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Narashino Geography 130  「トルコ大統領選挙」に注目

2023-05-21 12:17:46 | 地理学

「トルコ大統領選挙」に注目

現職エルドアンが再投票で当選の見通し?

5月14日、トルコ大統領選挙が行われました。開票は在外投票分が集計されるまで確定しませんが、現在(5月15日)、トルコにいる知り合いの内藤正典さん(イスラーム地域研究・立命館大学)からのメールで「ほぼ現職のエルドアン(公正・発展党+民族主義者行動党) が接戦ながら最終的には再投票で当選するという見通し」とありました。

エルドアンの評価が➀物価上昇➁大地震などによる国民窮乏で、この1年で急速に低下

エルドアンの評価はこの20年、紆余曲折を経ています。最初の10年は国内の評判も芳しくなく、国際的にもイスラム批判の下で厳しいものがありました。しかし、イスラーム世界ではきちんとものを言う指導者という評価でした。この10年は内政でも評価され、貧しい人たちへの低価格住宅の供給などで成果を挙げてきました。

しかし、この1年でエルドアンへの評価は物価上昇などによって急速に低下しました。
追いうちを掛けたのが、
➀ シリアとの国境に近い地域での大地震の発生(金を払えば建築基準以下でも建設を許可してしまう、という制度が被害を拡大させた)と、

➁ インフレを抑えるため、本来は金利を上げなければいけないのに、建設業者など財界の利益を優先して逆に金利を下げたために物価高騰に拍車をかける、などの政策によって国民生活が窮乏していることでした。

右から左まで寄せ集めのクルチダウオウル候補

しかし、対抗する野党6党連合が複雑で、対抗候補のクルチダウオウル(共和人民党/世俗主義・民族主義)は、立場の異なる良い党(極右から分離)、幸福党(古典的イスラム主義)、未来党(ダウトオウル元首相の政党) さらにクルド政党や左派政党の諸人民の民主党からも支持を受けたため有権者から反発されているといいます。

政教分離国家で、イスラム原理主義ではないトルコ。
しかしイスラームの文化をもの指しにしてみるとエルドアンの評価も違ってくる。金利を下げたのも、「物価上昇を引き起こしたトンデモ政策」ではなく、イスラームの「利息を禁じる」教えに沿ったものに過ぎない?

トルコ共和国は1923年に建国されました。第一次世界大戦で敗北し崩壊寸前のオスマン帝国で祖国解放運動を指導したムスタファ・ケマル・アタチュルクは「建国の父」とされています。トルコはアタチュルク主義と呼ばれる世俗主義が基調です。オスマン帝国の時代から、多民族国家で多様性を認める文化がありました。イスラームを尊重する国で、国家機関として宗教庁も置かれています。しかし、政治ではイスラム主義を厳しく排除してきた歴史があります。国民の多くがイスラム教徒であっても、イスラム原理主義ではないのがトルコです。今回の大統領選挙では、欧米や日本のメディアは現職のエルドアンに厳しい報道が目立ちました。インフレ時に金利を下げたのは、イスラームが禁じる利息を上げないという姿勢を示したことになります。また、貧困層向けの住宅提供などはイスラームの喜捨の精神に沿っていると評価されます。イスラームの文化をもの指しにしてみるとエルドアンの評価も違ってくるということです。

短期的に見ると、物価上昇、株価下落でもエルドアンが再選されそう?

14日の投票では、エルドアンもクルチダウオウルも過半数の得票を得ることができず、5月28日に決戦投票となりました。結果は微妙ですが、トルコ国内でもエルドアンが大統領になりそうだと思われているようです。物価上昇も想定され株価も下がっています。

長期的に見ると、ロシアにもウクライナにも影響力を示すトルコ、という見方ができる

これは短期的な見通しで、もう少し長い時間で見通しを立てると別の見方もできると思います。特にトルコ周辺の国際事情を考えるとエルドアンの役割は重要です。ロシアがウクライナを侵略した理由は、ウクライナのNATOへの接近と冬でも凍らない港を手に入れることにあると考えられます。国会の出入り口のボスポラス海峡とダーダネルス海峡の管理権はトルコにあり、トルコの承認がなければ通行できず、クリミア半島を手に入れた意味も失われます。トルコ自体は原則に則ってブレずにロシアとの関係も維持しつつ、ウクライナ侵略には反対しています。

IS(イスラム国)に対抗するためクルド人を利用したアメリカとは距離を置くトルコ

米国との関係はISに対抗させるため米国がクルド勢力を利用したので、米国に追随することもありません。一言で言えばオスマン帝国以来の大国として行動していると言えそうです。(近)

 

(編集部注)
クルド人は、トルコ、シリア、イラク、イランにまたがって住む「国を持たない民族」と言われています。

エルドアン氏、首相に初めてなった時は、今まで弾圧されてきたトルコ内の少数民族クルド人との融和をかかげ、クルド人の支持も得て首相に就任しました。

ところが、その後シリア内戦でアメリカなどにも支援され、IS(イスラム国)を撃退した武装力で力をつけたクルド人が、イラクでは自治権を持つに至りました。

このことに危機感を持ったエルドアンは、クルド融和策から、クルドを押さえつける、以前の政策に転換しました。
(今、入管法改悪で問題になっている在日クルド人難民も、昔からのクルド弾圧体制から逃げるため日本に逃げて来た人たちです)。

一方対抗馬のクルチダウオール氏は、シリア内戦でトルコに逃げて来たシリア難民(EUに行けなかった400万人をトルコが受け入れている)をシリアに戻す、と主張しています。もしそうなれば、シリアに戻れない、戻りたくないシリア難民がEUに難民として押し寄せることになるかも知れません。

 

 

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