2014年5月30日
政府は「原子力規制委員会」の国会同意人事案を撤回せよ(談話)
社会民主党
幹事長 又市征治
1.政府は去る5月27日、9月に任期満了を迎える島崎邦彦委員長代理、大島賢三委員の両氏に代わり、田中知東大大学院教授と石渡明東北大学教授を新たに「原子力規制委員会」の委員とする国会同意人事案を、国会に提示した。これまで原発の地震対策で厳格な姿勢を貫いてきた島崎氏を外し、元日本原子力学会会長で原発推進を唱える田中氏を後任に起用するこの人選は、再稼動に前のめりな安倍政権の思惑が色濃く反映されたものであり、到底認めることは出来ない。社民党は、「厳格な規制」から「推進」へと規制委員会設置法の趣旨を変容させる疑念のある人事案に抗議し、政府に撤回を求める。
2.2012年の規制委員会発足時の人事にあたり、政府が公表した「原子力規制委員会委員長及び委員の要件について」では、「就任前直近3年間に原子力事業者等及びその団体の役員・従業者等であった者」及び「就任前直近3年間に、同一の原子力事業者等から、個人として、一定額以上の報酬等を受領していた者」を欠格要件にあげている。さらに、「原子力事業者」の定義について政府が参議院の議運委員長に提出した文書には、原子力事業者及びその団体の具体例が列記され、その中に「原産協会(日本原子力産業協会)」も明記されていた。
3.委員候補として提案されている田中氏は、原子力利用を研究するエネルギー総合工学研究所の現職役員で、2011年から2012年には日本原子力産業協会の役員等の経歴がある。さらに、2011年に東電記念財団から50万円以上の報酬を受け、原発メーカーの日立GEニュークリア・エナジーなどから少なくとも2011年度までの4年間で毎年計110万円の寄付を受け続けていた人物である。田中氏の起用は、委員の欠格要件に抵触することが明白である。この疑念に対して政府は、「欠格要件を適用せず人選した」とし、規制庁も「東電記念財団は電力事業者に当たらず報酬も正当なもの」との見解を示しているが、発足当時の基準を継承しないのであれば、その理由について人事案提示の前に説明責任を果たすべきである。
4.安倍内閣は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけて「原発に依存する社会」への回帰を図ろうとしている。現在、規制委員会に安全審査を申請している原発は、9電力の11原発18基に上るが、2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降、住民提訴による運転差し止め訴訟が全国で展開されている。その初判決となる福井地裁の樋口裁判長は、「人の命に最大の価値」があり「豊かな国土に根を下ろした生活を失うことこそが国富の喪失」であるとして、大飯原発3、4号機の再稼動を認めない判決を下している。政府は、国民の命を守る責務を忘れてはならない。原発推進・再稼動を前提とするような委員の人選は言語道断である。
5.事故から3年を経てもなお収束しない現状に蓋をして原発推進に突き進む政府の姿勢に、世論の反対は強まっている。安倍首相はこれまで内閣法制局長長官やNHK経営委員など恣意的・独善的な国会同意人事を進めてきたが、原子力規制委員会の人事も「中立、公正」な人選とは言えない。社民党は、「原子力ムラの影響排除」、「利用と規制の分離」、「国民の信頼回復」など設置法の趣旨に沿った、「中立性・透明性」が確保された規制組織となるよう、この委員会人事案の撤回と人選の再考を政府に求めていく。
以上