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「拒否権発動」というおかしな国連の制度、そのルーツは100年以上前の「人種平等案否決事件」

2022-12-30 22:45:42 | 投稿

(ブログ読者の投稿です)

「拒否権発動」という国連のおかしな制度、そのルーツは100年以上前の「人種平等案否決事件」

 

ウクライナ侵攻に何もできない国連にがっかり

 今年、我々をがっかりさせたものの一つが、国連というものの使えなさではないでしょうか。ウクライナ侵攻という露骨な侵略行為を前に、国連は何もできないまま今に至ってしまいました。その原因は、常任理事国ロシアの拒否権発動です。

 しかし考えてみれば、紛争当事国が自分に関する決議に議決権を行使するとは、変な話ですね。

会社では「特別利害関係取締役」は議決に加わることができない

例えば会社であれば、「特別利害関係取締役」というのがあります。取締役会の決議について会社法第369条第2項は「前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。」と定めています。例えばある代表取締役の解任が議題になっているのに、その代表取締役が議決に加わり反対票を投じるのは公正ではありません。議決に加わらなくても、その代表取締役が議場にいて威圧していれば、他の取締役はあえて解任に賛成票を投じる勇気を失ってしまうかもしれません。だから、この解任議案を審議する間は、対象となる代表取締役には議場から退席してもらうのです。

特別利害関係取締役とは | 経営を強くする顧問弁護士|企業法務オンライン(湊総合法律事務所)

裁判でも、公正な裁判が期待できない裁判官を担当から外す制度がある(除斥、忌避、回避)

こうした例は会社法ばかりではありません。例えば裁判で、法廷を開いてみたら被告人と裁判官が親戚だった、などという場合はどうでしょうか。本当に公正な裁判が出来るのか、心配になりますね。そこで「裁判官の除斥」という制度が設けられています。「除斥」とは、法律で定められた一定の原因に当たる場合、当然担当から外される制度です。 また「忌避」というのは、除斥原因には当たらないが公正な裁判を疑わせる事情があるという場合に、当事者の申立てによって担当から外す制度です。 さらに「回避」といって、裁判官が自発的に担当から外れる制度もあります。

こうした「条理」(ものの道理)が動かず、「特別利害関係者」が議決権を持ち、拒否権を発動できる国連はおかしい

 このような制度は日本にだけあるわけではなく、どこの国にも見られます。また、特に成文の法律がなくても、公正を保つために当り前のこと(これを「条理」、つまり「ものの道理」と言います)とされているのが普通です。この条理がなぜ、国連安保理事会になると働かないのか、自分の制裁決議が議論されている場にロシア代表が出席し、平然と反対票を投じるのか。いまだ納得できる説明を見たことがありません。また、他の常任理事国の代表がなぜそれを言わないのかもわかりません。将来、自分がロシアの立場になったときに、拒否権が使えた方がいいから、ということなのでしょうか。

なお、拒否権というのは議決権行使が前提ですね。拒否権を有する国が議決権を行使して反対票を投じれば、反対がその1票だけでも議案を葬ることができる、という制度ですから、特別利害関係により議決権が行使できなければ拒否も成立しないわけです。

そのルーツは、日本の「人種差別撤廃提案」を、アメリカのウィルソンが「全会一致でなければ否決」という「条理ならざる条理」を持ち出してつぶした事件

 こうしてあれこれ考えていると、100年ほど前に起きたある事件を思い出してしまいます。人種平等案否決事件あるいは人種差別撤廃提案(Racial Equality Proposal)といいます。

人種的差別撤廃提案 - Wikipedia

 第一次世界大戦が未曾有の惨禍を残して終結し、新たに国際連盟が組織されることになりました。そして日本も、戦勝国としてヴェルサイユ講和会議に乗り込みます。幕末の屈辱的な不平等条約の改正を果たし、念願の「一等国入り」をした日本は、新たに国際連盟規約に一つの条文を盛り込もうとします。加盟国は人種差別を撤廃すること、そして連盟の運営に人種による差別があってはならないこと、というものでした。黄色人種の代表として理念に燃える日本の、若々しい姿が見えてきますね。

 ところが、欧米諸国は渋い顔をしました。イギリスもフランスもたくさんの植民地を抱え、人種差別を平気で行っていたからです。しかし、日本全権・牧野伸顕はねばり強く交渉を重ね、遂に採決の場に持ち込んだのでした。時に大正8年(1919)4月11日のことでした。採決の結果は16票中、賛成11・反対5となりました。牧野が勝ったと思ったその瞬間、議長を務めていたアメリカのウィルソン大統領は冷たくこう言い放ったのです。「かかる重要な案件の議決は全会一致を要するのが条理である。残念ながら日本の提案は否決されました。では次の議題に…」。

 こうして日本の提案は葬られ、理念に燃えていた日本は早くも国際連盟というものに失望を抱くようになります。これが後に、リットン報告書を跳ね付けて連盟を脱退し、孤立化していく遠因になったと昭和天皇も「昭和天皇独白録」の中で述べているのです。

「戦争当事国の議決権は停止」という「条理」が働かない国際外交のドロドロ

 国際外交はドロドロした現実政治であって、裁判ではありません。紳士的に見える裏側ではいろいろな暗闘が繰り広げられているのですが、ロシアの拒否権発動に対しても「かかる案件では紛争当事国の議決権は停止されるのが条理である。ロシア代表の退席を求めます」とは言えないものなのでしょうか。

 もっとも、ロシア代表を退席させ対ロ制裁を決めたとしても、ロシアがそれに従わなければ実効性はありません。それどころか、ロシアが核兵器をちらつかせ、「国連なんてやめた」と土俵の外に出てしまえば、かつて国際連盟を脱退し戦争へと突き進んだ日本と同じ道に追いやってしまうことになります。結局この問題は、ロシアが従わざるを得ない“弱み”をどう握るか、ということに行き着きます。軍事的に敗北しない限り従うつもりはないと言っているプーチンに、“弱み”などあるのでしょうか。経済制裁もいっこうに効かないようです。

「惨劇を引き起こす核兵器が、一方で恫喝外交の道具としても使われてしまうからなくすべき」という視点があってもいいのでは?

 今回、国際社会が決定的な手を打てない一番の理由は、ロシアが核兵器をちらつかせることでしょうね。我々日本人は、広島・長崎の惨劇をくり返すな、という観点から反核の声を上げているのですが、このように恫喝外交の道具として使われてしまうから反対、という視点も、もっとあっていいのかも知れませんね。

来年こそウクライナの戦争を終わらせたい

 来年、日本は国連安保理の非常任理事国になるそうです(任期2年)。日本の代表には、牧野伸顕のように勇気を持って発言してもらいたいものです。そして来年こそ、ウクライナの停戦を実現させたいものですね。

 

 

 

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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2022-12-30 23:52:11
全会一致を要するとは、言い換えれば全員が拒否権を持っている、一人でも反対すれば否決、ということだ。だから国際連盟は第二次大戦を防ぐことができなかった。そして現代の国連も同じ轍を踏んでいる。
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Unknown (Unknown)
2022-12-31 14:20:01
意外な歴史を初めて聞いた。学校でちゃんと教えて欲しい。
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Unknown (Unknown)
2023-01-01 19:58:33
日本ではちゃんと報道されないのだが、ロシア国内の民主派・反体制派は反戦活動を断念してしまったわけではない。
ある女性はプーチンの両親の墓に「あなたの息子の悪行」を書き出したカードを供えた容疑で逮捕されたそうだ。勇気ある行動だね。
こうして弾圧と戦っているロシア市民をどう支援していったらいいか、平和な日本にいる我々は考えなければならない。
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Unknown (Unknown)
2023-01-03 09:57:49
朝鮮半島を併合し差別していた日本が人種平等とは? これぞ欺瞞というものでしょう。戦前を美化する試みには賛同できません。
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Unknown (Unknown)
2023-01-16 12:32:39
もし被告人が裁判員を兼ねて、自分の有罪に反対するとしたら、マンガだね。それを平気でやっているのが安保理だ。
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Unknown (Unknown)
2023-01-17 09:35:53
本来は核を保有する常任理事国5か国で国連軍を組織して、国際社会の無法者を制裁することになっている。だから5か国の一致が求められてきた。常任理事国が無法者になろうとは予想していなかったわけだ。残り4か国で国連軍を作り、ロシアは国連から脱退してもらうのが理屈だが、核があるからそうはいかない。
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