隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1487.利休にたずねよ

2014年09月08日 | 歴史ロマン
利休にたずねよ
読了日 2014/07/18
山本兼一 山本兼一
出版社 PHP研究所
形 態 文庫
ページ数 540
発行日 2010/10/29
ISBN 978-4-569-67546-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

史ものに弱いという僕の欠点を踏まえてさえもなお、魅力的なこのタイトルに抗うことはできなかった。
従来ミステリーのみならず、歴史に関する讀み物には近づかないようにしてきた。しかし、僕が歴史に弱いからと言って、遠ざけていたのではますます弱くなっていくばかりだから、いくつかは読んできた。
そもそもいつごろから僕の歴史嫌いは始まったのだろうかと、思い返せば多分それは中学生の頃ではなかったか?応仁の乱は西暦何年だったか?関ヶ原の戦いは?信長が本能寺で討たれたのは?などと言う試験に向かって年号を覚えようと思っても、僕の頭は頑としてそれを受け入れず、テストの結果は当然惨憺たるものに終わったのだ。
僕は終いにはそんなこと覚えてどうなるんだ、どうでもいいじゃないか、などと開き直るのだが開き直ったところでどうなるものでもない。興味のないものは頭に入らないということが分かっただけだった。

 

 

僕がたびたびタイトルに惹かれて本を読むということをここに書いてきたが、それがどういう傾向のものが僕を引き付けるのかは、僕自身にもよくわかっていない。
一つにはそのタイトルが謎めいていることが挙げられる。このタイトルがまさにそれだ。まず、どういうことなのだろうという疑問がわいてくる。それは読んでみないと分からない。ことによると読んでもわからないかもしれない(今までにもあったが、最後まで読んでもタイトルの意味が分からなかった、ということはいくつかあった)。
だが、本書のそれは読み始めてすぐにわかる。ミステリーのネタバレ、あるいはネタばらしにあたるかもしれないが、最初に利休の切腹場面から始まるこの物語は、利休の目線からの状況描写をメインとして、秀吉、細川忠興、古渓宗陳、古田織部、徳川家康、石田三成等々、幾人もの語りで構成されている。
と書けば想像がつくのではないか。なぜ秀吉が利休に切腹を命じたのか?利休はなぜ唯々諾々とそれを受け入れたのだろうか?そうした疑問に対して、先述のような幾人もの語りが、次第に年代をさかのぼっていくのだ。

 

 

の作品は2009年、第140回直木賞を受賞している。この回から直木賞の選考委員となった宮部みゆき氏がこの文庫の開設を書いているが、この人は小説もうまいが解説も実にうまいと感じる。作品にほれ込んでいるという思いが伝わってくるのだ。
少し前になるが昨年の直木賞、芥川賞が決まった時のイベントの模様が、確かBSイレブンの「宮崎美子のす ずらん本屋堂」で紹介された。その中で今までに受賞した作品の中から3人の作家たちがこれと思う作品を一つ選んで、その作家自身が会場の見学者に向かっていかにその作品が優れているかを語って、見学者の投票を競うというイベントがあった。北村薫氏と、宮部みゆき氏ともう一人女性の作家がいたが名前を忘れた。この3人が自分の推薦する作品がどう優れているかを訴える内容もさることながら、普段見慣れない作家たちが熱心に他の作家の作品を進める姿に、おもしろさを感じた。
だが、その中で最後に立った宮部氏の紹介は他の二人を圧倒する語りで、作品の面白さを紹介して当然のごとく1位の投票を獲得した。まさにその作品に自分自身が惚れ込んでいるという雰囲気がよく伝わっていたのだ。
とまあ、それは全く余分なことなのだが、同様に僕も読みながら次第にこの作品にほれ込んでいくことを感じたのだった。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿