壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

雪明り

2008年01月27日 23時33分56秒 | Weblog
 10メートルの氷柱をテレビで観た。すごい!の一言。
 雪国では、屋根や軒に積もった雪が、少し融け始めてきたり、雪下ろしをした残りが、一塊となっていたりすると、軒の方にしずり出てくる。
 そのうちにまた、強く凍てつく夜が続くと、雪の融けた雫がつぎつぎと凍っていって、長い氷柱となって軒下などに下がってくる。
 昼間は少し融け、夜に凍てつくと、氷柱はますます長くなる。
 一塊の雪から、十数本の氷柱が伸びるのは珍しくない。けれども、長さ10メートルの氷柱は珍しい。(影の声:珍しいから、テレビで放映するのだ)

 それにしても、この一週間は寒かった。
 ニュースは、雪、雪、雪、の雪景色のオンパレード。

 雪の句で有名なのは、
    是がまあつひの栖か雪五尺      一  茶
    いくたびも雪の深さを尋ねけり    正岡子規
    降る雪や明治は遠くなりにけり    中村草田男
 などであろうが、わたしは
    雪明り一切経を蔵したる       高野素十
 が、最も好きである。
 雪明り、というのは月もない夜、地に降り敷いた雪が唯一の明りであることをいう。
 一面雪に覆われた大寺院の境内が、ぼんやりと雪明りをただよわせ、その清澄な明りが、全宇宙の真理を説いた一切経を蔵している、という句意である。
 寺とか境内とか経蔵とか、それら決まりきったものを一切省略して、雪明りと一切経とだけを示している。これ以上省略のしようがないほど、省略の利いた句である。
 「俳句は省略」の、よい見本であり、素十の透徹した宇宙観、宗教観が感じられる。


      雪だるまこころおきなく月恋へり     季 己