壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

寒復習(かんざらい)

2008年01月26日 23時45分04秒 | Weblog
 第4土曜日は、篠笛の稽古日。
 朝、練習をしてみたのだが、寒すぎるせいか、音にならない。
 わたしの部屋には、暖冷房の設備はない。ストーブも置かない。 

 部屋が暖まってきた、昼過ぎから再び練習を始める。
 篠笛は、ほんとうにデリケートで、厄介な楽器だ。微妙な差で、音が出たり出なかったり。
 稽古を積んで、自分自身で会得するしかないだろう。
 そう考えて、今日は音を出すことに集中する。美しい音を探りながら。
 30分以上たったころ、管尻から水滴がこぼれ落ちた。かまわず練習を続ける。
 畳が濡れている。ちょうど管尻の下のところだ。あわてて手ぬぐいで拭き、そのままそこへ手ぬぐいを置いておく。
 こんなことは、寒くなるまで考えられなかった。
 歌口から入ったあたたかい息が、寒気のために冷やされ、笛の中で水滴になるのであろう。ということは、息はかなり笛の中に入っているはず。

 気づいたら3時半。急いでカルチャーセンターに行く。
 やはり、顔と肩に力が入りすぎて、音が出ない。
 「うまくやってやろう」という、いやしい心根があるからに違いない。赤ん坊のような無邪気な心になれれば、緊張感がなくなることは、頭ではわかっているのだが……。
 それでも一つだけ、高音の“ラ”に、いい音が出せたのは収穫だった。
 こだわらず、とらわれず、地道に一歩一歩、進むしかないだろう。

 武道を習っている者が、寒の30日間、早朝や夜間に道場などで、稽古に励むことを寒稽古という。厳しい寒さの中でこそ、心・技・体が鍛えられるということであろう。
 篠笛などの芸事の場合は、“寒復習(かんざらい)”という。


      管尻の下に手ぬぐひ寒復習     季 己