クーデターを機に明らかになった、国軍と日本政財界のつながりと、日本政府が制裁に乗り出せない理由
利権がつなぐ日本とミャンマー「独自のパイプ」 ODAビジネスの黒幕と国軍トップがヤンゴン商業地開発で合弁事業
(ニュースウィーク誌の記事を抜粋し、ブログ編集部で小見出しをつけました)
日本政府とミャンマー軍部の利権のネットワーク
欧米諸国の国軍への制裁強化と世界で高まる国軍批判の声をよそに、日本政府がいまだに旗幟を鮮明にしないのはなぜなのか。その謎を解くカギとして無視できないのが、両国を結ぶ利権のネットワークである。
一例として、ODA(政府開発援助)ビジネスの黒幕とされる日本ミャンマー協会の渡邊秀央会長が、クーデターの首謀者で国軍トップのミンアウンフライン総司令官が会長をつとめる国軍系企業と手を組んだ、最大都市ヤンゴンの商業地開発事業がある。
国軍の資金源を絶つよう求める市民団体
日本でもクーデター後、市民団体が政府に対し、日本の公的資金と国軍ビジネスとの関連を早急に調査し、国軍の資金源を断つよう求めている。ヒューマンライツ・ナウ、日本国際ボランティアセンターなど5団体は2月25日、茂木外相に対して、日本政府が関係諸国と共同して、国軍とその指導部、国軍所有企業のMEHLとMECがもつ莫大な経済資産に対する対象限定的経済制裁をとるよう求めた。
軍部との「独自のパイプ」の元凶「日本ミャンマー協会」に抗議デモを行ったミャンマーの人たち
しかし日本政府は、「独自のパイプ」をいかして問題解決に努力するとの空念仏を繰り返すだけで、同盟国米国と歩調を合わせて制裁に踏み切るわけでも、最大の武器とされるODAを切り札に国軍に民主化への回帰を説得することもない。なぜなのか、の理由のすべてではないものの、大きな要因が渡邊氏と日本ミャンマー協会の活動にあると見て間違いないだろう。多くのミャンマー人はクーデター後にそのように認識しはじめており、だから彼らは4月14日に同協会に日本人とともに抗議デモをおこなったのである。
日本ミャンマー協会は麻生太郎を筆頭に日本の政財界全体で軍部を支える組織
日本ミャンマー協会はミャンマーが民政移管した翌年2012年に、ミャンマーへの民間の窓口として正式発足した一般社団法人である。両国関係の多岐にわたる分野において着実に交流を発展させていくのが目的とされ、民間の投資、貿易の拡大、技術協力・支援など経済発展をウィンウィンの戦略的関係で構築するために、重要な役割を果たしていくとされている。
その役割を果たすために、協会の役員には最高顧問の麻生太郎副首相・財務相を筆頭に、政官財のそうそうたるお歴々が名を連ねている。副会長には大手商社の三菱商事、丸紅、住友商事の元トップ、理事には自民、公明、立憲民主の与野党の現・元衆参国会議員、関係省庁の事務次官経験者、大手企業の役員らがずらりと並ぶ。顧問は歴代の駐ミャンマー大使。正会員(2021年3月現在)は日本を代表する大手企業127社。協会はまさにオールジャパン、日本株式会社の縮図といえる。
現職国会議員では、自民党は麻生氏以外に甘利明・元経済再生相、加藤信勝・現官房長官、立憲民主党の福山哲郎幹事長、安住淳・元財政相が理事をつとめている。
渡邊氏は一民間団体の会長にすぎないのではなく、その背後に郵政相時代にきずいたこうした政官財の勢力が控えているから、ミャンマーの国軍とその関連企業に大きな影響力を発揮でき、また氏が社長をつとめる会社が国軍系企業と合弁事業に乗り出すことが可能なのである。また日本の政財界も、対ミャンマー関係においては氏の意向を無視することは難しい。ひと言でいうなら、これが日本政府の口ぐせである「独自のパイプ」なるものの正体なのである。そのパイプは国軍とだけでなく、スーチー氏側ともつながっているとされるが、冒頭で確認したように、渡邊氏は国軍トップとは24回も会っているが、スーチー氏とはクーデター直前に初めて1回会っただけである。
スーチー氏の民主化をきらう渡邊会長
しかも、明らかにされている渡邊氏の発言はスーチー氏らが率いる民主化運動を評価していない。先の「ご挨拶」では、1988年の民主化運動は「内乱の拡大」であり、「国内治安安定のためやむをえず軍政になった」とされる。日本財団(笹川陽平会長)と協力して2014年からはじめた自衛隊とミャンマー国軍将官級交流プログラムの歓迎レセプションで、渡邊氏は「ミャンマーの民主化は革命ではなく、軍がみずからの手で実現した。この点は正しく評価されなくてはならない」とミャンマー軍将官たちを激励した。ミンアウンフライン司令官の片腕として、クーデター後の国民の抵抗運動弾圧を総指揮しているソーウィン副司令官は、この将官級交流プログラムで来日したことがある。
だから渡邊氏は、クーデター直前に民主化運動のリーダーと彼女から不当に権力を奪った国軍トップの双方に会い、その後にクーデターに抗議する広範な国民のデモが全土に広がっていくころまでミャンマーに滞在していたにもかかわらず、帰国後はミャンマー情勢に沈黙したままであるのは不思議ではないだろう。また日本政府は、こうした国軍との太いパイプでつながった「ドン」の存在を無視することはできないはずである。「独自のパイプ」は渡邊氏以外にもあるのだろうが、日本が欧米諸国のように、国軍トップらや国軍系企業に日本が制裁を打ち出せない理由の一端が同氏と国軍との利権のパイプであることは間違いないだろう。米国の財務省はMEHLとMECを制裁対象にしたが、日本の財務省のトップは、MECと合弁事業を手がける日本企業の社長が率いる日本ミャンマー協会の最高顧問なのである。
「黒い霧に隠れて甘い汁を吸ってきた連中を取り除かなければ日本に対する好感度はなくなる」(ミャンマー人の発言)
日本ミャンマー協会への抗議デモに参加したあるミャンマー人は、私にこう語った。「日本の大企業の利益とミャンマー国軍の利益が一致していることは、私たちには前から分かっていた。だから国軍は、自分たちが何をやっても日本は強く出てこないと足元を見透かしている。でもそのような両者の関係は、これまでは霧につつまれていた。それが、クーデターを機に明るみになったのです。ミャンマーと日本の国民が真の交流と友好関係を発展させていくためには、黒い霧に隠れて甘い汁を吸ってきた連中を取り除かなくてはならない。そうでないと、これまでの日本に対する私たちの好感度が損なわれていく恐れがあります」
「日本のお金で人殺しをさせないで!」ミャンマー国軍支援があぶり出した「平和国家」日本の血の匂い(ニューズウィーク) - 住みたい習志野
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