日経新聞ですら、今の自民党政権を見放してしまったようです。
(4月9日日経新聞コラムより)
いつの間に後進国になったか
コロナ禍で思うのは、いつの間に日本は「後進国」に転落したのかという点である。肝心のワクチンは米独英や中ロのような開発国にはなれず、インドのような生産拠点でもない。ワクチン接種率は世界で100番目だ。
「ワクチン後進国」に甘んじるのは、企業も政府も目先の利益を追う安易なイノベーション(革新)に傾斜し、人間の尊厳を守る本源的なインベンション(発明)をおろそかにしたからではないか。
「デジタル後進国」も鮮明である。接触確認アプリの機能不全を見逃すなど行政のデジタル化はお粗末だ。中国先行の高速通信規格「5G」では競争に参入できず、得意だった半導体も米国、韓国、台湾の後じんを拝する。
福島原発事故を経験しながら「環境後進国」に陥ったのは、変われない日本を象徴している。再生可能エネルギー開発は欧州や中国に大差をつけられ、電気自動車も大きく出遅れた。脱炭素の目標設定は大幅遅れで、構造転換の覚悟にも欠ける。
世界120位の「ジェンダー後進国」は目に余る。コロナ禍で指導力をみせたのは、メルケル独首相やアーダーン・ニュージーランド首相らだが、日本に女性政治家は少なすぎる。20人にもなる日本経団連の副会長にやっと女性経営者が1人選ばれてニュースになるのはさびしい。
「人権後進国」は日本外交の弱点になる。バイデン米政権の登場で人権重視が世界の潮流になった。新疆ウイグル自治区や香港の人権問題で米欧と連携して中国に厳しく対応しないと世界の信認を失う。ミャンマー軍の弾圧を止めるため先頭に立つべきは軍とパイプのある日本だ。援助停止など手段はある。
そして「財政後進国」である。コロナ禍で財政出動は避けられないが、日本の公的債務残高の国内総生産(GDP)比は2.7倍に膨らんだ。日銀が大量の国債購入で財政ファイナンスにあたるから規律は緩む。財政危機の重いツケは将来世代に回る。
日本が「後進国」に転落した背景には、政治・行政の劣化がある。責任も取らず、構想力も欠く。問われるのは、日本のガバナンス(統治)である。コロナ危機下で科学的精神と人道主義に基づいて民主主義を立て直し、資本主義を鍛え直さないかぎり、先進国には戻れない。
(無垢)
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