隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1215.警視庁情報官 トリックスター

2012年01月09日 | 警察小説
警視庁情報官
トリックスター
読 了 日 2011/12/03
著  者 濱嘉之
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 423
発 行 :日 2011/11/15
ISBN 978-4-06-277101-6

 

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オン木更津店の2階にテナント出店している未来屋書店は、買い物ついでによく立ち寄るところだ。テナント出店と言ってもここはイオングループの店だから、イオンの一部と言えるかもしれない。
今どんな新刊が店頭を飾っているのだろうという興味を持ってみて歩くのだが、書店での売り上げベスト10などの棚もあって結構参考となることもある。
僕が本書を買ったのは11月下旬だったから、カレンダーや手帳が、マグネットと呼ばれる店先の一番客の目をひく場所を占めていたが、文庫の売れ筋や新刊が並んだ平台に本書もあって、目をひかれ思わず衝動買いをした。
シリーズの第1作を読んだのは今年(2011年)5月だったから、半年ばかりの間に3作を読んだことになる。主人公である警視庁情報官・黒田純一の魅力的なキャラクターと、全く見事としか言いようのない豊富な人脈を駆使した仕事の進め方に引き付けられてのことだ。

 

 

1作目を読んだところでも書いたが、黒田純一のあまりにも多彩な人脈に、ちょっとした大人のお伽噺とも感じられなくもなく、もっともその辺も惹かれる要因の一つで、前に書いたかもしれないが人気コミックでシリーズで映画化もされている「釣りバカ日誌」の浜ちゃんを連想させるところもある。
サラリーマンに限らず、男性なら多くの人が憧れる存在だ。こうした存在となるまでに、当人の努力があったことは想像できるが、半分は持って生まれた人間性が寄与していることも否定できないだろう。まあ、現実的には誰からも好かれる上に、仕事もそつなくこなすなどという人間がそうそういるものではないが、このシリーズを読んでいると、納得させられてしまうのだ。
タイトルのトリック・スターとは、大物詐欺師のことだ。国際的なスパイやら胡散臭い人物が入り乱れる裏の社会で、仕掛けられる大がかりな詐欺事件を追う中で、現職の大物代議士の名前が浮かびあがる。
発端は自衛隊・統合幕僚学校長・田守のもとに持ち込まれた50兆円というとてつもない金額の融資の話だった。話を持ち込んだのは、マレーシアの財閥夫人・葉昭子である。田守はあまりの額の大きさに信じ切れずに、四井重工業の社長・加藤に相談する。

 

 

妙な手口で、信用させて手形をパクるという松本清張氏の初期の作品「眼の壁」を読んだ時には、昔のこともあって驚いたものだが、本書で描かれる手口は全く疑いの心理の逆を突くようなやり方で、否応なく信じさせるのだ。
黒田の捜査は複雑な詐欺の連鎖を一挙に暴こうとするもので、例によってあらゆる人脈を駆使して、次第に黒幕を追いつめるかに見えたが…。

 

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