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隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1278.報復

2012年08月03日 | サスペンス
報復
RETRIBUTION
読了日 2012/08/03
著 者 ジリアン・ホフマン
訳 者 吉田利子
出版社 ソニー・マガジンズ
形 態 文庫
ページ数 612
発行日 2004/11/20
ISBN 4-7897-2416-6

 

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ストセラー作品が即僕にとっての面白い作品とは限らないのだが、(僕は評判につられるということはめったにないのだが、それでも気になって読んだものの、さほどでなくがっかり、ということが幾度かあった)、それでも探せばいろいろ出てくるので驚く。
ただ、そのベストセラー云々も、キャッチコピーとしか思えないような場合もあり、あまりあてにはできないが・・・・。
前回読んだソニー・マガジンズ刊行の「傷痕(きずあと)」の巻末に本書の公告が載っていて、女性作家による女性主人公のストーリーということで、どうも作者自身の経歴が反映されているような内容を思わせて、読んでみたいという気になった。 作者自身の経歴と言っても、検事補だったということだけしかわからないが、わが国では現職の検事が横溝正史賞を受賞して、作家デビューした例もあるから、そうしたことも僕が関心を持った理由の一つだ。

 

 

毎にもちょっと書いたような気がするが、最近になってこうした自立した女性を主人公とするストーリーで、、過去に耐えがたい傷を心身ともに負っていることが定番のようになっている。そんな感じを抱くのは僕だけだろうか?そうした傾向が内外を問わず見られるのが面白い。
PTSDに対する悩みや、影響される女性の心理状態などが、特に女性読者の共感を呼んでいるのかもしれない。 しかし、今回のストーリーは主人公が真夜中に自分の部屋で、侵入者による暴行を受けるところからのスタートで、そこに至る短いプロローグの描写が怖い。
司法試験に臨む女子大生のクローイ・ラーソンが、ボーイフレンドで弁護士のマイケルとデートから帰って、眠りについたとき、それはやってきた。気づいた時には両手両足をベッドに固定されたうえ、猿轡をかまされていた。そうした状態で凌辱され、なおかつナイフで傷つけられたのだ。ショックのあまり司法試験にはもちろん失敗して、失意のどん底に落とされる。

 

 

年の歳月が過ぎ、クローイはC.J.タウンゼントと改名、マイアミでの司法試験に合格して、マイアミ・デード郡地方検察局の検事補となって活躍、その名をとどろかせてはいたが・・・・。
彼女のPTSD(トラウマによる精神的な障害)は、まだ精神科医のセラピーを必要としていた。そうした状況の中で、若い女性を惨殺して心臓を抜き取るという、凶悪犯罪が連続していた。憎むべき犯人はキューピッドと呼ばれ恐れられていた。そんな中で、まだ見習いの新人警察官によって、高速道路上で職務質問のため止められた車のトランクからキューピッドによる犯行とみなされる、若い女性の死体が発見された。運転していた男は即時逮捕され、C.J.タウンゼントによって第1級殺人の容疑で起訴された。
ところが、C.Jは予備審問の場で、容疑者ウイリアム・バンとリングが、12年前自分をレイプして傷つけた男だとわかったのだ。

ホラー小説、サスペンス、警察小説、本格推理などといくつもの要素が入り混じった長編小説は、ぞくぞくさせる怖さがあるが、公判の進行とともに、過去が明らかにされるのではないかという、C.Jの不安な心理が次第に増幅していく描写に胸を痛める。
読後、他の作品と似通ったところがあって、こういうこともありなのか?という疑問を持った。どこがどの作品と似ているかというのは、ネタばらしにつながるので書けないが、最近読んだばかりで記憶に新しいので、ちょっと驚いた。

 

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1276.傷痕

2012年07月30日 | サスペンス
傷痕
SHADOW MAN
読 了 日 2012/07/27
著  者 コーディ・マクファディン
訳  者 長島水際
出 版 社 ソニー・マガジンズ
形  態 文庫2巻組
ページ数 317/396
発 行 日 2006/11/20
ISBN 4-7897-3008-5/3009-3

 

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を読もうかと思っていたら、興味を引く情報が思わぬところから入ってきた。
先日しばらくぶりに木更津市立図書館で、早川書房のミステリマガジンを借りてきた。たまたま図書館に立ち寄って、ミステリマガジンの2011年12月号を見ていたら、森晶麿氏と彩坂美月氏の写真が出ていたので、興味がわいて借り出したのだ。
その時雑誌の裏表紙に本書の著者、コーディ・マクファディン氏の「遺棄」という本の公告が載っており、目を引いた。
「遺棄」というのはFBI女性捜査官のシリーズ4作目らしく、既刊の3作も紹介されており、本書がその第1作で著者の処女作であることも後でわかった。
そこでAmazonで検索したところ、発行日がすでに数年を経ていることから、古書は最低の価格設定となっていたので、近いうちの買おうかと思っていた。そんな折、読み終った単行本が少したまったので、BOOKOFFで処分しようと思い出かけてみたら、そこで105円の棚に本書上下巻があったので、買ってきた。たまにはAmzonよりも安く手に入ることもあるので、探してみるものだ。

 

 

このシリーズは、ファンの間ではかなり評判らしく、売れ行きも好調らしい。そんなことからも相変わらず、僕の情報収集力は何ともお粗末だと感じる。と言っても、それほど多くの本を読めるわけでもないから、こんなところでちょうどいいのかもしれないのだが・・・・。
しかし、僕はこのような女性主人公の活躍する小説が好きなせいか、そうしたストーリーの本が良く目につく。もっともこの読書記録を始めたきっかけからして、女性検屍官ケイ・スカーペッタに惚れ込んでしまったことだから、似たような本が目に入ってくるのだろう。それでもよく次々とヒロインが誕生するものだ。
いや、実はこの本を読んでいる途中で、もう次に読む本が決まってしまったのだ。本書の巻末に 載っている広告で、ジリアン・ホフマンという元検事局に検事補として勤務していた女性作家が書いた処女作「報復」が紹介されていたのである。
早速、本書を買ったBOOKOFFへ行ってみると、同様に105円の棚に「報復」も並んでいた。何というラッキー。ごくたまにしかないが、こういうこともある。これは、僕の情報入手が遅いことがもたらしたメリットかもしれない。つまり、本書も、次に読もうとしている本も数年前に発刊されていたから、価格も安く、時をおかずして、手に入るという好条件がそろっていたのだろう。そう、物事はいい方に考えよう。

 

 

かの言い方を借りれば、本書はコテコテのサイコサスペンスだ。FBIロサンゼルス支局国立暴力犯罪分析センター(NCAVC)の主任、スモーキー・バレットは半年前に追い詰めた殺人犯に、夫と愛娘を殺され、自身もレイプされた上に、ナイフで傷つけられるという過去を持っており、休職中の現在はFBI専属の精神科医のセラピーに通っていた。
そんな中、スモーキーの部下で、同じ女性捜査官のキャリー・ソーンから、ハイスクール時代からの親友、アニー・キングが殺害されたという連絡が入った。アニーはレイプされ無数のナイフによる切り傷を受けたうえ、内臓が切り出されて、いた。彼女には幼い娘ボニーがいた。幸いボニーには暴行が加えられていなかったが、発見されるまでの3日間、彼女は母親の遺体に向い合せに縛られていたのである。
なおかつ、犯人からはスモーキーへの挑戦状ともとれるメールが送られていた。絶対に捕まえられないという自信満々の文面の通り、犯行現場に犯人を特定するような痕跡は皆無だった。
そして次の犠牲者が…。

実に陰惨な事件に巻き込まれた幼い子供の心的障害が、将来にわたってどんな影響をもたらすのか、といったことが気になりながら読み進める。主人公を取り巻く個性的なキャラクターたちの描写が、時には究極の優しさを示すことにより、惨劇の衝撃を受け止める緩衝剤の役割を示す。そうしたことが残酷な事件描写にも関わらず、後味を悪くしていないのが救いだ。
体力を使って読み終ったというような思いを抱く半面、またもや僕はこの主人公が好きになったこと実感している。
身長148cmという小柄な体で、重い過去を引きずりながら、個性的な部下たちにリーダーシップを発揮する姿に感動する。そうした姿は、趣は多少異なるが、誉田哲也氏の姫川玲子シリーズと重なるような気がして、少し間をあけてシリーズを読み続けたいという思っている。

 

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1269.ボストン/沈黙の街

2012年07月09日 | サスペンス
ボストン/沈黙の街
MISSION FLATS
読 了 日 2012/07/03
著  者 ウィリアム・ランデイ
William Landay
出 版 社 早川書房
形  態 文庫
ページ数 651
発 行 日 2003/09/30
I S B N 4-15-174201-8

 

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の本を買ったのは、ずっと前に読んだアダム・ファウアー著「数学的にありえない」のところで書いたように、2007年11月頃のことだった。
昨年(2011年)5月に惜しくも亡くなった、児玉清氏がNHKラジオ番組でお勧めの本として、紹介していたのがウィリアム・ランディ著「ボストン・シャドウ」だった。その著者のデビュー作でシリーズ第1作ともいうべき本書を先に読んでおこうと一緒に買っておいたのだ。なかなか読めずに5年も積んでおいた。
最近、海外ミステリーを読むことが少なくなっているので、前回、前々回と「シャーロック・ホームズの事件簿」、ガードナー氏の「片眼の証人」を読んだ勢いで?(なんのこっちゃ)少し海外ミステリーをまとめて読んでおこうという気になったのだ。

この読書記録を始めたころはもっぱら翻訳ものだったのが、近頃はほとんど国内ものばかりで、少し勢いをつけないと海外物に手を出せないのは、やはり歳のせいなのか?

しかし、読み始めてしまえば海外ミステリーであろうが、そうでなかろうが関係ない。僕にとってミステリーは面白い物語か、そうでないかということだけが大事なことなのだ。

 

 

メイン州の田舎町・ヴァーセイルズの警察署長・ベン(ベンジャミン)・トルーマンが、この物語の主人公だ。
ヴァーセイルズという町がどの辺にあるのか、地図で北アメリカの東部海岸に面するメイン州を見てみたが、よくわからない。もしかしたら架空の町?
タイトル(原題)のミッション・フラッツとはボストンの一角にある麻薬取引の行われる、いわば無法地帯のような場所のことだが、こちらは架空の場所であることが、巻末の解説で明らかだ。
25歳のベンは、今では記録が破られたが、少し前まではアメリカで最年少の警察署長だった。
かつては父親のクロードがボスと呼ばれる署長だった。ボストン大学の大学院で研究を重ねていたベンだったが、母親のアンがアルツハイマーに罹って、帰郷したのだ。プライドの高かった母のアンは、病気が進んでわけがわからなくなることを恐れて、自殺した。

 

 

の母親の自殺が後に物語の謎の部分に、大いにかかわってくるのだが・・・・。
プロローグで、その母の若き日に撮られた8ミリフィルムの映像を、ベンが見ているシーンが描かれて、あたかもアメリカ映画を見ているような気にさせられる。この時の母のお腹にはベンが宿っていたのだ。古い母の映像を見て、ベンが回想に耽る場面が冒頭に示されたのは、この物語の根幹を示していることが、終盤になってわかる。
著者のウィリアム・ランディ氏は、「自分が読みたいもので、今までにないタイプのサスペンスを書こう」というコメントを、イギリスのオンライン書店に寄せたということだ。段組み1段とはいえ、650ページにも及ぶ長編は、その長さを必要とするほどにストーリーが交錯して、はたして何が本当で、誰が見方で、敵なのか、というようなことが混乱する展開を示す。
まさにアメリカ的という感じを持つ物語である。

 

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1263.震える牛

2012年06月21日 | サスペンス
震える牛
読 了 日 2012/06/14
著  者 相場英雄
出 版 社 小学館
形  態 単行本
ページ数 349
発 行 日 2012/02/05
I S B N 978-4-09-386319-3

 

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の本を知ったのがBS11(イレブン)の“ベストセラーBookTVだったか?それとも他のところだったか?どうも最近になって、物忘れがひどくなったようだ。
いずれにしても面白そうで、ぜひ読まなくては、という気持ちが日に日に強くなってきて、ヤフオクで落札した。たまたま競争相手がなく、当初出品価格で落札できたのもラッキーだった。
大分評判となってどこの書店でも平積みされており、売れ行きも好調のようだ。
僕は例によって、読む前に詳しい解説や、あらすじなどはできる限り目にしないように心掛けている。ミステリーの場合、そうしたものが興味をそぐことがあるからなのだ。
著者は2005年に第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞した、「 デフォルト(債務不履行)」(角川文庫)で、作家デビューしたとのことで、僕は知らなかったが経済小説分野では、名の通った作者だったようだ。

 

 

僕が本書を面白そうだと感じたのは、やはりまずはタイトルだろう。内容を全く想像させないタイトルに、どんな意味を持たせているのだろうという興味を持たせる。
ところが、よく考えてみれば、いや考えなくても普段ニュースや報道番組などを見て、理解している人なら、このタイトルを見ただけで、「ああ、あの問題について書かれているのだな」とわかるはずなのだ。僕が関連したニュースを、対岸の火事のごとくに関心を持ってなかった証拠だ。
もちろん、途中まで読み進めばおのずとその意味は分かってくるのだが、ただ、それが登場人物にどう関わってくるのかは、お終いまで読まないとわからないようになっている。実は途中でやめられなくなって、13日から読み始めて深夜2時までかかって、読み終えてしまったのだ。
夜更かしは翌朝辛くなるので、遅くも10時半ころまでには寝るようにしており、一旦は寝ようと思って枕元の電気を消したのだが、ストーリーの緊迫感を増す先行きが気になって眠れなく、仕方なくまた続きを読み始めたのだ。

さて、ストーリーは思わせぶりなプロローグから始まる。
ずっと後になって、このプロローグの意味はもちろん分かってくるのだが、謎めいた短いプロローグは何を示しているのか、という疑問を持たせて第1章へと進む。
本書のストーリー構成は、警視庁捜査1課に創設された、継続捜査班(コールドケース:同じタイトルのアメリカTVドラマがあったが)に異動した警部補・田川信一(47歳)と、ネット配信ビズ・トゥデイの記者・鶴田真純(29歳)と、巨大スーパー・オックスマートの経営企画室長・二人の視点が不定期にあらわれて語られる。

 

 

川が上司の捜査1課長・宮田から受け取った継続捜査事件は、2年前に中野駅前の居酒屋で発生した強盗殺人事件だった。殺された二人は接点がなく、一人は宮城県の獣医師・高磨、もう一人は暴力団員で産廃業を営む西野という男だった。
田川と部下の池野が調査を進めると、当時外国人による強盗殺人という見込みで進められた捜査に疑問点が湧いてくる。一方鶴田記者は、ショッピングモールのディべロッパー業も兼ね備える大手のスーパー・オックスマートから、大手のメーカーが次々と撤退する事象に目をつけて、取材を進めていた。
オックスマートを目の敵にするような、鶴田記者の過去の謎にも興味を惹かれるところだ。
田川刑事は事件が単なる強盗殺人ではないとの疑念を抱いて、調査を進めるが、田川らの調査に理解を示さないキャリア上司が壁となっていた。

ストーリーのクライマックスは、鶴田記者の取材と、田川刑事らの捜査が交錯するところなのだが、それがいつ来るのか読めないところが、サスペンスをあおる。

 

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1260.図書館の死体

2012年06月12日 | サスペンス
図書館の死体
Do Unto Others
読了日 2012/06/09
著 者 ジェフ・アボット
Jeff Abbott
訳 者 佐藤耕士
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 398
発行日 1997/03/15
ISBN 4-15-100110-7

 

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リーズで何冊か出ているのをBOOKOFFなどで見て、ずっと前から気になっており、処女作だという本書を買ったものの、読まずに積ん読が長く続いた。
僕にとってはそんな話は珍しくなく、そうしてたまった本がたくさんある。残された時間がそれほど有るわけではないから、少しずつ消化したいとは思いながら、新しい本も気になって、八方美人には困ったものだ。
一つには、和訳のタイトル「図書館の死体」が、クリスティ女史の「書斎の死体」を連想して、読んでしまったかのような気持ちにさせていたことも、読まなかったことにつながるのか???
「んなこたねえか!」
全く他人が聞いたらあきれかえるようなことだが、僕の中の気分というのはそんなもんです(山脈)。
かつて放送された、アメリカ製のテレビドラマの定番のごとく、幕開きでトラブルを起こす嫌われ者が、後に死体で発見されるというスタートで、物語は始まる。

 

 

主人公は、母親がアルツハイマーに罹ったので、ニューイングランドでの出版社勤務を辞して、テキサス州ミラボーの町に帰ってきたジョーダン(ジョーディ)・ポティート、30歳だ。築100年にもなろうというポティート家には、母のアン、姉のアーリーンとその息子、13歳のマークの4人が暮らしている。
小さな町ミラボーの図書館長になったジョーディは、早速、その図書館内で撲殺死体が発見されるという事件に遭遇する。死体は、町中の嫌われ者だった?、ベータ・ハーチャーという中年女だった。しかも困ったことに、ジョーディは前の日に図書館内で、ベータとトラブルを起こしていたのだ。
町の警察署の署長・ジューンバックは、ジョーディの幼いころからの友達で、ジョーディに対して好意的な見方をしているが、問題は地方検事補のビリー・レイだ。死体の第一発見者ということや、被害者とトラブルがあったことから、ジョーディを第一容疑者ととらえていた。

 

 

て、そうした状況の中、ジョーディは独自の調査を開始するのだが、とても30歳とは思えないような言動が、読んでいて納得できない箇所が多く、それは僕の身勝手な見方によるものかもしれないが。
僕は主人公に感情移入をし過ぎるのだろうか?それができないと、読み続けるのがいささか辛くなるのだ。
夢中で探偵小説を読み漁った若いころもそうだったかどうかは、もう思い出せないが、その頃はもっと冷静に客観的な立場で読んでいたような気もする。しかしいつの間にか、不必要なほど主人公の細かな動向も気になって、そんな聞き方をしてはダメじゃないか!とか、わざわざトラブルを起こすようなことをしたらぶちこわしだ!なんておせっかいなことを考えてしまうのは、どうしたことか?

筋立てそのものは、アメリカドラマの「ジェシカおばさんの事件簿(Murder She Wrote)」を思わせるような展開で、ジェシカを若い男性に置き換えたらこんな風になるのかな。いかにも小さな田舎町を思わせる雰囲気で、そんな中で起こった事件を巡る人々の思惑が、コミュニティを思わぬ方向へと方向ける
しかし、どうもこの主人公、高校生としか思えないようなところもあるかと思えば、ちょっとした歓迎すべからずのような色模様もあって、ちぐはぐな感じだ。
それはともかく、話の中でアルツハイマーの母親を、施設に入れようとする姉と、ジョーディは施設に入れたくない、という二人なのだが、そちらの方は解決しないままだ。知的障害の息子を持つ僕は、そちらの方により気を取られるのだ。

ところで、タイトル(原題)のDo Unto Others(他人のためにしなさい)が気になっていたら、訳者のあとがきで聖書の中の有名な言葉(そっちの方面に無縁な僕は知らなかったが)でこの後にas you would have them do unto youと続き、「人にしてもらいたいと思うことを、人にしなさい」ということだそうだ。
この言葉が聖書からきていることは知らなかったが、言葉自体は日本でもよく使われているから、知っている人も多いだろう。

著者の紹介文によれば本作は、アガサ賞、マカヴィティ賞の最優秀処女長編賞を受賞したとのことだから、僕が気に入らなくても、それは単に僕の好みの問題だ。しかし、僕はどうもこの主人公は、好きになれないな、残念。

 

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1258.ミスター・グッドバーを探して

2012年06月06日 | サスペンス
ミスター・グッドバーを探して
LOOKING FOR MR.GOODBAR
読了日 2012/05/29
著 者 ジュディス・ロスナー
Judith Rossner
訳 者 小泉喜美子
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 388
発行日 1979/08/31
ISBN 4-15-040203-5

 

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々回に読んだ東山彰良氏の「ミスター。グッド・ドクターをさがして」で、本書のタイトルを連想したことから、どんな内容かと興味がわいて、一度読んでおこうかと思ったのだ。
僕の「気まぐれな読書極まれり」といったところだ。
本書はハリウッドで映画化されて、映画のヒットに伴って本の方もベストセラーとなったということだ。

1973年、ニューヨーク市西72丁目の“ツイード”というバーで、23歳の聾唖児童園の教師、ローズアン・クインが一人の男と知り合って、通りを隔てた自分のアパートに連れ込んだのち、男に無残に殺害されるという事件が起きた。
ジュディス・ロスナー女史は、その当時具合が悪く1週間ほど入院していたが、その間に事件の犯人は逮捕された。彼女はこの事件に大変興味を持ち、事件を基に短編小説を書いて、出版社に持ち込んだが、まだ犯人は拘留中で有罪の確定もしていなかったことから、名誉棄損に当たる可能性があるということで、出版社は受け付けなかった。
その後、有罪の確定した犯人は獄中で首つり自殺をしたということだった。そこでロスナーは、今度は長編に仕立て上げた。前述のとおり作品はパラマウントで映画化されて、原作ともどもヒットした。

 

 

この作品は事件をヒントに著者が作り上げたフィクションで、主人公イコール殺されたローズアン・クインでないことはもちろんなのだが、ベストセラーになった陰には、やはり主人公の奔放な生き方と、被害者の女性を重ね合わせた読者が多かったということだろうか?
子供たちに慕われる若く美しい女性教師という顔を持つテレサ・ダンが、毎晩そっちこっちのバーに出かけては、知り合った男と夜を共にするという、全く別の顔を持っているなどということは、彼女の周囲の人間は誰も気づかなかった。

 

 

のデータでわかるように、この作品を翻訳したのは小泉喜美子氏だ。小泉氏の作品はほんの少ししか読んでないから偉そうなことは言えないが、作中の人物造形が、小泉氏が描く女性に一脈相通ずるところがあったのではないか、などという思いを持った。
しかし、たびたび繰り返されるセックス描写には、なぜそこに行きついてしまうのだろう?という主人公へのいら立ちや、不可解な思いとで辟易する。巻末の訳者あとがきで、小泉氏はなぜこの作品が(アメリカ本国で)ベストセラーとなったのか?という疑問を投げかけているが、(聞くところによれば、女性の読者も多かったらしい!?)アメリカという多くの国籍を持ち、人種や宗教の違う人々の坩堝ともいえる中で、こういう生き方をする人がいることについても、抵抗なく受け入れられるということだろうか?

図らずも、全く内容は違うが、実在した事件を基に作られた作品が続いた。

 

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1249.炎まつり殺人事件

2012年05月10日 | サスペンス
炎まつり殺人事件
読 了 日 2012/05/03
著  者 斎藤澪
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 340
発 行 日 1994/06/15
I S B N 4-06-185693-6

 

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すみ市のブックセンターあずまで珍しい講談社文庫の斎藤作品を見かけて買ってきた。 いや、珍しいと思うのは僕だけかもしれないが、なんとなく著者の作品はすべて角川書店から刊行されていると思っていたからだ。
ちょっと考えればそんなことは無いということがわかるのだが、先入観で今までそう思ってきた。
そんなこともあってか、今回の作品は従来の暗い宿命を背負った女性が主人公ではなく、女性向け雑誌編集長の男性という設定だ。
もっともそうした僕の理解の及ばないような女性も出てはくるのだが・・・・。タイトルの“炎まつり”は京都の“鞍馬の火祭り”のことだ。 しかしそれを舞台としたストーリーではなく、イメージとして取り入れられたものだ。 今まで読んできたものとは趣が少し異なって、ところどころで「ホッ」とするような温かさを感じられるような描写もあり、それはそれで楽しく読める。

 

 

エッセイストであり世評評論家などと自称してテレビ出演などもして活躍する、鏑木義一の出版記念パーティの席上へ、何やらいわくありげな人物が現れて、 著書の中に収められた俳句が盗作だと非難する、という騒ぎの場面から物語が始まる。 その前に、出張先からの帰りの新幹線車内で、雑誌マゼールの編集長・砥部進一郎が妙齢の美しい着物姿の女性を見かけるという、プロローグがあり、 それがのちに重要な意味を持つようになる伏線なのだ。
砥部進一郎はパーティにおけるその騒ぎの中、鏑木の取り巻きの一人に気になる女性を見る。女性は出張帰りの新幹線で見かけた女性だった。
そして砥部は、鏑木の盗作ということに疑問を持ち、騒ぎを起こした岩崎という初老の男に興味がわいた。 翌日の新聞で関連の記事を書いた記者に、岩崎の宿泊先を聞いてホテルを訪ね、ホテルのフロントの女性に聞くと、電話で呼びかけても返事がないという。 確認のため部屋に出向いた守衛が駆け戻って「首を絞められて殺されている」という。砥部はあわてて部屋に入り現場で、岩崎の死体を確認した。 さらにそこに落ちていた白扇を目にして、持ち帰ってしまう。

 

 

件を追う中年の雑誌編集長の熱心さと、相反するだらしのなさには、読んでいて時には嫌悪感さえ抱くのだが、よく考えてみれば、同じ年頃だった自分を振り返れば、 似たようなものだったかなと、苦い思いもわく。
殺人現場から証拠品を持ち出してしまうなどという、軽率な行動が分別のあるはずの、雑誌編集長の男の行動とは思えないところなども、納得しかねるところなのだが・・・。
しかし、そういったところも含めて、その後のストーリーの展開、あるいは主人公の人となりを示していくに欠かせぬ要件になっているのだから、仕方がないだろう。
事件をきっかけに思わぬ人の繋がりが、次第に明らかになっていく過程が、ミステリーの醍醐味なのだが、入り乱れる人々の思いがちょっと不自然だと感じられるところもあり、 終盤の展開にもどかしい思いも。
しかし、それは例によって僕が理解できない女性心理か及ぼす結果か?
だから、そんな思いを持ちながらも、まだ著者の作品を読み続けようとするのかもしれない。

 

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1245.アンダルシア

2012年04月28日 | サスペンス
アンダルシア
読 了 日 2012/04/24
著  者 真保裕一
出 版 社 講談社
形  態 単行本
ページ数 330
発 行 日 2011/06/09
I S B N 978-4-06-217027-7

 

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交官・黒田康作シリーズの第3弾。このシリーズは映画化、ドラマ化どちらもされており、面白いのは映画やドラマと小説とが、部分的に異なっているところだ。
人気俳優の織田裕二氏のはまり役で、スマートなアクションと、間合いのいいセリフ回しがドラマを引き立てていた。 本作の映画はまだ見ていないので、近いうちにTSUTAYAでDVDかブルーレイ・ディスクでも借りてこようかと思っている。
市内の精文館書店と併設されているTSUTAYAでは、旧作のDVDがすべて100円というレンタル料になったので、見たい作品がいくつかあるのだが、億劫でなかなか足が伸ばせない状態だ。歳は取りたくない。
このシリーズが僕の興味をひく要因の一つに、海外を舞台にしているということがある。 海外を舞台とした小説は今までにもたくさん読んできたが、中でも平岩弓枝氏の北欧を舞台とした作品などに、異国情緒を感じて、まだ見ぬ国への郷愁に似た思いを抱いたものだった。
このシリーズにも映像を見たことで、平岩作品とはまた違う海外への憧れを感じて、(と言ってもそこに住みたいとか、行ってみたいということではないのだが)読み続けてきた。

 

 

もしかしたら、主人公の黒田康作のように国際舞台を股にかけた、活動的な仕事への憧れかもしれない。いやいや今の僕にとっては、ただ単に仕事を持つということに対する欲求かもしれない。まあ、どんなことであれ読むことによって、多少なりともカタルシスを感じられれば、しばしの満足感を得ることができるというものだ。
何と言ったって、僕の読書は純粋に娯楽のためなのだから。最初の「アマルフィ」の映画の予告編が当時何度となくテレビで流されていたのをたまたま見て、否そうではなかった、メーキングだったか!
好きな女優さんの一人、天海祐希氏の主演であるということも手伝って、興味深く見た。映画撮影の常だが、何度も階段を駆け昇るシーンのリハーサルが繰り返される模様を見て、「俳優さんも体力勝負だな」という感想を持った。
DVDを借りて見ようと思っていた時、テレビで放送があって何か得したような気分で、じっくりと見た。

本書も「アマルフィ…」と同様に欧州を舞台としたサスペンスドラマだ。今回の舞台はスペインはアンダルシア。タイトルはアンダルシアとなっているが、世界地図を眺めるとスペイン南部の地中海に面した地方をアンダルシーアと呼ぶようだ。
余計なことだが、僕は該博な知識の持ち合わせはないから、読書の際は国語辞典を始め、英和辞典、外来語(カタカナ語)辞典、時に和英辞典などをわきに置いている。翻訳小説や海外を舞台とした作品を読むときは、世界地図なども用意する。

 

特に最近はなんとなくニュアンスとしては判っているような外来語が、小説の中に多く登場するようになって、この際正確な意味を知っておこうと辞書を引く。すると意外にも思っていたことと違う意味の言葉もあって、辞書は欠かせなくなっている。地図もしかり。特にヨーロッパは隣国と地続きの国が多いから、その配置を知るだけでも、物語の面白さが変わってくることも多いのだ。

 

 

れはさておき、そういう設定だから仕方がないが、本編でも外交官・黒田康作は自ら窮地に立ち入ってしまうストーリー展開だ。
導入部分では、麻薬取引に利用されスペイン警察に捕獲されたた若い日本人男性に、司法取引を承諾させることによって国際間の政治的決着を見せる、 という鮮やかな黒田康作のお手並みを披露するシーが描かれる。
だが、アルゴン(スペインの北に面しピレネー山脈のふもとにある国)という国からかかってきた若い女性の電話が元で、 またしても黒田は危ない橋を渡ることになるのだ。かすかな疑問を持ちながらも、女性の言葉を信じて、アルゴンから車でスペインへと女性を連れ出す。 ところが、アルゴンの貸別荘で中年男性の他殺死体が発見されて、彼の携帯電話の通話記録には、女性の番号が残っており、 死体がフランス警察への情報提供者だったことから、女性はフランス・アルゴン両国の警察から容疑者として追われることになる。

毎回思うことだが、公務員いや官僚といったほうがいいか?にも拘らず、自ら火中の栗を拾うかのごとき行動に奔る黒田康作の存在感に圧倒される半面、 優秀な頭脳と行動力を持つ人間が、軽率に過ぎるのではないかという思いもよぎる。女性を伴ってスペインに乗り込んだ黒田の活躍は、今風(というか、 ハリウッド映画的といったほうがいいか)な映像的な見せ場を展開するが、女性の秘めた謎は奥が深い。

そこがこのシリーズの面白さなのだが、実際にこんな人間が外務省にいたら、周囲の人たちは迷惑するだろうなと考えると、可笑しい。 まさにノンストップアクション&サスペンスは今回も顕在だ。
映画の方はどうなっているのだろう? まだテレビでは放送されないのかな?

 

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1242.死刑判決

2012年04月19日 | サスペンス

 

死刑判決
REVERSIBLE ERRORS
読了日 2012/04/18
著  者 スコット・トゥロー
Scott Turow
訳  者 佐藤耕士
出版社 講談社
形  態 文庫
ページ数 382/404
発行日 2004/10/15
ISBN 4-06-274866-5
4+06-274867-3

 

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に、いつだったかは忘れたが、AXNミステリー(CSチャンネル)で、本書を原作としたドラマが放送されて、録画してDVDにした後、見たような気もするがもしかしたら錯覚かもしれない。まったく物忘れが激しく情けない話だ。
以前はDVDにすると、タイトルや1場面の写真やイラストなどを、ダイレクトにプリントして、ケース用のラベルも作って整理していたのだが、いつの間にか面倒になって、録りっぱなし、作りっぱなしが増えて、整理がつかなくなっている。若いころに、「そのうちやります」とか、「今度やります」などと言い訳を言うと、「今度とお化けにゃ、会ったことがねえよ!」と怒られたことを思い出す。(人から叱られたり、怒られたりしたことはよく覚えているものだ)
サイトの解説などを見ると面白そうなドラマだったので、いつか原作を読んでみようと思っていたら、市内のBOOKOFFで105円の棚に上下巻が揃っていたので買ってきた。
BOOKOFFでは、105円の棚に読みたい本があると、上巻だけ、あるいは下巻だけということが多く、上下巻揃っていることは珍しい。(と思っていたが、最近ではそうでもないのかな?)

 

 

聞いたことのある著者名だと思い、略歴を見たら、ハリソン・フォード氏の主演で映画にもなった「推定無罪」の作者だった。いずれ(このいずれも、今度と同じだ、あてにはならないが)「推定無罪」も読んでみよう。

さて、好人物の店主が経営するレストランで、店主と女性客一人を含む3人が射殺され、女性客は凌辱されるという事件があり、容疑者としてロミー・ギャンドルフという、黒人男性が逮捕された。そして、33日後に死刑執行が決まっているロミーの、弁護人に連邦控訴裁判所からアーサー・レイヴンが指名されたのだ。
タイトルからも想像すれば、今までいくつか読んできた作品と同様に、冤罪救済のストーリーではないかと思いながら読み進める。ところが上巻の三分の二くらいまで進むと、青天の霹靂といった具合に話は妙な方向に向きを変える。
まあそうだろうな、この手の名作は数多くあるから、単純な冤罪救済の話ならドラマ化もされないだろうなと、納得しながら下巻へと進む。先にあげた「推定無罪」はまだ読んでないし、映画も見ていないから、この作者がどんな物語を書くのかは本書で初めて知るのだが、「簡単には終わらせないぞ!」と言っているような感じを持つ。二転三転するのだ。

 

 

書のテーマは、つまり主題は死刑囚を冤罪から救おうとすることだ。がしかし、それを阻止しようとする検察と警察側の思惑、何とかひっくり返そうとする弁護側との戦いがあり、それぞれの個人手的な、全く個人的な事情が絡んでくるからややこしくなる。
法曹界の習わしはわが国と違って、司法取引や、免責特権が微妙に裁判を左右することになって、そこいらあたりもサスペンスを誘発するのだが、その辺が本書では冗長といえるほどに描写される。時としてそれは、肝心の死刑囚そっちのけの話に、なりかねないほどの様相を示すことさえあるのだ。

だが、終盤になってそれらも、物語全体にとっては欠かすことのできないことだったのだとわかるのだが・・・・。
アメリカでは州によって法律が異なることから、控訴が最終的に連邦控訴審に持ち込まれるということも、ここでは重要な要素となっていることがわかる。



 

話は変わる。
3月の末にCRテレコムという会社から電話があった。最近「光回線の接続料金が安くなります」などという電話がよく掛かってきて面倒なので、そういう電話はすぐに切ることにしていたが、そんな話とは別らしくて、よく聞いてみたら、電波によるネット接続ということだった。つまりE-Mobileのことだ。
僕は8年ほど前からNTT東日本のBフレッツを利用している。当時はまだ、パソコン教室講師のアルバイトをしていたから、いくらかの収入があって、パソコン環境を最優先していたもので、木更津市にも光回線が設置されるという説明を聞いて、すぐに契約した。
しかし、収入の道が年金だけとなると、光回線利用料の毎月の負担が重くなってきた。そこで、昨年ライトファミリーという契約に切り替えたのだが、ちょっと油断をしていると、利用料が跳ね上がって以前と変わりない利用料となってしまう。もう速さをそれほど必要としなくなっているから、ダイヤルアップ接続に切り替えようと思っていたところだったので、E-Mobileの話は魅力的に聞こえた。早速E-Mobileのサイトを見て、どんなものかを確認した。

 

 

ポケットWi-Fiなるものを持って外に出れば、いたるところでネット接続ができるということに、大いに利用価値があることを認めた。従来は無線LANサービスのあるマクドナルドや、JRの駅構内など、決まったところでしかネット接続ができなかったことを思うと、画期的なことだと思った。
CRテレコムはいわば斡旋会社で、携帯電話の販売会社と同じようなものだから、加入者を募って手数料収入を得ているのだろう。それならどこと契約しても同じようなものだから、最初に情報をくれたCRテレコムと契約することにした。
1週間足らずで、ポケットWi-Fiである「GLO1P」という端末が届いた。早速無線LAN内臓のノートパソコンで、ネットへ接続してみた。光回線とはそれほど見劣りすることなく、接続できる。写真の丸で囲んだのがポケットWi-Fiである。となりは大きさを比較するためにおいた携帯電話、ノートパソコンの画面は無線LANで接続しているこのブログの画面である。
デスクトップの方は無線LANを内蔵していないので、CRテレコムの方から、端末を使用できるように、アクセスポイント機器(つまり無線LANの子機だ)を後程くれるということだ。長いことお世話になった光回線を解約するためにNTTに連絡して、光電話から通常の電話回線に切り替える工事を4月13日に行った。工事といっても前の通常の電話回線は残っていたから、接続を変えるだけの簡単なことだった。何よりもE-Mobileのメリットは、ルーターや終端装置がなくなって、配線が要らなくなったということだ。

今、こうしたパソコン周りの環境を思うと、僕がパソコンに携わるようになった40年以上前とは比べようのないほどだ。以前NHKのEテレ(教育テレビ)で放送していた「ITホワイトボックス」を見ていて、IT(Information Technology=情報技術)の発達はどこまで行くのだろうと、思いながらも僕はどのような形で、その恩恵に浴すことができるのだろうかという疑問も感じていた。
だが、こうしてささやかながらも、その波は僕のところにも押し寄せてきていることを実感する。
ところで、E-Mobileにするもう一つのメリットに、ネット接続のためのプロバイダー契約が不要ということがある。そこで、僕はひとつ困ることがあった。このブログのことだ。これは「Plala」というプロバイダーのサービスだから、プロバイダー契約がなくなるとブログの継続もできなくなるという不安があったのだ。
「Plala」にネット接続がE-Mobileになったという連絡をしたら、やはりプロバイダー契約も解除されるのだという。しかし、メールや、ブログ、ホームページ等のサービスは有料で継続可能ということだ。しかも利用料はプロバイダー契約がなくなるので今までより安くなるという。
そんなこんなで、無事このブログが継続できるようになって、一安心だが、実際この後いつまで継続できるのか。それは、僕自身の問題だ。できるだけ長く続けられるよう、身体―じゃなく頭―に気を付けて?(どうやって?帽子でもかぶるか)過ごさなければ。
ネット接続が変わったというだけの話が長くなった。

 

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1235.ゴーストライター

2012年03月25日 | サスペンス
ゴーストライター
The Ghost
読了日 2012/03/25
著 者 ロバート・ハリス
Robert Harris
訳 者 熊谷千寿
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 470
発行日 2009/09/15
ISBN 978-4-06-276443-8

 

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訳ものは何年振りかと思って記録をたどったら、昨年(2011年)の7月にP・コーンウェル女史の検視官シリーズ「核心」を読んでいたので、9か月ぶりくらいか。
しかしこのところ、翻訳ものを読むことがめっきり少なくなった。読書目標を立てて読むようになった当初は、国内の作品を読むことが少なかったことが嘘のようだ。読み始めてしまえばそうでもないのだが、なんとなく面倒な気がして、なかなか翻訳ものに手が出せなくなっている。歳のせいか?

何でも歳のせいにするつもりはないのだが、時折何もかもが面倒に思えることがある反面、Flassh(Macromedia社のWeb用のソフト。現在はAdbe社に替わった?)に手を出したり、VB(ビジュアル・ベーシック)でプログラミングしようとしたり、たまにイラストを描こうとしたり、先が短いから焦るのか?

 

 

本書は先達て購読している東京新聞の日曜版を見ていたら、“名作再見”というDVD化された映画の紹介をするコラムで、映画「ゴーストライター」の記事が興味を引くような文章で書かれており、原作も紹介されていたので、amazonで手に入れた。
我ながらミーハー気質の表れだと、可笑しくなるが、面白い本を探すというのは、割合そんなところにあるのかもしれない、などと都合のいい解釈をしている。

ゴーストライターとは言わずと知れた本人に成り代わって、小説や自伝を書く作家?のことだ。元のタイトルは上記のとおり“THE GHOST”で、ゴーストライターのことだが、もう一つある人物のGHOST、つまり幽霊という意味を兼ねている。
主人公で語り手でもある“私”は、その世界では少しは名の売れたゴーストライターだ。その“私”に元英国首相・アダム・ラングのゴーストライターを依頼される。だが“私”はラングの側近で自伝を書いていたマイケル・マカラの不審な死に疑問を持っており、依頼を受けることに躊躇していた。だが、破格の報酬と、出版エージェント・リックの否応なしの勧めに従って、引き受けることになって、アメリカ、マサチューセッツ州マーサズ・ヴィ二ヤードに滞在中のアダム・ラングのもとに向かった。
だが、突如としてアダム・ラングに戦争犯罪人の嫌疑がかかり、“私”は改めて不審な死を遂げたマイケル・マカラの死因を調べようとするが・・・・。

 

 

々と進むストーリーが次第に不気味な不安感を募らせて行く中、僕は唐突に先年亡くなった児玉清氏を思い浮かべた。俳優の児玉氏は読書人としても知られ、NHKBSの番組、「週刊ブックレビュー」の司会も長年続けておられた。あるとき児玉氏はインタビューに答えて、サスペンス小説が好きだと言っていたことを思い出して、本書も読んだろうかというような連想をしたのである。
本書を読むきっかけとなったDVDの紹介コラムで興味をひかれたほどではなかったが、いつか映画の方も見てみようかという気にはなった。

 

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1232.イン・パラダイス

2012年03月16日 | サスペンス
イン・パラダイス
読 了 日 2012/03/10
著  者 渡辺容子
出 版 社 双葉社
形  態 単行本
ページ数 431
発 行 :日 2008/11/23
ISBN 978-4-575-23644-6

 

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の好みのストーリーを描く作者には、時として寡作の人が多いような気がするが、否、そうではなかった。逆に僕は、書店の棚にたくさんの著作が並んでいる作家はなんとなく敬遠する傾向があるのだった。単なる僕の偏見にすぎない。
多作家であろうと、書店の棚に並んでいるのを見なければ、多作家だろうが、寡作家であろうと読むのだが、あまり多くの作品が並んでいるのを見ると、なんとなく引いてしまうのが癖になっている。そこでつい寡作の作家を選んでいるのだろう。この作者もその一人で、著者の作品を前に読んだのはいつかと、データをたどると2007年だ。
5年ぶりに僕にとっては新作を読む。2008年に刊行された単行本ながら、そっちこっちに情報網を張り巡らせているわけではないから、僕の情報収集力は極めて貧弱だ。たまにAmazonなどで調べるかしないと、少し前に出た本は見逃すことも多いのだろう。そのAmazonのサイトでたまたま本書を見かけて買い求めたのだが、残念ながら今回は少し好みから外れていた。

 

 

僕は若いころほんの少しの間、パチンコに通ったこともあるが。まだそのころは左手に球を持って、一つずつ入れながら右手でつという旧式のパチンコ台だったから、今のようにギャンブル性は高くなく、極めて遊戯性の高い時代だった。
この作品を読んでいると、著者もパチンコに通ったことがあるのかというくらい、臨場感にあふれたパチンコ店(今はパーラーなどというしゃれた名前で呼ばれているが・・・・)と客たちの様子が活き活きと描写される。そう言えば著者は初期に「無制限」という作品でもパチンコ業界を扱っていたから、パチンコをやる、やらないはともかくとして、著者にとって興味のある世界には間違いないのだろう。
途中、状況の説明がダブっているところがあって、ちょっと疑問に感じる個所があったが、巻末に新聞小説だったことがわかって納得。

 

 

婚式を目前に相手の桜井を交通事故で失った、Jポップ界のスーパースターだったユニット「アダージョ」の小田切加憐。失意の末音楽界から身を引いた後、知り合いの勧めでサラリーマンの後藤と結婚、パチンコ店に通うようになる。もちろん一生遊んで暮らせるほどの蓄えがあるから、パチンコは純粋な遊びだが、そんな世界で知り合った女がホームから転落して轢死するという事件が起こった。
そうしたスタートで始まるストーリーは、先に書いたように騒音が聞こえてきそうなパチンコ店の描写とともに、人々のドラマが描かれる。パチンコにさほど興味のない僕には、理解の及ばないところもあるが、それでも事件を追って登場人物たちが、それぞれの事情を抱えながら収束していくストーリーに次第に引き込まれる。

 

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1226.模倣の殺意

2012年02月19日 | サスペンス
模倣の殺意
読 了 日 2012/02/11
著  者 中町信
出 版 社 東京創元社
形  態 文庫
ページ数 327
発 行&nbsp:日 2004/08/13
ISBN 4-488-11901-8

 

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ステリー作家でも僕の知らない人はたくさんいて、本書の著者中町信(あきら)氏も初めての作家だ。この文庫は2004年の発刊だが、作品そのものは1971年に江戸川乱歩賞への応募用に書かれたものだという。本書が東京創元社の推理文庫に収まったのは、結構前から知ってはいたものの、内容については全く知らず、さして興味もなかった。
たまたまいすみ市大原でよく立ち寄る古書店・ブックセンターあずまで見かけて、カバー後ろを見たら、鮎川哲也氏の解説文があり読んでいて、おもしろそうだという感じがして、買い求めた。
ただ僕はうっかりして、巻末の濱中利信氏の解説の中にある、肝心な箇所を読んでしまって、本書のどこにミステリーがあるのかということを知ってしまった。これから本書を読もうと思った方は、解説は本文を読み終わってからにすることをお勧めする。

 

 

前にも書いたことだが、僕は映画やドラマの、二転三転する結末とか、どんでん返しなどというキャッチコピーをいつも苦々しく思っている。
いつのころからか新聞やテレビ番組誌の、番組欄に長々と書かれたタイトルだか解説だかわけのわからない文章が載っており、それほど書かないと視聴者を獲得できないのか、番組に自信がないのか、全くこちらにしてみれば視聴者を馬鹿にしているのかという思いで、大きなお世話だと腹の立つことさえある。
つまり、僕は先入観を持たずに本は読みたいし、ドラマを見たいと思っているのだ。ミステリーならば騙されることにも、喜びを感じたいのである。

 

 

んなことで、「失敗したな!」と思いながら読み始めたのだが、そうしたことがあっても終盤に至る頃には忘れて、のめりこんで読んだ。読み終わって最初の方を見直すと、なんと注意深く読みさえすれば最初からヒントが与えられていることが分かる。
もっとも僕はミステリー好きにも関わらず、謎解きは一番の苦手なので、たとえヒントが分かっていても、結末は分からなかっただろうが・・・・。
本書はプロローグ、エピローグに挟まれた四部構成になっているが、第三部が終わったところで、“読者への挑戦”を挟んでいる。エラリイ・クイーン氏の国名シリーズには毎回すべてのデータが出そろったところで“読者への挑戦”を織り込んでいるが、昔はいざ知らず、近頃の国内作品にはとんとお目にかからなくなってしまった。といった本格推理の1篇だ。

探偵小説が遊び心を持っていた頃が懐かしく思い出される。かなり昔の作品である本書が創元推理文庫に収録されたのは、今は職を退いた戸川安宣氏だったと、著者のあとがきで知る。

 

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1220.九月が永遠に続けば

2012年01月25日 | サスペンス
九月が永遠に続けば
読 了 日 2011/12/23
著  者 沼田まほかる
出 版 社 新潮社
形  態 文庫
ページ数 495
発 行&nbsp:日 2008/02/01
ISBN 978-4-10-133851-4

 

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ラーサスペンス大賞を受賞した作品だということから、さしたる興味を持てなかったが、金曜夜8時からBS11(イレブン)で放送されている「ベストセラーBook TV」の中で、週間文庫ランキングに何度となく表れるから、次第に気になってきて、ポイントで交換したギフト券の残りがあったので、ついに買ってしまった。
突如として消息を絶ってしまった息子を探す離婚母の物語だ。なんだか最初のころは“離婚されるのも無理はない”と思わせるような、ちょっと自分勝手な面が描写されて、せっかちな僕などは「この女、頭がおかしいんじゃねえか!?」などと思いながら読み進む。
だが、何日も息子の消息が知れることがなく、進むストーリーに次第に引き込まれる。

 

 

これを読んだのは昨年暮れの23日のことだから、現在の施設の事故と重ね合わせたわけではないのだが、今これを書いていて、僕の関係する障害者施設の行方不明者を思い、忸怩たる思いがわく。いまさら僕が恥ずかしがっても仕方のないことだが、実は昨日(1月24日)主な関係者による定例の捜索に関する会合が行われた。
この後の捜索についてどうするか?ということの話し合いだ。何度も同じようなことを書くが、いかんせん目撃情報が少なすぎて、行方不明者の足跡をたどることに困難を極めているのだ。

 

 

のような素人が、行方不明者を探すというのは、小説を読むようなわけにはいかないことを、いやというほど認識させられたのが今回の事故だ。

さて、話を本に戻そう。
行方不明の息子を探す母親は、水沢佐知子と言って臨床心理医・安西雄一郎の妻だったのだが、ある悲惨な事件の被害者の女性を診ているうちに、安西はその女性を救うために、あろうことか深い関係を持ってしまうのだ。
事件というのは読むのがつらくなるほどの、レイプを伴った暴力事件で、被害者のトラウマもまた言い尽くせないほどのものだった。
一方行方不明となった息子というのは、中学生ながら母親の信頼をしっかりと受け止める賢明な息子・水沢文彦。ナズナという近くのマンションに住む同級生のガールフレンドもいて、よい関係を保っているのだが…。

総体的に言えばやはり危惧した通り、僕の好みではなかったが、それでも十分惹きつけられるストーリーではあった。
実際のこちらの事故も見つかって解決すればいいのだが、なかなか小説のようにはいかないのが現実の世界だ。

 

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1200.招かれた女

2011年11月14日 | サスペンス
招かれた女
読 了 日 2011/10/31
著  者 赤川次郎
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 298
発 行 :日 1984/09/10
ISBN 4-04-149721-3

 

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良三郎氏の「ミステリーの泣きどころ」という評論集を読んで、今まで気にしなかった本のいくつかに興味を惹かれて、読んだ中に著者の作品もあった。
「マリオネットの罠」というのがその1冊で、由良氏のような気になる作家の一人に紹介されると、読んでみようと思うのは、僕の何というか単純に影響を受けやすい性格から来ているのだ。
昔から僕は食わず嫌いと、天邪鬼な性格は年を経ても一向に治る気配はないようで、そうしたことからいまだに読もうとしない作家の作品は少なくない。著者の作品もその一つだったが、読んでみて読みやすい文体や、オーソドックスなサスペンスとしての面白さに惹かれた。まあ、僕が生涯に読める数など高が知れているから、気に染まぬ読書は避けて通ることも致し方ないが、読まずに面白い作品を見逃していることも少なくないだろう。
回りくどい話になったが、「マリオネットの罠」の巻末の解説で、同様の傾向を示す作品として、本書が紹介されており、機会があったらまた読んでみようと思っていた。 そんな折、たまたま行きずりの古書店店頭におかれた50円均一のワゴンを何気なく見ていて、本書を見つけて「おっ!」と思って買い求めた。ごくまれなことだが古本屋さんを回っているとこういうこともあって、あまり古本屋さんを回るのは止そうなどと思いながらも、ついつい足を向けたり、手に取ったりしてしまうのだ。そうした些細なことが、貧乏暮らしを続けることとなる要因の一つで、バカな僕はやめられないのだ。

 

 

重要参考人を張り込んでいた二人の刑事、宮本と谷内が、連れ込み宿に踏み込む。目的の人物は二階だったが、宮本刑事は持病のひざが痛みだし、若い谷内刑事に先に上がらせた。1発の銃声とともに参考人は消えて、谷内刑事は命を落とす。
谷内の葬儀で、谷内の婚約者だった布川爽子からののしらた。その後辞職した宮本は、まともな職にありつけず、妻子とも別居生活を送っていたが、思いもかけず、かつて痛烈な言葉を賭けられて非難された布川爽子から声をかけられて、職にありつけることになる。
といったスタートから、その宮本が事件の真相を追うのかと思っていると、新たな就職先で、彼はあっさりと殺されてしまうのだ。そんな成り行きにちょっとした戸惑いを持ちながら読み進めるうちに、事件は意外な方向に発展していく。

 

 

は著者の作品はこれで2冊目で、他の物は読んでないから分からないが、読み終わってなるほどこの作品も権田萬治氏の言うように、その前に読んだ「マリオネットの罠」と同様のカテゴリーに入る作だということは分かった。
だが、本書の巻末で山前譲氏の解説の中で、著者が自作の中から選んだ10作に、サスペンスとして挙げられているのは「マリオネットの罠」と「黒い森の記憶」という作品だった。
山前氏も権田氏と同じくサスペンスとしては本書の方を推しているのに、著者としての思いは違うようで、書評家の認めるところと作者自身の考えが違うことはよくあることなのだろう。
また、読む機会があったら著者の自信作の方も読んでみようか・・・・。

 

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1184.氷点

2011年09月21日 | サスペンス
氷点
読了日 2011/09/16
著 者 三浦綾子
出版社 角川書店
形 態 文庫
ページ数 368/371
発行日 1982/01/30
ISBN 4-04-143703-2
4-04-143704-0

 

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がこの作品をもととしたテレビドラマを見たのは昭和41年のことだから、もう45年も前のことになるのだということを改めて認識する。時の流れの速さに驚くとともに感慨を覚える。ドラマに魅せられて、途中から原作を読み始めて、ドラマより先に読み終わってしまったことも、その頃の僕の一つの楽しみだったことも、いまさらながらに思い起こす。
時代的に同じころだったかどうかは調べてみないとわからないのだが、ドラマを見ては原作を読むといったことは例えば、黒岩重吾氏の「廃墟の唇」や、山崎豊子氏の「白い巨塔」、「華麗なる一族」、森村誠一氏の「人間の証明」などなど、が思い浮かぶ。
この時代のテレビドラマは、今のように2時間ドラマは少なく、例に挙げたドラマも連続して3か月くらいは続いたのではないだろうか?「氷点」も同様だったと思う。

 

 

今回じっくりと読んでみて、当時よりは人生経験を積んだこともあってか、作者の示す重いテーマに以前よりは理解を示すことが出来たようだ。僕の頭の中の記憶装置は、あまり程度がよくないせいか、覚えていると思ったことはほんの一部分であったこともわかり、いささか驚いた。
これから読もうと思っている人もいるだろうから、肝心の部分は書けないが、辻口家に引き取られてきた乳児が、少女へと成長する過程にこれほど胸打たれるとは、考えてもいなかった。子供のかわいさ、健気さには自分の子供の幼い頃が重ね合わさって、身につまされるところだ。
と言っても読んだことのないひとには何のことかわからないだろう。話が前後した。

 

 

台は北海道、旭川市郊外の辻口総合病院と院長の辻口啓造宅周辺。辻口病院の眼科医師、村井はかねてから美しく若い辻口院長夫人、夏枝に思慕を抱いていた。村井が辻口宅を訪れて夏枝に思いを告げようとしていた時、三歳になる夏枝の娘・ルリ子が行方不明となる。後にルリ子は近くの河原で絞殺死体となって発見された。 啓造はルリ子が殺された時に、「夏枝は村井と何をしていたんだ?」という疑惑にさいなまれるが、それを夏枝に問いただすことが出来なかった。
猜疑心の強い反面、内向的な辻口啓造の心情が思いもかけない悲劇をもたらすのだ。
そして、警察からルリ子を殺害した犯人が逮捕されたことと、拘置所内で犯人が自殺したことを知らされる。
辻口は悲しみの中で、妻・夏枝への強い不信感から、とんでもない復讐を思い立つ。それは、犯人が残した女児を引き取って夏枝の育てさせるということだった。

この作品は調べたら、人間の原罪というその重いテーマに関わらず、映画化もされたほか、現在までにその続編も含めて7回以上もドラマ化されている。作品の時代設定は終戦直後ということになっているが、多少その匂いをうかがわせるか所はあるものの、今読んでもそれほど違和感はなく、何よりもドラマチックな設定が心に響く。
原作を読み、映画も、ドラマも見てきた僕だが、今なお読んで心を震わされる名作である。

この作品のカテゴリーをサスペンスとするのは、いささか気が引けるがほかに適当なカテゴリーが思いつかず仕方なくつけた。

 

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