二人道成寺 | ||
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読了日 | 2004/11/18 | |
著 者 | 近藤史恵 | |
出版社 | 文藝春秋 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 267 | |
発行日 | 2004/03/30 | |
ISBN | 4-16-322580-3 |
しばらく振りの今泉探偵の梨園シリーズである。僕がこの著者の作品で一番気に入っているシリーズだ。ネットの古書店の案内で、タイトルを見ただけですぐこのシリーズだと分かり、注文した。文春の本格ミステリマスターズの1冊で、単行本だからお手ごろ価格というわけではないが、仕方が無い。
「本格ミステリマスターズ」には、北村薫氏の「街の灯(437.参照)」(チャップリンの映画に同じタイトルがあったと思うが?)や、加納朋子氏の「虹の家のアリス」(302.参照)、山田正紀氏の「僧正の積木唄」(439.参照)などがあり読んでいるが、ハードカバーではなくフランス装というのだろうか?(同じような装丁の、東京創元社のミステリフロンティア・シリーズはそう呼んでいる)こういう企画出版の場合1冊でも面白い本があると、他の本にも期待をしてしまうのは僕だけだろうか?
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だがこの作品に限って言えば、僕にとって、先ずこれは折り紙つきといえよう。
今回もこの作者の例によって、語り手は二人だ。一人は、いつものように歌舞伎大部屋俳優の女形・瀬川小菊、もう一人は本物の女性で、歌舞伎俳優・岩井芙蓉の番頭で、玉置実である。番頭というのは、切符の管理や、講演会やごひいき様への案内などを主な仕事とする役割で、女性がすることもあるという。
この二人が交互に語り手となってストーリーが進む。岩井芙蓉は不幸を背負った役者で、三月ほど前に自宅が火事になった。彼自身は、弟子の所で麻雀をしていて留守だったのだが、自宅にいた妻は、一酸化炭素中毒と火傷で、いまだに意識不明の昏睡状態だ。その芙蓉が瀬川菊花の楽屋を訪れ、「玉手は、俊徳丸のことを本当に好きだったと思いますか?」と訊いた。玉手とは、「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)」と言う演目に登場する玉手御前の事だが、こうしたセリフにあうと、僕のような歌舞伎門外漢には荷が重くなるのだが、そういうものだと思って読み進めれば、一向に物語を理解することに支障はない。
ストーリーに話を戻せば、岩井芙蓉の放った質問が、その場にいた瀬川菊花や小菊、そして、楽屋に居合わせた、今泉文吾を巻き込むことになるのだった・・・・。
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うまい言い回しが思いつかないが、僕がこのシリーズを好きなのは、瀬川菊花や、弟子の小菊、そこを訪れる、弟子や、若手俳優の会話が、実にいい雰囲気を感じさせてくれるからだ。瀬川菊花の雰囲気は、どこか中村雅楽を連想する。
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