今や、こんなまっとうな意見を書く新聞は本当に少ない…
東京都立高校の教職員らが都と都教育委員会に対し、入学式・卒業式における日の丸への起立、君が代斉唱の義務がないことの確認や損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は一審判決を取り消し、請求を退けた。
東京地裁が下した2006年9月の一審判決は、国旗国歌の強制は違憲として請求を認め、斉唱しないことなどを理由とした処分を禁じた。ところが控訴審は、日の丸への起立、君が代斉唱の強制を合憲とし、教職員側が全面敗訴した。
「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と憲法19条は規定している。国家権力が、個人の思想信条に反して一定の行動を国民に強いることは本来許されるべきではない。高裁判決は、少数者の思想・良心の自由を侵す行為を是認するに等しく、疑念を禁じ得ない。
君が代のピアノ伴奏を拒否した音楽教諭をめぐる訴訟で「伴奏の職務命令は思想・良心の自由を侵害しない」とした07年の最高裁判決が背景にある。以後類似の裁判で教職員側の敗訴が相次いでいる。
国旗国歌の強制は、大戦以前の皇国思想、軍国主義思想を想起させるとして不快に思う人たちの心を踏みにじるものだ。教職員側は「教育に対する不当な介入で教育基本法にも反する」と訴え「教員だけの問題ではない。子どもを狙った思想統制」と指摘していた。
06年の東京地裁判決は「信仰に準じた世界観や主義、主張から、国旗掲揚や国歌斉唱に反対する人がいるのも現実。懲戒処分をしてまで起立させ斉唱させるのは少数者の思想・良心の自由を侵害し、行き過ぎた措置」と結論付けた。
これに対し今回の判決は「一律に起立、斉唱するよう求めた都教育長通達には合理性があり、思想良心の自由を定めた憲法に反せず、教育基本法が禁じる『不当な支配』にも当たらない」と、一審判決を真っ向から否定している。
国旗国歌法が1999年に成立した際、当時の野中広務官房長官は「法律ができたからといって強要する立場に立つものではない」と国会答弁していた。
権力側に命令され、起立を強いられたり、歌いたくもない歌を斉唱させられたりするのは一部の人にとっては苦役にも等しいだろう。敬意は自然のうちに育むものだ。強制によっては生まれない。
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