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読 了 日 | 2013/04/30 | |
著 者 | 永嶋恵美 | |
出 版 社 | 光文社 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 299 | |
発 行 日 | 2012/08/20 | |
I S B N | 978-4-34-92841-4 |
年8月にこの本が出たときに、Amazonから新刊の紹介があって、気になっていたタイトルだ。探したら、木更津市立図書館で貸出可になっていたので、借りてきた。
気になっていたのは10年ほど前に読んだ、石沢英太郎氏の作品と同じタイトルだという単純な理由だ。
石沢氏の方は短編だったが、ドラマ化もされていて、僕はそのドラマを見て、なかなかよくできており、面白く見たので原作を探して読んだのだった。、
僕はミステリー小説を読むのと同様にミステリードラマを見ることも好きで、特に原作のあるドラマはできる限り見逃さないよう気を付けて、TV番組欄などでチェックしている。
ドラマから面白い原作を探したことも数あることからも、ドラマのチェックも馬鹿にはできない。

短いプロローグがちょっとした話の伏線を示しており、鈍感な僕は終盤近くになって「ああ、そうか、なるほど!」と気が付く。一般に動態地図と呼ばれて、様々な企業などでも重宝している住宅地図の、現地調査員を主人公としたストーリーだ。
ミステリーの探偵役には、従来いろいろな職業が充てられてきて、もう種が尽きたのではないかという人もいるが、こうした話を読むとまだまだあるものだという思いを持つ。
僕はこうした地図の実在する会社は株式会社ゼンリンしか知らないが、本書のような動態調査をして、定期的に更新していることを初めて知った。アルバイトや非正規労働者をもって、地区ごとに歩いて1軒ごとの表札を調べていくのは、時間と手間のかかる仕事だろうと想像する。
ネットで調べたら、ゼンリンでは全国で28万人もの調査員を動員して、表札調べを行うそうだ。そうして集められた正確な情報は、デジタルマップの元ともなって、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーが、車に搭載するカーナビゲーションシステムに組み込まれているという。

の売れた一本柱を失って、観客動員数が下降して衰退気味の劇団に所属する芳沢夏帆は、非正規社員という形で、住宅地図会社の調査員をしている。劇団員だけでは暮らしていけるだけの収入にならないから、大半の劇団員は何らかのアルバイトをすることになる。現実の世界でも中小の劇団の運営は、厳しいようでここに描かれているごとく、副業で生活しているのが事実のようだ。
いずこの世界も夢を追って暮らしていくのは、楽ではないのだろう。
1件ずつ歩いて表札を見てあるく姿は、時によっては不審者と見られることもあって、いろいろと苦労もあるようだ。そうした活動の中で事件は起こる。
あまり係りがあるようには思えないが、僕はこの小説を読んでいて、ふと、前に読んだ渡辺容子氏の「左手に告げるなかれ」を思い起こした。主人公のたたずまいが似ていると感じたからだろうか?
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