隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1777.宿敵

2017年09月17日 | サスペンス
宿敵
読了日 2017/09/17
著 者 小杉健治
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 571
発行日 1998/12/20
ISBN 4-08-748887-X

 

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杉健司氏の著作で未読の旧作は、まだ結構数多くあるから、新作にはまったく目を向けていなかった。それというのも、まだ古書店で本を購っていた頃に、古書店の棚を見ると時代小説が多くて、近頃は時代小説に転向したのか、とも思っていたからだ。
だが、最近になって書店を訪れた際に、単行本の棚には著者の新作が並んでいるのを見て、初めてまだ現代小説の新作を書いていることを知って、まあ、そういうことばかりではないが、また小杉氏の著作を読んでみようと思った次第。
だが、それにはまず手元にある旧作の文庫本数冊を消化してからだと、本書を手に取ったのだ。
この頃はもっぱら図書館を利用することが多くて、積ン読本の消化がままならない状態で、いつも心に引っかかっていたから、この際せいぜい手元の本を読むことに専念しようと、思い立ったがそれもいつまで続くかは全く分からない。僕の気まぐれは長年にわたって出来た悪習?だから、ちょっとやそっとで治ることもないだろうが、一応心がけておけば何とか・・・・ならないか。

 

 

小杉氏の裁判小説は、僕はよくガードナー氏のぺリイ・メイスンシリーズに例えたり、比較したりしているが、面白さや身近に感じることから、全く引けを取らないと思っている。
ガードナー氏は弁護士であり、法廷での検察側との駆け引きや戦術の出し方など、知り尽くしてのストーリーの組み立てだから、面白くないはずはないのだが、片や小杉健治氏に至っては法曹界とは無縁の人だ。 だが、その無縁の人が描く法曹界の内幕などは、手に汗握るほどの迫力に満ちている。まあ、それ相応の勉強をしたり資料を調べたりしているのだろうが、僕は作品を読む都度、作家とはすごいものだと感心するばかりだ。
今回のストーリーは、全日本弁護士連合会(全弁連)の会長選を巡って、有力候補・河合伍助の選挙対策委員長を務める、北見史郎の波乱ともいえる人生を描いている。
“いずこも同じ秋の夕暮れ・・・”といったようなことを思わせる選挙だが、古くは山崎豊子氏の「白い巨塔」で、大学病院の熾烈なる教授選が、ドラマや映画となって一世を風靡するような状況を作った。

 

 

書のストーリーは、選挙そのものを描いたものではないが、タイトルに表れているように、主人公北見史郎にとって、生涯の宿敵と言える検事・若宮祐二との関わり合いが、結局のところ大きなテーマとなっている。
「一人の人生には一つの小説になるくらいのドラマが隠されている」というようなことを言った人もいる。 ここでは、会長選挙の虚々実々の駆け引きや、情実に絡んだエピソードなど、様々な要素が盛り込まれるが、それぞれの過去のうかがい知れない事情が、現在にまで影を引きずっていて、悲しいまでの破局に向かって突き進む主人公に、僕は思わず涙を誘われたりして・・・・。
僕の人生は人の語れるほどのものではないが、それでも振り返ってみれば、80年近い年月だからいろいろなことが有り、後悔することが多いがそれでも数えるほどだが、良いこともあったと自分を慰めてみたり。

台風の思いがけない進路がまた九州地方や、各地に甚大な被害をもたらさなければいいと、願っているが自然災害はなかなか防ぎようがなく、大変だ。

 

 

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