(SBSnews6より)
一体なぜ? 57年前と大きく変わった検察の“立証方針”
起訴内容が事実か、裁判長に問われた姉のひで子さんは訴えました。
「1966年、静岡地裁の初公判で弟、巖は無実を主張しました。それから五十余年にわたり、紆余曲折、艱難辛苦がありました。再び、私も弟、巖に代わりまして、無実を主張いたします。どうぞ弟、巖に真の自由をお与えくださいますよう、お願い申し上げます」
ここで明らかになったのは、今回のやり直し裁判では、検察側がこれまでは重要な証拠と位置付けてきた袴田さんの自白調書を有罪の立証に使わないということです。
自白調書には▼袴田さんが「店の売上金を盗むため」と一度は供述した犯行動機や▼事件当日の侵入経路などが記されていましたが、この自白調書は、もともと不可思議な点が多いものでした。
逮捕後に作成された袴田さんの自白調書は、任意性に疑いがあるとして45通のうち44通を証拠から排除。
この背景について一審判決から40年近くが経過した2007年、静岡地裁で死刑の判決文を書いた元裁判官が守秘義務を破り、告白しています。
<元裁判官 熊本典道さん>
「自白調書が非常に数が多かったでしょ。取り調べ期間がね、20日ちょっとの間、連日連夜ですよね。こんなもの証拠として認めるわけにはいかんと。
他の2人の裁判官にしてみれば『1通ぐらい認めてやれよ』と。私は「じゃあ、そうするか」と、妥協の産物ですよ」 なぜ、検察は一度は認められた自白調書を今回は証拠から外すのか。
裁判官として30件以上の無罪判決を確定させ、映画やドラマのモデルにもなったともいわれる木谷明さんは指摘します。
<元東京高裁判事 木谷明弁護士>
「(袴田さんを死刑とした)確定審のころは自白調書があれば、認定してもらえると思ったんでしょう。だけど、今となってみると自白調書はかえって邪魔なんですね。検事の主張と合わないから。ともかく強盗殺人をしたのはこの人だと、それを客観証拠で立証すると方針転換をしたんだと思いますよ。(自白調書)それを主張するとむしろやぶ蛇になるんじゃないかと」
自白調書を使わずに有罪を立証することについて、静岡地検の奥田洋平次席検事は取材に応じ「自白調書を証拠にした当時の立証方針は分からない。ただ、今、再審を担当している静岡地検の判断から外した理由は「言えない」とコメントしました。 やり直し裁判は、事件から1年2か月後に現場から発見された血の付いた衣類「5点の衣類」に残る血液の色について、1年以上みそにつけても血が赤いのか、それとも黒くなるのか、ここが最大の争点となります。
拷問によってウソの「自白」をさせた警察の「えん罪でっち上げテクニック」
トイレにも行かせず顔を殴打!拷問で顔面が腫れ上がる…
ノンフィクション映画『 BOX ~袴田事件 命とは~』
「袴田事件を裁いた男」(朝日新聞出版の本)
無罪を確信しながら死刑判決文を書いた元エリート裁判官・熊本典道の転落
こんなデタラメな証拠で人を有罪にするのは、それも死刑にするなんて無茶だ。当時30歳だった裁判官の熊本は異議を唱えるが、2人の先輩裁判官に押し切られ、最終的には多数決で負けて、心にもない「死刑判決文」を書くことになる。
熊本は懊悩し、裁判官を辞めて酒におぼれ、家族を崩壊させ、自殺未遂をし、やがて行方不明となってしまう。ところが事件から40年が経った頃、突然マスコミの前に現れて「あの裁判は間違っていた」と語りだす。その姿をテレビや新聞は大きく取り上げ、海外のメディアからも勇気ある発言、良心的な判事だと、その行動を賞賛する報道が相次いだ。
しかし取材を重ねていくと、「良心ある告白をした美談の男」とは別の、もう一つの顔があることが、だんだんと分かってくる。そして熊本自身も「この話を決して美談にしてはいけない」と著者に念を押すようになる……。熊本の本心は何なのか。償いなのか、それとも売名行為なのか?
完全版では、2014年3月27日、静岡地裁が再審決定をして、袴田さんが東京拘置所から釈放された以降の出来事を取材する。熊本がついに袴田巌さんと面会できたときのこと、2020年に福岡県の病院で亡くなった熊本のこと、2023年、東京高裁の再審開始決定のことなどについて、熊本の親族、弁護団、支援の会の人々、袴田さんや姉の秀子さんに再取材して、熊本典道の人生について再び考える。
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