普天間返還 臆せず国外移設の検討を
米軍普天間飛行場の返還問題で、日本政府が目を背けてきた国外移設を模索、歓迎する動きが顕在化している。沖縄の負担軽減のあるべき姿を見いだす上で、政府は臆(おく)することなく国外移設を検討すべきである。本格検討さえせずに県内・国内移設に収れんさせることがあってはならない。
超党派でつくる沖縄基地問題の国会議員懇談会会長の川内博文民主党衆院議員らが官房長官や外務副大臣に対し、在沖海兵隊の本拠地を米領グアムやテニアンに移すことで米側と合意する案を正式に提案した。
間髪入れず、グアム、テニアンへの移転を主張している社民党の照屋寛徳国対委員長らも本格検討するよう首相官邸に求めた。
この提案には伏線がある。サイパン、テニアンを訪問した照屋議員や高嶺善伸県議会議長らに対し、テニアン市のデラクルス市長は「恒久的移設を望む。海兵隊員4千人と家族を受け入れる」と言明した。北マリアナ連邦上下院議会は、在沖海兵隊のテニアン移駐支持を近く決議する。受け入れ歓迎の度合いを強めた新たな動きだ。
テニアン島内には民間の滑走路とは別に滑走路が4本あるほか、島の3分の2が米軍租借地となっているが活用されていない。
聞き古された地政学上の位置付けや海兵隊の実態に乏しい抑止力論を挙げて、国外移設に否定的な姿勢を崩さない米側の前に、政府は県内や徳之島などの国内に移設先を求めるその場しのぎの妥協に傾いている。「対等な日米関係」を目指す主体性がうかがえない。
国外移設論は、沖縄への海兵隊の駐留根拠の是非と相まって、沖縄の過重な負担の上に成り立つ日米の安全保障のいびつさをただす好機となるはずだ。米軍の兵員や武器の輸送能力が格段に進歩した今、政治が前面に出て日本の意思として提起すれば、新たな展開を生む可能性を帯びている。
伊波洋一宜野湾市長は、在沖海兵隊のグアム移転に関する米軍の環境影響評価書を基に、沖縄の海兵隊はグアムに統合され、普天間代替基地は不要だと強調している。だが、日本政府はまともな調査もせずにあいまいな返答を繰り返している。
「歓迎される所に持っていかず、歓迎しない所に押し付けるのか」(高嶺議長)という訴えは県民の思いを代弁していよう。政府は国外移設の道筋を真摯(しんし)に探るべきだ。