ってしまう。でも辞退したら、ものすごく顰蹙を買うだろうな、「この若僧めが」と。

 幸太郎さんは、一番を好まない人だ。常に控えめで、ボクは、4~5番目ぐらいがちょうどいい、という人である。
 「ボクは、そんなに偉くはない」と言って、一昨年までは、大型書店で開かれるサイン会にも出なかった。今は、何か吹っ切れたのか、人間が出来てきたのか、サイン会には出るようになった。ファンサービスとして、これは必要であろう。

 ネットに、「直木賞 大衆選考会」というのがあり、“誰が直木賞を受賞すると思いますか?”といって、受賞者の予想を募集している。
 今回も、伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を推す人が多いが、幸か不幸か、今日の発表には、幸太郎さんの名前がない。
 もう、5回もノミネートされたのだから、直木賞は卒業しよう。今後は何ものにもとらわれず、書いて欲しい。「ゴールデンスランバー」が、直木賞を受賞できる、いや、それを超越した作品であることの証明である。
 賞の呪縛から解き放たれ、自分の書きたいものを、自分の書きたいように書けたのが、「ゴールデンスランバー」ではないか。私には、そう思えてならない。

 名誉などというものは、いくら数多く積み重ねても、崩れてしまうもの。
 幸太郎さんは、もう十分にかっこいいのだから、ダイヤモンドになろうとせず、五郎太石でいいから、大地にしっかり根を下ろした作家になって欲しい。


     五郎太にはごろたの春の光あり    季 己