壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

源氏物語千年紀

2008年01月09日 21時20分57秒 | Weblog
 「源氏物語」は、“若菜”の帖が最も面白い。折口信夫氏は、「源氏は若菜から読めばいい」とまで言われている。

 「(若菜の帖は)上、下合わせて、一冊の本になる分量だけでも、紫式部がこの帖に力をそそいだ情熱が感じられる。筆つきにも作者自身の筆の弾み、心の弾みが感じられる」と、瀬戸内寂聴氏は、寂聴訳・「源氏物語」の解説に書いておられる。

 さて、ことし平成二十年、2008年は、源氏物語千年紀にあたる。ということで、京都をはじめ、さまざまな部署で記念事業、行事が計画されている。
 今年が、千年紀の節目にあたるということは、何に由来しているのだろうか。
 「紫式部日記」の寛弘五年(1008年)十一月一日の条(くだり)に、次のような記事が見える。

 「あなかしこ。このわたりに、わかむらさきやさぶらふ」とうかがひたまふ。
 源氏にかかるべき人もみえたまはぬに、かの上はまいていかでものしたまはむ
 と、聞きゐたり。

 藤原公任が、「源氏物語」の若紫の帖で登場した紫の上を若紫と呼び、紫式部を若紫になぞらえて、語りかけようとしたところである。
 この公任が紫式部に呼びかけたことばが根拠で、角田文衛先生などがおっしゃって、それが、だんだん広がっていったという。
 一昨年の十一月一日に、秋山虔、梅原猛、瀬戸内寂聴、千玄室、ドナルド・キーン、芳賀徹、村井康彦、冷泉貴実子などの各氏が、呼びかけ人になって、源氏物語千年紀をやりましょう、ということになった。

 今年、五月から六月にかけては「源氏物語大展」という、源氏物語の大きな展覧会を、源氏物語絵巻類の展示も含めて、京都文化博物館で進めている。
 二月に立川に移転する国文学研究資料館では、十月に「源氏物語特別展」という、重要文化財などを含めた源氏物語の資料を、展示する予定。

 源氏物語が出来てから後、文学作品に限っていうと、「更級日記」の作者・菅原孝標女が、「源氏物語」が出来てから2~30年もたたないうちに、熱烈な読者であったということが、知られる。
 おもしろいことに、孝標女が生まれた年がはっきりしていて、これが寛弘五年、つまり、1008年。まさに今年は、孝標女生誕千年ということになる。
 「源氏物語千年紀」は知られていても、「孝標女生誕千年」は知られていない。


      寒四郎 若菜上より 読み始む    季 己

 ※ 寒に入り四日目を寒四郎、九日目を寒九(かんく)と言う。