隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1328.警視庁情報官 ブラック・ドナー

2013年03月06日 | 警察小説
警視庁情報官 ブラックドナー
読 了 日 2013/03/06
著  者 濱嘉之
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 379
発 行 日 2012/10/16
I S B N 978-4-06-277397-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

-4日前から持病?の痛風が発症した。いつものように、右足親指の付け根が腫れ上がって、二晩ほど眠れぬ痛さが続き、かかりつけの病院に行った。昨年11月にも発症した際、ここの医師から、「本格的に治すようにしましょう」と言われて、尿酸値を下げる薬を処方してもらい、3週間ほど続けて飲んだ。
痛風とは、別名高尿酸血症といって、血中の尿酸値が高くなって起こる病気で、尿酸の結晶が血中や関節内にたまって、痛みや腫れを伴って発症する。ビールや、ワインなどを始めとするアルコールや、青魚(イワシ、鯖等)などに含まれるプリン体が、原因とされているが、尿酸は体内で生成されることが多いという。

だが、喉元過ぎれば・・・のことわざ通り、日常の些事に病院通いを怠って、また発症したということなのだ。
痛風は痛みと腫れさえ引いてしまえば、日常生活に何の支障もないことから、ついつい忘れがちになる。しかし発症すると、文字通り風があたっても痛いというが、いや、風があたらなくても痛いのだ。そのピーク時の痛さは半端ではない。そんなことで、読書もままならずブログも少し間があいた。

 

 

視庁情報官シリーズの第4弾。早いもので、このシリーズの1冊目を初めて読んだのが2011年だから、2年弱で4冊目となった。著者はこの他にも新しいシリーズや、シリーズ外の著作も出しており、売れっ子作家と言っていいだろう。
僕はまだこのシリーズ以外は読んでないが、多分他の作品も同様に読みやすく、面白いストーリーを展開させているのだろうと想像する。元警視庁の警察官だったという著者は、作品から想像できる姿は、いわゆる仕事のできる人物だったのではないか。
このシリーズの主人公である、黒田純一の仕事に対する向き合い方や、組織を柔軟な姿勢で動かすやり方を見ていると、管理職のサラリーマンの手本になると感じる。
そうした主人公を小説の中とはいえ、自在に動かすのはやはり自身の体験がものをいう(のではないかと推測する)。最近は聞かれなくなったが、以前は根回しという言葉があまりよくない意味でも使われていた。しかし、この根回しということは、組織を円滑に運営する上で、大切なことで欠かせない要件だ。
黒田純一の仕事の進め方の巧みなところは、実に上手い、ある意味では巧妙な根回しが成功へとつながっている。
彼の頭の中にはいつだって自分の出世よりも、まずはやるべきことを成功へと導くことが優先されるのだろう。
これは、「言うは易し行うは難し」で、知識としては知っていても実行はなかなか難しい。前にもどこかで書いたが、知っていることと、できるというのは天地の差だ。

 

 

ああ、こんな言い方は説教じみて、上から目線だともとられかねないが、これはあくまで僕自身への警告である。僕がだらしのない性格だから、この物語の主人公に憧れを持つのだ。
といったところで、今回はタイトルからも、臓器移植に関する事件、あるいは移植を前提とした臓器売買の実態を探るストーリーではないかと想像できる。休暇を与えられて恋人を伴って、ハワイで安息の時を過ごす黒田だったが、そんな中で恋人の遥香が思わぬ人物を見つける。それは指定暴力団・極盛会宝田組組長の宝田宗則だった。
そんな人物を遥香が知っていたことに黒田は驚くが、宝田は遥香が看護師として勤務する聖十字病院の患者であったのだ。黒田は今まで行方の知れなかった宝田を隠し撮りでデジタルカメラに収めると、すぐさま警視庁本部にメールで送った。
宝田の動向が肝臓移植であることを突き止めた黒田は、休暇を終えて帰国後ただちに、臓器移植の実態を探るべく、知人を頼ってフィリピンに飛ぶのだった。

 

 

脈のただならぬ広さと、迅速な行動が情報官黒田純一の魅力で、この辺の描写がいつもながら胸のすく思いだ。こうした上司のもとで働く優秀な部下たちもまた、彼にならって巧みな情報収集におよぶ。
黒田が編成した2班の捜査陣の一方はペンシルベニア州のピッツバーグへ、片方はロサンゼルスのロングビーチへと足を踏み入れる。さすがに名将の許に集った侍たちを思わせる黒田の部下たちの、素早い行動で収集した情報が、黒田のもとに送られてその成果を表すのだ。

ところで、今回はさすがの黒田もちょっとした油断から、正体不明の集団によって拉致されるという展開がある。その集団はもちろん黒田の率いる情報室の捜査に懸念を持つ者たちだろう。その危機は黒田の持つ機器によって回避されるのだが、拷問による身体的障害は1週間の入院を余儀なくされる。
クライマックスは終章に集約される。警視庁の複数の捜査部門がそれぞれの分担によって、被疑者の拘束に向かうシーンは圧巻。

 

 

今日は、もう一つの話題を・・・・タレントの鹿内孝氏のことについて話してみようと思う。僕の言うタレントとは、本来の英語が表す「才能」という意味合いである。若いころ僕は歌手としての鹿内氏のファンだった。
ところが人気絶頂だったころ鹿内氏は、勉強のためか?(事情はよく知らない)突然活動を停止して渡米してしまった。
前回も同じことを書いたが、歳をとるに従って過ぎ去った昔を思い出す。そんな昔のことの一つに鹿内氏のレコードで、ぜひもう一度聞きたい1枚があった。ところが何しろもう半世紀にも近い昔のことで、タイトルも中に収録されている曲名も不明というありさまだ。その頃聞いていたLPレコードは、大好きだったモダン・ジャズを始めとして、200枚ばかりあったがすべて手放してしまった。
その中でもう一度聞いてみたいレコードが2-3あって、鹿内氏のレコードもその1枚だ。かすかな記憶の中で、鹿内氏の唄う「You Do Something To Me」が頭によみがえる。そこで、ネットで鹿内氏を検索したところ、幸いにしてご本人のサイトが見つかったので、厚かましいがそのレコードに関する疑問をメールしたのである。

 

内氏の現在の芸能活動がどの程度のものか僕は全く知らないが、返信はあまり期待していなかった。
ところが、メール送信から2日後当の鹿内氏からの丁寧な返信メールが届いたのだ。僕は驚くと同時に恐縮してしまった。まさか、こんなに早くしかも本人から直接メールをもらえるとは思ってもいなかったのだ。
メールによれば、鹿内氏もつい先月72歳になったそうだ。僕とは同年代だったから、彼がデビューした頃、その歌のうまさや声の良さ、あるいは今になって感じる人柄の良さも相まってファンになったのかもしれない。今ほんの少し思い出したことは、レコードは10インチLPだった。いわゆる25cm盤だったと思う。
鹿内氏のメールに気をよくして、改めて真剣にレコードを探してみよう。そして彼の美声にもう一度酔いしれてみたい。僕の中では鹿内氏の歌声もまた、昭和モダンの一つになっているのかもしれない。同時に僕も若かったその頃に還ってみたい気もするのだが・・・・。

鹿内孝さん、ありがとうございました。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

最新の画像もっと見る

コメントを投稿